23話♡:主人公は自分がアイドルだと言うことを忘れているのかも知れない。
■□■□
「――取りあえず、全員で向かおうよ」
最終的に、僕がその結論を下した理由は、主に二つである。
①DQN小林を見捨てる事によって、クラスに完全な亀裂が入るのを防ぎたい。
②件のモンスターが本当にボスなのかどうかを確かめて、仮にそうであるならば、倒せそうなら倒したい。
特に、②に関しては、階段の先が気になるという事もあって、出来る事なら叶えたい。
まぁその、ボスであった場合、僕たちに倒せるのかという懸念はあるけれど……クラスメイト達が全員揃っているのなら、戦えるスキル持ちもそれなりにいるのだろうから、そこは何とかなると思っている。
今のところ、出会うモンスターは、各個で倒せる範疇の強さなのだから、ボスがありえないくらい強い、と言うのは考え辛い。
「ボスモンスターが存在しているのだとしたら、いずれ避けて通れない相手だと思う」
僕がそう言うと、クラスメイト達は頷いてくれた。
「それもそうだな」
「全員一緒はこれから先無理かも知れねぇけど、今回だけなら」
「取りあえず、行くだけ行こうぜ」
うん……?
前回と違って、僕の言う事を素直に聞くね。
どうして……?
反発される気もしていたのだけれど……。
「反対意見は……無しで良いの?」
「……色々と勇気も酷い目に遭いかけたからなぁ」
「だな。今回ぐらいはおとなしく聞くさ」
なるほど。
子豚の一件で僕が酷い目に遭いかけたから、気を使ってくれているようだ。
色々とうるさいし、揉め事も起こすクラスメイト達だけれど……全員が全員性格が悪いわけでは無いんだよね。
□■□■
――DQN小林の居場所に向かって迷宮内を進んで行く。すると、そのうちに世間話を挟むクラスメイトがそこそこ出始めて来る。喧嘩越しだった雰囲気が、なりを潜め始めた。
少しだけ、僕はホッとしたものの――しかし、火種が無くなったワケではない事を忘れていない。注意だけは、切らさないようにして行こうと思う。
……クラスメイトの人間関係については、僕がどうこう出来る問題でも無いので、なるようにしかならない事ではある。でも、だからと言って知らんぷりをするのも気が引ける。
少なくとも、僕に気を使ってくれるぐらいには、悪い連中でも無い感じなのが先ほど分かったわけだし……。
「……どうした? 何か一生懸命考え事しているって顔だが」
僕の隣を歩いていた二段が、心配げな表情で話しかけて来た。
急だった事もあって、僕は少しビックリしつつも、今考えている事は別に言う必要も無いなと思ったので、適当な話題を振って誤魔化す事にした。
「いや、えっと、その……DQNのスキルって何だろうなって思って」
「……DQN?」
「小林ぃ」
「ああ、なるほど」
この口ぶり……もしかして、DQN小林のスキルを知っているのかな?
「僕も又聞きしただけになるが、それでも良いなら……教えるぞ」
知ってたらしい。
まあ、教えてくれると言うのなら、素直に教わりますけども。
「そうなんだ。それじゃあ、教えてくれると嬉しいかな」
「……小林のスキルは【
相手を一時的に自分以下に出来るスキル……?
つまり、格上を雑魚に出来る能力って事かな?
「……なるほど」
なんとなく、DQN小林が特攻をしかけた理由が分かった気がする。
こんな効果があるなら、ボスかも知れない相手にも平気で戦いを挑めるわけだよ。
僕がウンウンと頷き
「強そうなスキルだね」
と、そう言うと、二段が微妙な感じの何とも言えない表情になった。
「……ただ、力の大小ってのは、勝負に影響を与える事は与えるが、それでもやはり勝つか負けるかは最後まで分からないものだ。そういう意味では、役に立たん。むしろ、慢心になりやすい分気を引き締めなければいけないスキルだと思うが」
あー……確かに、そういう見方も出来なくは無いのかな。
仮に相手のステータスが下でも、絶対に勝てるとは限らないと言うのは、それはそうだ。
ステータスの数字は大事だけれど、でも、それだけが勝敗の全てを決めるわけでも無い。
僕は、感心して、パチクリと瞬きを繰り返す。すると、二段がふっと笑った。
「……しかしまあ、小林の事はともかくとして、お前も大変だな」
突然、二段が同情したような視線を向けてくる。
いきなり何だよう。
「さっきも、いきなり話振られてたり」
「そ、そうだね」
「……その前は襲われかけたり」
「子豚の事?」
「そんなあだ名つけたのか」
「えっと、まぁ、うん。……そういえばだけど、僕、子豚の治療の途中で居なくなったから、その後が分からないんだけれど……あの後、子豚はどうなったの?」
「治療終わった後に、皆からボッコボコにされてたぞ。ほれ、あそこに居る」
二段が指を差す。
そこには、一人ぽつんと列の端を歩く、顔がパンパンに腫れ上がった子豚が居た。
なんだか、ゴリにやられた時より、酷い事になっている。
「どいつもこいつも、お前が襲われかけた事に、腹を立てていたようだ」
えぇぇえぇ……。
これは、喜ぶべき所なのだろうか……?
それとも、やり過ぎだと思うべきなのだろうか?
まさかの事態に、僕はなんとも言う事が出来ず、ただただ「ははは……」と苦笑する他に無かった。
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