第2話

 お父さんは週に一回、日曜日の朝に稽古しにきてくれた。朝の掃除からも厳しくて、常に怒っている。

 稽古の時は竹刀の握り方から姿勢、声の出し方、細かいところ全てに厳しかった。涙が出たけど泣くとさらに怒る。


 僕はお父さんの子供なのになんでそんなに厳しくするの?


 毎週日曜の朝は憂鬱だった。でも

「ミモリくん、前よりも姿勢良くなったし声も大きくなったね」

 と道場の友達に褒められた。なんでみんなは褒めてくれるのに……。

「ミモリ、なんか浮かない顔ね」

「そんなことないよ」

 ママもきっとお父さんがあんな人だから一緒にいたくなかったのかな?


 冬休みに入るとお父さんは週に二回稽古に来た。憂鬱な曜日が増えた。

 僕から言い出したことだから今更撤回するのもアレだけど。


 剣道をやって初めての冬、とても寒くて、傷も多くて朝の稽古は辛かった。赤くなった手。僕は休憩中、座ってその手を眺める。

「ああ、それしもやけじゃないか」

「しもやけ?」

 お父さんが大きくてゴツゴツした手で覆ってくれた。あったかい……。

「お風呂で熱いお湯と冷たい水、交互に入れるんだ。しもやけあると力でないだろ……たく、美帆子さんはこれ気づかなかったのかよ」

 あたたかい。もっと握っていて欲しいよ。


 お昼になると

「ミモリ、よかったらお昼、うちに来るか?」

 お父さんの家……! なんだかドキドキしてきた。


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