フーリダヤム

十三不塔

２００５年５月１８日　レビュアー　月影ロン

北国のリゾート、ギアロ・デ・ラ・コスタに生まれ育った少女ファスダ。

彼女の夢はエンターテイメントのメッカであるワートで女優になること。

恋人との別れや生まれ持ったハンディなど幾つもの苦悩を乗り越えていくなかでファスダはやがて敏腕スカウトに見出される。

運命的な出逢いを経て、いざ憧れの地ワートへ向かうファスダ――果たして少女の夢は海を越えて世界へと届くのか？！

一読、なによりもひたむきに突き進むファスダから目が離せなくなりました。

野心たっぷりなマネージャー・ケイリやライバルのショウンなどファスダに負けず劣らずエネルギッシュで曲者ぞろいのキャラクターたちが縦横無尽に活躍します。中でも、ワートのスラムに生きるヒューロは彼女に危ない橋を渡らせる悪魔のような存在として描かれますが、そんな悪どいギャングにも憎み切れないカッコよさが滲み出ている。

きらびやかなワートのスターたちとその暮らしにも魅了されます。グレート・ギャツビーのような（映画しか見てません）華麗な世界に飛び込む田舎生まれの少女が、都会の洗礼を浴びながら、したたかに成長を遂げ、どんどん才能と魅力を開花させていく様はうっとりしてしまいます。

狡猾なプロデューサーや芸術肌のスタイリスト、なんといっても作中最大の難物といっていい名監督シッディ・オーリングとの緊張感溢れる応酬はまるでガンマンの立ち合いのようでドキドキしっぱなし。

まだまだ語り尽くせぬ魅力はありますが、この見事な傑作をひとりでも多くの人に読んでもらいたいです！