猫の冒険と女王の憂鬱 4


「それと扉は自分で直して下さいね。いつも女王陛下に直していただいているのですからお手を煩わせないでください」

とワイアットが伝えるとセレスは不満げな表情をし言い返した。

「もういちいちうるさいよ! 確かに扉を壊したのは私だけど……そんなに愚痴愚痴ねちねち言われるとイラつく」

とセレスは呟く。それを聞き逃していなかったのかワイアットは呆れたように言う。

「イラつくとは何ですか? 私はあなたのために言っているんです! それをいい加減わかってください……それにもう若くないんですからイラつくとか言うの恥ずかしくないんですか?」

「ほんとワイアットって地獄耳だよね? 全然聞き逃してくれないんだから。恥ずかしくはないかな……それに若くないとか一言余計だから」

そのやり取りを聞きながら、この喧嘩いつまで続くのかなそろそろ仲裁に入った方がいいかもしれないと思いながら聞いているとワイアットの雷が落ちる。

「セレス隊長いい加減にしてください! このやり取りを見せられている女王陛下の身にもなってください! それと扉は貴女が壊したのですから貴女が直してくださいね?」

そう言われたのでセレスは諦め、いじけつつも修復魔法を唱えた。

「もうわかった直すよ。私が直すから『リペアー・ネイシス』これでいいんでしょう?!」

そう唱えると扉は元に戻ったので私はやっと直してくれたのね……ここまで長かったけれど直してくれただけいいかと思いセレスに尋ねた。

「直してくれてありがとう、セレス。貴女はやっと加減を覚えたようですね? ワイアットも落ち着いてください。それで要件は?」

その問いかけにセレスはしばらくの間呆然としていたけれど、正気に戻り考え答えた。その答えは私を唖然とさせるものだった。

「要件? そうだ! これから炎の龍を退治しに行くんです! そんな依頼が来ていたような気がして……」

その答えを聞いて、私は呆れてしまった。今時竜退治なんて聞いたことないよ……どれだけ体力有り余っているの。これはなんとかしないといけないなそう考え込んでいるとワイアットが慌てて言い直した。

「そのような依頼は来ておりません! それにあの地域は龍が神聖視されているのでそんなことしたら殺されますよ?  今日は予定が沢山詰まっているのに……今日ここに来たのは街の警備の報告書ですよね?」

と威圧的な笑みを浮かべていたのでセレスはその圧に負けて頷いた。

その様子を見て私はワイアットを敵に回してはいけないと思った。敵に回したら後が怖そうだから。だけど、このままだとセレスが立ち直れそうにないからこの辺で諫めておかないと口を開いた。

「ワイアット、その辺にしといてあげなさい」

そう伝えるとワイアットは驚いたのか少し目を見張った。そして渋々頷いた。

私は報告書を受け取りさっと目を通してから2人に伝えた。

「ご苦労でした。もう、下がりなさい」

そう伝えると2人はほっとしたような表情を浮かべたけど、ワイアットの小言は収まらなかった。

「貴女が子供にくだらないことを聞いていたせいで遅れるかと思いました! あまり無理はしないでくださいよ? 見た目は若いですけど50才なのですから」

そう言うとセレスはワイアットを責めるような表情をして不満を漏らした。

「それは言わない約束でしょう? でもこの後も予定があるし、帰りますか。それでは失礼致します」

と言い扉に手をかけそうになった所を遮り、ワイアットが扉を開け2人は兵舎へと帰って行った。

それを見届けた私は嵐のようだったけど……まだあとディランが来るんだよなそう思った瞬間、突然扉が開きバキっという音がして扉が壊れその倒れた音が、辺りに響き渡ったため私は頭を抱えた。どうして、1日に2回も扉が壊れるところを見なければならないのだろう……それに、さっきより扉の破損具合が酷いってか扉って倒れるんだと呆然としているとディランのこんな呟きが聞こえてきた。

「まずいな……扉を壊してしまった。おかしいな加減はしたはずなのに……俺は加減を間違えたのか?」

そう自問自答をしていた。加減間違えたんだろうね……間違えなかったら扉壊れてないでしょと心の中で軽くつっこみを入れていると後ろから1人の青年が走ってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る