第8話 不思議な隣人よん
新宿のバスターミナルはいつも通りの人混みだった。
(このから一人の女性見つけるのも至難の技だぞ。)
「唯月さんの読み通りならそろそろこの辺通るはず…。」
目の前をすごい速さで女性が通り過ぎる。
「…柊平くん追うよ!」
「っ、まさか今の人がですか?」
人混みをかけわけながら女を追う。
大通りに出たところで門叶が月城に耳打ちをした。
「僕が後ろの男引き留めておくから柊平くんは彼女を保護して。」
後ろを見ると明らかかたぎじゃない男たちが数名。
門叶の目を見て頷く。
(…僕のできることは彼女を守ることだけだ。)
月城は女の横に並び
「警察です。鳥羽春夏さん、貴女を助けに来ました。一緒に来ていただけますか?」
女が驚いた顔で月城を見上げる。
「詳しいことは署でお聞きします。」
と彼女を連れて行こうとすると、何らかの鈍器が月城の胴に激突する。
とっさに彼女の盾になり抱きしめたまま人の少ない路地へと吹き飛ばされた。
「おや?何か余計な虫まで誘い込んでしまったみたいだな?お前の男か?」
そう言い男は女の方へ歩み寄る。
病的なまでの青白い顔と前身を包む黒いモッズコートが只者でないことを暗示させる。
「男を誑かし薬の横流しさせ、それがバレたら今度は別の男を使って雲隠れか?男を食い物にて生きるお前はまるで妲己のようだな。しかし、知っているか?栄華を極めた妲己も最後にはその地位を終われ醜く抵抗した末に斬首される。」
「…せいぜい足掻いて死ね!」
男のコートの中から無数のもナイフが飛び出して来た。
(ギフテッドか!!)
女を路地の奥へと追いやり、ナイフを叩き落とす。
が、ナイフが意思を持ったように重力に逆らい振り下ろした月城の腕を掠める。
『岩をも砕き、天を割る、その神速は麒麟をも超える。』
そう唱えると今まで以上の力が湧いてくる。
(唯月さんの言っていたことはあながち間違えじゃなさそうだ。)
ナイフの雨をくぐり男の間合いに踏み込む。
「お前なにものだ?」
月城はひきつった顔で笑った。
「やっと、こっちに興味を持ったか。僕は指定特殊能力対策課1係、月城柊平だ。名を名乗れ不躾者。不意打ちで女性を襲うなんて。」
小馬鹿にしたように男は言う。
「なるほど、道理で。しかし、お前の守っている女は口匠に馬鹿な男どもをだまし殺させているんだぞ?自分はのうのうと安全な場所にいながらな。」
「ただ、相手が悪かったな。烏鵜組の薬に手を付けさせるなんて。」
そう吐き捨てると静かに言い放った。
「『鷹視狼歩』散らせ。」
男の周りを浮いていたナイフが空を切り女を環状に取り巻いた。
「危ない!!!!!」
数十本にも及ぶナイフが一直線に女へ向かう。
すくんで座り込んだ女の体を月城が上から覆いかぶさるように守る。
「はあ、はあ、はあ…。怪我はありませんか?」
そう言う月城の体には無数の切り傷で白いシャツが赤く染まっている。
男が怪訝そうに聞く。
「…なぜその女を守る?」
(なぜ?なぜ?そんなこと決まっているだろう)
「なぜかって?面白いことを聞く。それは、僕が警察官だからだ。それ以外に理由がいるのか?」
「なるほど…。月城柊平、お前の名前は覚えておいてやる。だからさっさとくたばれ。」
手負いの月城に猛烈な勢いでナイフが迫る。
『饕餮』
聞き覚えのある声がして目の前に迫っていたはずのナイフが消えている。
「やあ、柊平くん。中々男前な格好だね。」
そう言い、月城の前に九条現れる。
「九条どうしてここに?」
「途中で唯月さんの予想がかわってね。『柊平くんが危ない』ってね。ぎりぎり間に合ったみたいで良かったよ。」
そう言い、月城を下がらせた。
「後は任せて。彼女をよろしく。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます