新たな心持ちで(三)

 わだかまりは、いまだ私の内にある。だがこれからは、彼らに伝えていこうと思う。

 ともにいられるうちに。

 心を尽くして。

 私がいかに、彼らを大切に思っているかを。


「髪結いを終えたら、早速そなたに伝えておきたい」

「良い知らせですの?」


 もう片方の耳前にも束を作るため、丁寧に櫛けずる。近江の手つきは、優しい姉そのものだ。


「そなたにとって、良い知らせであればよいが」


 私は苦笑した。

 近江から渡された手鏡で、仕上がりを確認する。手早く丁寧な仕事ぶりで、本日も見事に仕上がっていた。


「髪結いの道具を片づけたら、私の前に座してくれ」

「はい」


 近江は、そわそわしつつも片づけを済ませ、静かに座した。

 私は近江の目を見つめた。


「そなたの細やかな心配りには、いつも感謝している。日々を過ごす上で、そなたがいてくれることを、ありがたく思う」

「……若様……」


 近江が目を見開き、声を震わせた。


「そなたの髪結いは、いつも見事だ。紐の結び方も日によって異なるのが、実はひそかな楽しみなのだ」


 感謝を素直に伝えられる。

 そのことを、嬉しく思う。


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