第6話 不思議な隣人に

「失礼します!」


一人の男が対能課のドアを叩く。


「あの、すみません。一課の者です。警部から対能課の協力を求めるようにと。烏鵜組との関連が疑われています。至急現場に急行してください。」


(烏鵜組?暴力団か?)


「わかりました!すぐ向かいます!!」


これまでの剣呑とした雰囲気とは変わり、皆の顔に緊張が見える。


「柊平君すぐ出る準備して。僕と唯月さんと柊平君が出るでいいですか?」


門叶の迫力に気圧されながらも急いで門叶と烏丸の後を追う。


「あの、烏鵜組ってなんですか?」


「ああ、そうか説明してなかったね。」


そう言いながらも足は止めない。


「烏鵜組はただの暴力団じゃない。能力者を多数飼っていいてね、決して人数は多くないが2代で東京最大勢力と言われるまでに上り詰めた。今回の呼び出しは烏鵜組との関連が疑われる事件…つまりギフテッドが関わっている可能性が大きい。」


「普通の捜査員が手に終える相手じゃない。」


「シートベルト付けて」と言って門叶は車を発進させた。


「来て早々、こんな事件で大変だと思うけど気合入れてね。ぼーっとしていたら殺されるよ。」


緊張で身を強張らせていると、


「大丈夫、今のところ君の未来に死ぬようなものは視えていないよ。」


そう言い、烏丸は頭をポンポンと叩いた。


「着いたよ。」


そう言われて着いたのは隅田川の河川敷だった。

野次馬を押しのけ警戒線をくぐり、刑事たちがあ集まっているところを目指す。


「小山田さん、おつかれさまです。」


「おう、わざわざ悪いな。」


そう言ってこっちを見て少し驚いた表情を浮かべた。


「ん?新人か?」


「新人の柊平君です。」


「よろしくお願いします。」と軽く会釈する。

「おう。」とだけ言って話は事件へと移った。


「これを見てくれ。」


めくられたブルーシートの下に若い男の死体がある。

太もも、左肩、胸に一発ずつ撃ち抜かれ、手は指が全て切り取られている。

口に詰められた石で唇はひび割れていた。


「直接的な死因は出血過多であったこと。うつ伏せで川を流れているのを発見され、通報をうけて我々が駆けつけたのだが…。」


もう一度この痛ましい遺体を見つめる。


「一般の捜査員による捜査を制限してださい。これは彼らのやり方だ。」


彼らとは烏鵜組のことだろう。


「どうしてそんなことわかるんですか?」


月城の問いに烏丸が答える。


「奴らの報復にはマナーがあり、殺し方にも意味がある。」


「まず、口に岩を詰め声が出せないようにする。次に太もも、肩、肺の順で撃つ。さらに報復の場合はそいつが犯した規律を知らしめるようにそれぞれの部品を欠いていく。」


「例えば、目をえぐられていたなら『好奇心は身を滅ぼす』舌が抜かれていたなら『口は災の元』この遺体が指が切り取られているのは『手癖が悪い』」


「つまり、この被害者は…。」


「彼らの何かをくすねたんだろうね。」


烏丸の言葉に小山田が噛み付く。


「それならなおさら捜査をやめられるか、もしそのくすねた何かを見つけられたら、一網打尽にできるかもしれない!」


烏丸が小山田を嗜めるように言う。


「それでくたばるような奴らじゃない。部下を二階級特進させたくないのなら下がらせて。それとも自分が川に浮いてからじゃないとわからないのか?」


「クソっ!」と唇を噛みしめ、深い深呼吸の後に「すまない。頭に血がのぼっていた。烏鵜組に関してはあんたたちの畑だったな。」

といい、頭をポリポリと掻いた。


「しかしまあ、できれば捜査状況を教えてほしい。それに俺らにもできることがあれば言ってくれ。協力する。」


「ありがとうございます小山田さん。いつも、助かっています。」


「おう!」っと小山田は笑った。


ふと見た野次馬の群れの中を一人見覚えのある顔をみつけた。

たしか高校の同級生だ。

彼も僕のことがわかったようだ。

少し悩んだ顔をし、思い直したようにこちらを見て手招きしながら口を(来てくれ)とパクパクせている。

三人に「ちょっとすみません。」と言って彼の方へ近寄る。


「お前、月城だよな?高校のとき同クラだった片山だけどおぼえているか?お前刑事なんだよな?だったらちょっと話たいことがあるんだけど…。」


「ここじゃちょっと」と言って野次馬のいないところまで連れてかれた。


「んで、お前話したいことってなんだよ?目撃証言ならこんな所来なくても…。」


月城の言葉を遮って片山が言う。


「あの、なんかよくわからないだけどさ、俺の大学いくのに下宿していて、下宿しているアパートの隣の部屋にすっごい美人のお姉さんがいるんだけど、やっぱり男がいて顔だけ知っているんだけど、いつもいかつい格好してて怖くて…。そうじゃなくて、問題はその隣の部屋の女の人が昨日いきなり訪ねてきて『これを預かっていてください。』ってトランクを置いてちゃったんだけど、その人も昨日から帰ってきてないんだよね。どうしよ?俺なんかヤバいのに巻き込まれていたりしない??」


「ねー、月城なんとかしてよ。」とすがりつく片山を宥め


「とりあえず、先輩には報告しておくからお前は早く帰れ。」


そう言い念の為住所と連絡先だけ聞いて月城は現場に戻っていった。

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