第7話 不思議な隣人さん
「っていう訳なんですけど、どう思います?唯月さん」
本部に帰る車に乗り込みながら烏丸に聞く。
少し考えて、
「その片山くんの住んでいる場所わかる?早めにそのトランク回収しに行ったほうがいい。」
「天、本部帰る前にそっち寄って。」
と門叶に言った。
「あの、片山のやつそんな大変なことになっているんですか?」
「このタイミングで中身のわからない『何か』は危険すぎる。もし、片山くんの連絡先がわかるんだったら電話してみて。」
急いで片山の携帯に電話をかける。
一向に出る気配はない。
プルルルという電子音が続く。
「そんな…。」月城の顔に後悔の表情が映る。
(取り敢えず帰れなんて、なんて適当な対応をしてしまったんだろう?少し考えればわかったはずなのに…。)
門叶さんが優しい声で言う。
「それだけで危険だって思う人ほとんどいないよ。君の悔やむことじゃない。後悔するくらいなら今何をすべきなのか考えな。きっと大丈夫だから…。」
僕らが乗った車は他の車を横目に片山のアパートを目指す。
(僕のせいだ。僕がもっと真面目に聞いていたら…。)
片山のアパートのドアを叩く。
「おい!おい!片山!!いるのか!!」
中から怪訝そうに片山が顔を出す。
「…どうしたんだ?そんなに慌てて」
素頓狂な返事に膝の力が抜ける。
「おっおい、月城?!」
「片山…電話かけたのに気づいてなかったのか?」
「あー、本当だ。風呂入ってて出れなくてごめんな。」
風呂、風呂で良かった。
「何かあったのかと思った…。」
「何かって何だよ?それより、後ろの人たち誰だ?例の先輩?」
そう言い、烏丸と門叶の方を見る。
「門叶と申します。柊平くんから例のトランクの話を聞いてできればこちらで預からせていただきたい。」
「ああ、いいけど…。でも一応人から預かったものだから。」
「トランクと一緒に貴方の身柄もこちらで保護させて貰ってもいいですか?」
片山は驚いた顔で
「俺の?身柄?逮捕されるんですか、俺??」
「うんうん、違う。君は一般人が踏み入れてはいけない領域に踏み入った。だからこちらで君を守らせてほしい。」
「どういうわけだ?説明してくれよ月城!?」
深呼吸をして片山の目を見る。
「…深い理由は説明できないが、何も聞かずについてきてほしい。全て解決したらもとの生活に戻れるから…。」
片山は少したじろぎ「わかった。」と頷いた。
片山は1係にて保護された。
「それで?話をまとめると川に烏鵜組に報復のために殺された男が隅田川に浮いてて、その近くに柊平くんのお友達の片山くんがいて、んでその片山くんのお隣さんの美人お姉さんに中身不明のトランクを預けられた。そのお姉さんも昨日から行方不明…。そして片山くんを保護。っていう事であってるんだよね?」
門叶が頷く。
「例のトランクは今、2係に検査をお願いしているんだけど。なんせ何重にも電子ロックがかけられていて、こじ開けてなにが起こるかわかんないもので…。」
烏丸が片山へ歩み寄り、
「そこで一つ確認しておきたいんだけど、そのお隣さんの彼氏ってこの男?」
昼間の死体の男の写真を見せる。
まさかと片山の顔を見る。
「あっああ、この人ですよ。もしかして昼間の事件ってこの人なんですか?!」
片山の顔が蒼く変わる。
「やっぱりそうか…。大体視えた。」
そう言い、この少年の顔をした刑事は口端を釣り上げ不敵に微笑んだ。
「まず、事の発端は今日川に浮かんだ男が烏鵜組の何かをくすめたことに始まる。」
「恐らく売人にさばくよう言われていた薬を個人的に売っていたんだろう。だけど組の島で薬を売れば足をつくのも時間の問題だ。男も特定されるのも時間の問題だと思い自分の彼女に自らがためた薬を隠すように頼む。」
「その夜、女は組に着服が見つかり男が連れていかれた事を知る。彼女の恐怖したことは簡単に想像つく『夜中にこんな荷物を持っていたらそれだけで怪しまれる。それどころかもう自分の存在も知られているかもしてない。』そして、妙案をおもいつく。鍵をかけ隣の大学生に預けてしまう。暫くの間だけでも自分から目をそらせられる。そのまま彼女は姿を消した。」
「もし、君の部屋から薬が詰められたトランクが見つかったとしても片山くんが男の仲間だと思われて終わる。」
「もちろん片山くんが男と同じ様に川に浮くことになるだろうけどね。」
「そっそんな…。」片山が絶句する。
無理もない、あと一歩間違えたら死んでいてもおかしくなかったのだから。
「…それだと次に危険なのはそのお隣のお姉さんだね。名前とかわかる?」
門叶が尋ねる。
それには九条が答えた。
「住所で確認したところそのお隣さんは鳥羽春夏23歳。『はる』という名前でキャバクラで働いてる。昨日、店にも来ていないらしい。」
と店のホームページの『はる』と書かれた画像をみせる。
そこには茶髪、巻髪の美人が見えた。
「あっああ、この人です。仕事行くときとかいつもこんな格好していたと思う。」
「…九条さん、住所だけでなんでそんなことわかるんですか?」
九条は「んー、秘密。」とにやりと笑った。
急に烏丸が大声を挙げた。
「動いた!その人、新宿のバスターミナルから夜行バスに乗ろうとしているのを組の奴らに見つかる。早く保護した方がいい。死体が増える前に。」
ガタッと門叶が立ち上がる。
「柊平くんと僕で行きます。」
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