猫の冒険と女王の憂鬱 5


「ディラン総監一体何事ですか?! 今の音はってええ! 扉壊したんですか?! いつも言ってますよね? 手加減してくださいっていい加減覚えてくださいよ……」

とその青年は涙目になっていた。あれ? このやり取りさっきもあったな……本当になんでこの国には変な人しか集まってないんだろう? そう疑問に思いつつも私はそのやり取りを見続けることにした。

「悪いな……ルーカスだからこれお前が直してくれよろしく!」

そう倒した張本人は、まるで他人事のように爽やかに告げたので私は驚きを隠せなかった。貴方が直せばいいのに……そう言いたくなったがその言葉をルーカスと呼ばれた青年が代弁してくれた。

「また僕ですか?  総監が倒したんですから総監が直してくださいよ?  いつも僕が直してるじゃないですか!」

いつもこの子が直しているのか可哀想に横暴な上司を持つと部下が大変だなそう私は今日の2組のやり取りを見てそう思っていた。

「そうだったか? まあ硬いこと言わずにさお前の好きな物なんでも買ってやるから」

それを聞いて、物でつる作戦に出たかと思った。いつもこんな無責任なこと言ってるんだろうなこれは多分口約束だけで買ったことなんて1度もないんだろうなそんな予想が簡単に出来た。そしてその予想はその通りだったみたいだ。

「そんなこと言って買ってくれたこと1度もないじゃないですか? そんなのに騙されませんから! 早く直してください!」

そうすごい剣幕で、言い放ったためディランは一瞬たじろいだもののそれを悟られないように言った。あの動揺の仕方で、バレないと思っている彼の思考をどうにかして欲しい……そう切実に感じた。

「わかった、わかったよ直すから。直せばいいんだろう」

ディランは投げやりな感じで答えると彼は私が考えつかない行動に出た。なんと、彼は直すといいながら扉を立てかけたの!  その行為に私は唖然とし、これはルーカスが黙っていないだろうなと思い彼の方を見た。

「総監! それは直すのでは無く立てかけるっていうんですよ? 約束と違います!  貴方はいつもそうですよね? この間の合宿の時も木製の扉壊しておいて木の棒を使って立てかけてカモフラージュしてましたけど! 僕は気づいてましたからね? その時も僕が直してたんです! あとは受話器の破壊! その握力どうにかしてください! まあ今回も僕が直しますけどね……総監直しそうにないんで『リペアージェネシス』」

そう唱えると扉は元に戻った。結局君が直すんだね……優しいな。私だったら絶対直さないし、直すまで絶対譲らないまあそんなことは置いといて

それを確認した私は、ディランに報告をするよう促すためこう告げた。

「報告をお願いします。幸運の猫の件ですよね?」

そう伝えるとディランは忘れてたという表情をし、思い出したかのようにその件に関して話し始めた。私はこんな表情変化がわかりやすい人この人以外にいるのかなと疑問を抱いたけれど話を聞いていた。そしてその最後の言葉に愕然とした。

「報告します。幸運の猫を追っていた娘に関してですが、父親のガルシア伯爵がブラッククローツという危険薬物を、栽培していたことが分かりました。そのため、その娘は幸運の猫に願いを叶えて貰いたかったようです。それと、ガルシア伯爵についてですが、対処を任せたいと考えております。娘のイザベラに関しては、今いるガルシア家とは離縁させ私の養女として迎え入れたいと思います」

そう言い切ったので私は最終的に決めるの私なんだけど……でもこれ認めないとめんどくさいことになりそうだな。それにしても伯爵は追放しないんだ。どうしてだろうそんな疑問が浮かび、まあ養女の件に関しては書類作ってくるだろうし、その時に考えればいいかそう気楽に考えているとルーカスが悩ましげな表情で言葉を発した。

「総監……何か考えていることがあると思ったらその事を考えていたんですか? まあ伯爵の件に関しては私も賛成ですけど……それ決める権限貴方にはないですよね?」

そう言うとディランは何を思ったのかこんなことを告げた。

「いやでもこれは何としてでも通すよ。それと伯爵を追放しないのは生産の仕方を知ってるってことは減らす方法も知ってるってことだからです。これは知り合いの受け売りですけど……」

その話に私は少し気になったため尋ねた。

あの猫が話していた人物かもしれないと思ったから。

「その人の名前を教えて貰えませんか? その人に少し興味がありまして……」

そう伝えるとディランは不思議そうな顔をしつつも教えてくれた。

「ミアです、ミア・レリック。今どこにいるかは俺にも分かりません。彼奴は気ままな猫みたいなもんですから突然現れてはいつの間にかいなくなっているそんな奴です」

そう何故か遠い目をして答えた。そして扉に手をかけようとした所をルーカスが全力で止めた。

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