新たな心持ちで(一)
「若様」
御帳台の外から、やわらかな声がかかった。近江の声だ。
「朝にございます」
歳の離れた弟をやさしく起こすような、いつもと変わらぬ声を耳にし。私は、この世界で生きていることを実感した。
御帳台から出て朝の
「本日は、こちらをお召しになってくださいませ」
「うむ」
色合わせが名称となっている『
朱色の
ひとつ道が違えば、こうして近江と会うこともなかったのやもしれぬ。今あることを、あたり前だと思ってはならぬのだな。夢にて、良い教えをいただいた。
「近江」
「はい。腰帯がきつうございますか?」
「いや、……問題ない」
「ならばよろしゅうございます」
次は二筋
「……実は、昨夜、御神託をいただいた」
「まぁ……」
背中ほどまである私の髪を、丁寧に櫛けずる近江の手が止まった。
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