第11話 台風の帰還いち
対能課の扉を開けると課の人たちが朝から慌ただしくしていた。
「おはようございます。何か事件ですか?」
忙しそうにファイルを片付ける門叶に尋ねる。
「いいから柊平くんも、お片付け!あそこの二人は使い物にならないから。」
のほほんとコーヒーを飲む九条と烏丸の方を怨めしそうに睨む。
月城は会議室に放置された烏丸の菓子のごみや、飲まれたお茶のペットボトルを片付けていく。
給湯器の周りには食べ終わったカップ麺の容器や洗われてないマグカップが置かられたまんまだ。
(確かにこの部屋は汚い。)
ゴミらしいゴミは一通り片して、床を箒で掃く。
「どうしてこんな朝から大掃除しているんですか?」
疲れきった門叶が答える。
「柊平くんはあったことないと思うけど、今まで他署に出張に行ってた人が帰ってくるんだよね…。」
「じゃあ、その人が凄い潔癖症とか?」
「うーん、そう言う訳じゃないんだけど…。この部屋特に汚いじゃん?前もその人がいなかったときに今の比じゃないすごい状態になっちゃっててね…。正座で一時間説教されたことがあったから、来る前だけは片付けようと思って…。」
優雅に寛ぐ二人が門叶を煽る。
「そーな気にすることないって!」
「そうだ。そうだ。それにその私たち怒られなかったし…。」
「二人ともそうゆう時に限っていないじゃないですか!?空さんの怒りを僕、一人で受け止めたんですよ!!??」
鼻で笑って「おつかれ。」と肩を叩く。
「むきー!」と怒る門叶を宥めながら朝雲がいないことに気がついた。
「…そういえば連翹さんまだいらっしゃってなきんですか?」
「ああ、連さんなら空さんの迎えにいっているよ。」
「そろそろ来るんじゃないかな。」と時計を確認する。
「野郎ども元気か!!!」
という威勢のいい女性の声に全員ドアの方へ振り返る。
(門叶さんの顔色が最悪だ。)
門叶はみぞおちを打たれたのかという顔のまま固まっている。
「んん、まあまあ綺麗にしてんじゃん。天、よくやった!」
その言葉で門叶さんの顔が和らぐ。
「空さーん!この二人僕に面倒くさい仕事全部押しつけるんですよ?!もう、空さんがいない間どんだけ大変だったか…。」
泣きつく門叶を慰めながら月城の方を見る。
「君が最近入ったっていう新人?」
「は、はい!月城柊平と申します。」
堅いなぁーと笑いながら女性は
「私は鼓空!ここの係のやつは全員、私の手下みたいなんもんだ!何かあったら私に言え!」
長身のスラットとしたモデルの様な体型で肩まであるロングの髪をかきあげた。
「姐さん勘弁してよー。」
と九条たちが軽口を叩く。
「っ?あれどこいった?」
何かを探して鼓が部屋の外を覗く。
「ああこんな所にいないでこっちおいで。」
そう一人の少年の手を引き連れてくる。
「…空さんどうしたのその子?!」
「ま、まさか空さん隠し子?!?!」
驚く二人を鼓は「まさか」と豪快に笑い飛ばす。
「なんか、ここ来るときに廊下通ってらこの子に手を引かれてさ、なんか迷子?みたいなんだけど私から離れなくなっちゃってしょうがないからって暫く私が預かることになったんだけど…。」
「この子、自分の名前も覚えていないんだよ。」
「つまりそれって記憶喪失っていうことですか?」
やれやれと困ったように笑い
「そういことらしんだよねぇ。」
と言った。
「んま、そういう訳なんだけど私、宗一郎のところに行って色々報告しなきゃだから…。この子のこともね。」
そう話し課長の部屋へ向かう。
その鼓を後ろからてってってと少年がついていった。
「あの子どう思います?唯月さん」
九条が尋ねる。
「…あの子、注意していたほうがいい。良い方にも悪い方にも未来が二つに分かれている。」
皆に張り詰めた空気が流れる。
「ただ、あの通りの少年だし悪い様にはしたくない。暫く観察って感じかな。」
そんな話をしていると課長室から怒号が聞こえた。
「そうやってお前はいつもいつも!!そんな子供を拾ってきてどうするつもりだ?!?!」
「うるさい!怒鳴らないでよ宗一郎!!しょうがないでしょう?私のシャツの裾を掴んで離してくれなかったんだから!?そんな子供の手を振払えっていうわけ?!?そんなんだといつか部下にも愛想つかされるわよ!?」
固く閉められた鉄ドアの向こうからも伝わってくる…。
「どうゆうご関係なんですか?」
「ああ、空さんは課長の高校の頃の後輩だったらしいよ。高校生の頃からあんな感じだったんだってー。」
そう言って「あんな喧嘩いつものこと。」とケラケラと笑った。
「宗一郎バーカ、ハゲろバーーーカ!!!!」
課長室の扉がバン!とすごい音をたてて開かれた。
「宗一郎の奴、こんな子供放置しろって人の心持ってないんじゃないの!?」
そう言ってガシガシと烏丸の頭を撫でる。
「僕に八つ当たりしないでよ空。それに」
と鼓の耳に顔を近づけ何かを囁く。
鼓は顔をクシャッと歪め、
「わかっているわよ。」といった。
「それなら良かった。」と烏丸が笑う。
「そもそも、この子どこで保護されたの?」
「それがさあ、ロビーでずっと一人でいたのを保護したらしいんだけど…そうしたら記憶喪失でしょ?その上それらしい届け出もないし。」
「なるほど…。保護された場所行けば何か手がかりつかめるかと思ったんだけど。」
そう言って烏丸考え込んでしまった。
「とりあえず、外をふらふらしてたら何か思い出すかも…。どこから来たかとか。」
そう門叶が提案する。
「ああ、そうかもしれないわね!」
そう言とノックもせずに課長室のドアを開け叫んだ。
「宗一郎!私達、外散歩してくるわ!!」
「なに言ってんだお前!?」
そう止めようとする碇を背に
「柊平くんも行こうか!」
と、月城と少年の腕を引っ張り出ていってしまった。
部屋には「胃が痛い」といったふうにに顔をしかめる碇と唖然と目をはる門叶。
ケラケラと笑い続ける九条と朝雲、烏丸がのこされてい。
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