時差を持つ人々
体内時計と実際の時間とには、少しばかりの差異があるらしい。例えば時間というのは、太陽の動きなどから観測された謂わば引力の流れを数値化したものである。が、母なる大地より生まれ、数十年の時を過ごし、幾つもの命を継承せしめた人間の体内時計が、どうして地球のものとは異なっているのか? それが疑問だった。
寄り添ううちにこちらの方から合わせていくだろうに、朝に目覚めて夜に眠るこの繰り返しとは相反する身体の、奇妙な時差にはどう接するべきだろうか。外に出ず、屋内に閉じ籠もっていると、各々の世界に応じた時間というものができてくる。
例えば私の場合には一日が二十七時間に感ぜられる。そのように生活してみて、身体は不自然なくらいに──しかし、自然体でいられるのだ。
ある日、私はこの奇妙な時差なるものを追求すべく、様々な手法を用いて研究した。結果、驚くべきことに、殆どの者が私と同じく一日を二十七時間と体感していることがわかった。もちろん例外はあったが、多数の者がそう感じているということらしい。
地球に居ながら、どうしてこんな結果が生まれ出たのだろうか。私が頭を悩ませていると、友人からメッセージが届いた。文面を読むと、驚愕のあまり慄いて、私は椅子から転げ落ちた。
内容はこうだった。
「一日が二十七時間に感じられるだろう惑星を、実際に調べてみたところ、ただひとつだけ発見できた。しかもそこには、どうやら生命の痕跡が見られ、人型に近しいものだった。
これは勝手な推測だが、我々はもしかしたらこの惑星に生息していたのかもしれない。そこからどんな理由があってのことかはわからないが、地球へと移住してきたのだろうと思われる。
つまるところ、僕たちは地球人ではなかったかもしれないということだ。ここで提案なんだが、明後日にでも近所の喫茶店でお茶をしないか。詳しい話はそこで話すが、一応のこと、手短に説明しよう。
君が調べ、判明した時差を持つ人々と共にコミュニティを作った。そこで、帰郷しようじゃないかという案が出されたのだ。良かったら君も来ないか。開拓ではなく、帰宅ではあるが……なかなかどうして、楽しい冒険になると思うよ。返信を待つ」
……。
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