そして舞台の幕があがった 4

『レシェード・ライエン』

そう猫が唱えると、あたりが真っ白になり私の手が少し青くなり直ぐに消えた。

魔法をかけられた途端、私の中でも変化が起こっていた。内側から力が溢れ出てくる感じがしたのでこれはいけると思い私は猫の右足の怪我付近に杖を向け唱えた。

『ルミエラ・アルカトラス』

すると辺りが真っ白になり気づいたら猫の怪我は治っていた。

私は初めて成功した魔法に、驚きと嬉しさの両方で訳が分からなくなっていた。でもこれで分かったことがある。私は、この猫の力を借りることができるなら魔法が使えるということになる。それは私にとって、魔法が使えるということに関しては希望が見えたということ。今までずっと真っ暗な中を歩いてきたように感じていた。けれど、この猫がいれば魔法が使える私の真っ暗な世界に一筋の光が差し込んだように思えた。

だから、私はこの猫と仮契約をしようと思い猫に問いかけた。

「あなたと仮契約をしたいの! どうしたら仮契約ができるの? でもその前に私にかかっている魔法について教えてほしい」

猫は頷くと話し始めた。

「君の魔法について話す前に僕の力について、そしてなぜ魔法が使えるのかについて話すよ。まずは、なぜ魔法が使えるのかについてから。一般的に、魔法は言わば体内の魔力というものを媒体にしている。その媒体があるから、魔法が使える。そしてその魔力には限りがあって無限ではない。泉を例えに話そうか。泉は無限に湧き出てくるけど、人間はそうではない。魔力には限りがある。魔力不足になると、倒れてしまったり最悪の場合死に至ることだってあるんだ。君の場合は……そうだな、大丈夫そうだね。生きてく最低限の魔力は確保されている。でも、これを解放した時の君への負担が、大きすぎるかもしれないね」

そう言われたので私はなるほど。体内の魔力を媒体としているから魔法が使えるのか。あれ? でもさっき魔法を使えたのはどうしてだろう。あと私への負担が大きいっていうのはどういうことなんだろう。

私は思い切って猫に聞いてみることにした。

「さっきはどうして魔法が使えたの? あと、私への負担が大きいっていうのはどういうこと?」

猫は私の疑問に答えてくれた。

「そうだな……まずは魔法がどうして使えたかについてなんだけど、一般の人は魔力が媒体であるということは話したよね? つまり、僕はさっきの魔法で君の中に媒体を作ったというか媒体を与えたといった方が正しいかもしれない。水泳に例えてみようか。普通に泳げる人の場合ビート版や浮き輪は必要ない。これが一般の人だとしよう。でも君は泳げないんだ。泳げない場合、ビート版や浮き輪などの助けを借りることになる。これが今の君にとっての媒体になる。そして負担が大きいっていうのはそうだな説明が難しいんだけど……コップ一杯の水に例えてみようか。今までは溢れそうでもそこで留まっていた。でもそれは一度は、溢れなければいけないんだ。でも君は今まで魔力を封じられてきた。だから一度も溢れていないんだ。つまり、一度も自分の力でコントロールしていないというのが問題だね。それが一度に開放されるとなると一度魔力の暴走が起きる。こうなることを想定していなかったのだろうね」

その話を聞いて、一度整理してみることにした。

確かに普通に泳げればビート版や浮き輪を借りる必要なんてない。けど、私は泳げないからビート版などの媒体が必要で猫は私にそれを与えてくれたって考えると納得がいく。

あと、お父さんが、私の魔力を封じていたせいで私は自分で魔力を一度もコントロールしていないから魔力の暴走が起きて私の体に負担が大きい。なるほどやっと理解できた。でも猫の力ってどういうものなんだろう。

「その顔は僕の力がきになっているのかな? いいよ、教えてあげる。僕の前の契約者の名前は言えないけどね。僕たちにも、決まりがあるから。でも、あの子はぼくにとって初めての、仮契約者だったんだ。あの子は動物に、名前を付けるのが趣味みたいなものでね。知らない間に、仮契約を結んでいたんだよ。“名前を付ける”というのが、仮契約をするっていうことになるから。生まれつき心臓が悪くてあまり長くは生きられないって言われていたみたいだよ。でもその病気の治療方法は見つからなくて……だから僕と本契約をすれば、君の病気を治せるって言ったんだけどね。」

その子はなぜ猫の提案を受け入れなかったのだろうと思いながら私は話に耳を傾けた。

「あの子がそれを受け入れることはなかった。あの子は、結局自分の死を受け入れたよ。世の中にはね不思議な力を持ってる人がいるんだ。君みたいにね。あの子は4つも持っていた。詳しくは明かせないけど。僕が授けられた力はね“真実の目”あの子はヴァールハルトアイと呼んでいたよ。この力はあの子も大切な人から授けられたものだと言っていたよ。この力はね嘘が見抜ける力なんだ。


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