25話♡:意外と強いとは。
■□■□
茶メンが来てしまったのは、色々と予想外ではあったものの、出入り口が閉じられてしまっているので、早く帰ってと言う事も出来ない。
色々と思う所はあるものの、ひとまず、共に行動する他に無くなってしまった。
「こうして、マイハニーの貞操は守られたのだった……」
「結構ガチめに振り抜いたんだが、頑丈だなお前。そういうスキルでも持ってるのか?」
「え? いや、そんなスキルは持ってないけど」
殴られたダメージも何のそのと、気がつけば、茶メンは元に戻っていた。
いつも、あっという間に復帰するけれど、それはどうやら、スキル等の恩恵ではなく自前の回復力によってらしい。
ある意味凄い……。
と言うか、二段に殴られたのに、茶メンはその事をあんまり気にしていないようである。
案外懐が広いのかな?
いや、何も考えていないだけかも。
「それにしても、まさか入るだけの一方通行とはね……」
茶メンは、ふむふむと頷きながら、通り抜ける事が出来なくなってしまった壁をぺたぺたと触る。
「で、戻れないのは分かったけど、じゃあ今後どうする予定で?」
「進むしかないって話をしていた所だ。……な?」
「うん。一応、今エキドナちゃんを様子見に出しているから、戻って来るのを待ってからにはなるけど」
「マイハニー、ちょっと待って。エキドナちゃん?」
「……勇気の蛇だ。お前も見た事あるだろ」
「あっ、あの時の蛇……。そういえば、召喚士のスキルで出したもの、だっけ? さすがマイハニー。素晴らしいスキルを持っている」
「一体だけ出せないし、別にそこまで凄いわけでも――」
「――っ!? 一体しか出せないとなると、自衛が心もとない! なるほど、ここは俺がマイハニーを守る必要があるようだね。丁度良く俺のスキルは戦闘特化だし」
い、いや、別にそれは二段がいるから必要は無いんだけども……でも、それを言ったらまた変な事言い出しそうな気もするから、言うのはやめておこうかな。
にしても、茶メンのスキルかぁ……。
気になる事は気になる。
子豚みたいにスキルを悪用してくる可能性もあるから、知っておいたほうが、そうした時を想定しての対策もしやすいしね?
戦闘特化とは言っていたから、状態異常が云々とか、そういう系統では無さそうだけど……。
「そうだ、一応俺のスキルがどういうものかを教えておくよ。知りたいだろうからね」
僕が、どうやってスキルの効果を聞き出そうかと悩んでいると、なんとも都合が良い事に、茶メンはそれを自ら公表し始めてくれた。
僕が知りたいと思う実際の理由と、茶メンが考えている僕が知りたがっている理由は、かなり意味合いが違うのは明白だけれど、ともあれ教えてくれると言うのなら助かります。
で、そんな茶メンのスキルはと言うと、次のようなものであった。
――――――――――
四振りの日本刀①東②西③南④北を扱うことが出来る。
使用者のレベルアップに伴い、各刀を進化させることが可能。
スキルの種類や値、ステータス値によって進化先が増える。
※、破壊された場合、修復は基本的に進化による変化に伴ったもの以外では起きない。帝刀に連動した修復スキルを獲得した場合に限り、進化以外で自動修復する。
――――――――――
なんというか、普通に強そうなスキルである。
四つも刀が使えるうえに、レベルアップで更にその刀達が強くなっていくとか……。
しかも、破壊されても、進化時に勝手に直るようだし、進化しなくても修復出来るスキルの獲得も示唆されていたりする。
シンプルではあるけれど、誰が見ても強いと分かるような、そんなスキルだ。
正直これは、茶メンには勿体ない性能。
「これなら、マイハニーを守れる」
茶メンが先ほどから使い始めている、マイハニーとかいう僕への変なあだ名はスルーするとして、ともあれスキル自体は非常に強力なせいで、僕を守る、と言う言葉に妙な説得力を感じないでもないという……。
まぁ、変な要求をされたら嫌なので、僕から保護を求めたりはしないけれど。
それにしても、こうも戦闘に全振りみたいなスキルだと、イザ襲われた時の対策の練りようがない。
地道にレベルを上げて、僕自身が強くなる他には無さそうと言うね……。
と、まぁ茶メンのスキルに対する対策は、それ以上の事が今は考え付かないので一旦ここで区切るとして……僕は、それから次に、なんだか二段のスキルが知りたくなって来る。
「二段のスキルは、どういうのなの?」
僕が二段に話を振ると、二段は一瞬眉根を寄せた後に、「……俺のスキルを気にする必要はない」とだけ答えた。
教えたくないのかな……?
こうして秘密にされると、もっと知りたくなってくる所ではあるけれど……でも、言いたくない事を無理に聞くもの悪いよね。
本人が言っても良いと思ってくれるまで、待つしかないかな。
「――ははん、なるほど分かった。鉄、お前もしや、とんでもない外れスキルを引いた?」
僕と二段の会話を横で聞いていた茶メンが、妙に嬉しそうな表情で、そう口を挟んできた。
もう、性格悪いな。
駄目なスキルかどうかは、まだ分からない事なのに。
「よしよし、それじゃあ、マイハニーを守る役目は俺に任せてくれたまへ」
「……ふっ」
小馬鹿にされたハズの二段は、けれども特に気にする様子もなく、大人の対応で軽く笑うと、
「元気が良い事だ。まぁ、無いよりは良いが。……俺のスキルは、副作用があるせいで、中々使えないからな。倉橋みたいなのがいると助かる」
と、呟くように言った。
前半部分はなんとか聞こえたけれども、小さい呟きだったせいもあり、中ほどから後半にかけての部分を僕は聞き取る事が出来なかった。
怒っていなさそうなのは分かったけれど……途中から、なんて言っていたんだろう?
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