迎える命(二)
ひとつ気にかかったのは……『終わる
神使の方を目でうかがうと、私の視線に気づかれ、目を伏せられた。……お祖父様も、神使の方も。覚悟の上、なのだな。
「《魔も邪も入れぬようにするゆえ、後はそなたが気を確かに持つのだ。良いな》」
お祖父様は神官としての務めを果たそうと、気丈にふるまっていらっしゃる。体は悲鳴を上げているだろうに。
「……はい……」
頷かれた義母上の心の重荷は、少し軽くなるのではなかろうか。完全に取り除かれるわけではないことは、皆、承知している。
この世界のお産は、母子ともに安全とは決して言えぬ。母となる方は、その身に新たな命を宿しながら……死と隣り合わせにいるのだ。
「挨拶のために、無理をして起きていたのだろう。さぁ、横になりなさい」
お祖父様が、あたたかな眼差しで義母上をいたわられた。
「……お心遣い……かたじけなく、存じます……」
義母上は傍にいらした父上と母上の手を借り、お産用の布団へ横になられた。父上と母上は、そのまま傍についていらっしゃる。母上は、義母上のか細い手を握られた。
父上にとっては、大事な側室ゆえに。
母上にとっては、妹のような存在ゆえに。
お産の間際まで、おふた方とも寄り添われるのだろう。
義母上は申し訳なさそうではあるが、どこかホッとしたご様子でもあった。
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