そして舞台の幕があがった 3

と聞くと猫は少し迷いながらも答えた。

「そうだね! 残念だけど、僕にはその魔法を解く力はない……けど、まあこれはあとで話すことにしようか。まず、君にかけられている魔法について。君には複雑な魔法がかけられている。それはきっと、君のお父さんによってかけられたものだね。だから、魔法が使えない。その魔法は魔力遮断魔法、透視防止魔法、干渉防止魔法だね。これは厄介だ。何か身に覚えはある?」

そう問われて、私は幼いころお父さんと2人で出かけた時にお母さんに内緒だと言われたことを思い出した。お父さんはその時何かを呟いていた。それは何だったのかとずっと疑問に思っていた。そのことかと思い猫に話すことにした。

「身に覚えあるかも……確か5歳くらいの時に何かされた感覚があって、聞いたらこれはリリスがきれいになるためのおまじないだよって言われたの。え? ちょっと待って魔力防止魔法? 干渉防止魔法? いったい何を言っているの?」

猫は納得した表情を見せ、私を落ち着かせようと続けた。

「落ち着いて。そのことについても、あとで説明するよ。そういえば、君はどうして僕の声が聞こえてわかるんだろうね。普通の人には聞こえないはずなんだけど……君は運がいいのかな? でも気を付けた方がいいよ。

普通の人からすればおかしいからね。動物と話しているなんて、変に思われるよ。話を戻そうか。その時に、魔力遮断魔法や他の魔法をかけた確立が高いね。だから、魔力が制限されて魔法が使えなくなっている。でも、僕が来たからにはもう大丈夫! 僕と仮契約を交わしてくれない? 僕と仮契約を交わしたものは、魔法が使えるようになるってされてるんだ。自分でいうのも、おかしいかもしれないけど……僕は元居た世界では幸運を呼ぶ白猫って呼ばれていたんだ。どうかな?」

その話を聞いて私は、いきなり発覚した事実に対して信じられない思いでいっぱいだった。私が魔法が使えない原因が、お父さんにあっただなんて信じられなかったし、信じたくなかった。どうしてそんなことをしたのだろうという思いでいっぱいになってしまった。けれど、猫が言っていた魔法が使えるという言葉について考えこんでいると猫が言いずらそうに話しかけてきた。

「あのさ……きっと君のためを思ってやったことだと思うよ? それと、その顔は僕が言ったことについて考えているみたいだね。なら実際にやってみようよ! 僕のこの傷治してよ?」

私はその言葉に戸惑いながらも伝えた。

「私、魔法使えなくて……でも本当にそんなことできるの? 私に魔法使えるの?」

「うん! 使えるよ。僕が教えると通りにやればね。さっきの話から推測するとリリスだよね?」

「ええそうよ。それで早く続きを聞かせて。そして私に魔法教えてください」

そうせかし、頼み込むと猫は満足そうにけれど少し居心地悪そうに言葉を発した。

「そんなかしこまらなくても大丈夫だよ。さっきみたいに話してよ? 敬語はいらない。まず、治療魔法には3種類ある。一番傷が深い時に使うのがラミエラ・アルケミスト、そんな深くはないけど血が多く出ているときはレミエラ・ルミエット、傷が浅く血が滲む程度ならルミエラ・アルカトラス、さてここで問題だよ。僕の傷を見て君ならどの魔法をかける?」

「そうだな……ルミエラ・アルカトラスかな合ってる?」

そう自信なさげに言うと猫は答えた。

「正解。じゃあ僕の言う通りに唱えてみようかルミエラ・アルカトラス」

私は猫が言った通りその呪文を唱えてみることにした。本当は、少し不安いや少しどころではない不安に押しつぶされそうだった。私は魔法が使えない。昔から疑問だった。どうして私には魔法が使えないのか。みんな普通に使っているのに……それには、原因があった。猫の言葉を信じるなら私のお父さんが、私を守るためにかけたらしい。それでも怖い。この猫のことを本当に信じていいのかが分からないから。そう思って決心を固めた所でふと気になる言葉を思い出した。あれ? 仮契約って言ってた? もしかして私このままじゃ魔法使えないの? と混乱してきたところで猫が話しかけてきた。

「心決まった? 言い忘れてたけど……僕が君に僕の力を少し貸すからそしたら君は魔法を使えるようになるよ! 難しい顔していたからね。違った?」

「そのことで悩んでたの! 決心着いたよ」

そう力強い眼差しで答えると猫は満足気な表情をした。そして私の手に魔法をかけてくれた。

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