第308話 聖女の祈り
リン、サナティ、アリアが手を繋いで輪を作る。
そして、静かに目を閉じた。
すると3人を中心に聖らかな輝きの光が集まる。
「「「愛と節制と智慧の聖女の祈りに応え、彼の者の呪いを討ち祓え!──『
3人が合わせて唱えると、光が輪を作り辺り一帯に広がっていく。
そして、その光がサーヴァントに覆いかぶさるように集まっていく。
「あれは、まさか聖女のチカラ?!人間の国から出てこない筈の聖女がなんでこんな所にいるんだよ!?」
カーズが驚くのも無理はない。
王族であり、国の最重要人物である聖女が人間の領土から出てくるなど前代未聞なのである。
先の王都襲撃で壊滅的な打撃を受けて、王家の秘宝が奪われるような事態が起こらない限り国の外に出して貰えるような人物ではないのだ。
本人は自分の意思で冒険者になり俺と一緒に旅をしているつもりだろう。
だけど、俺と一緒に旅をする事は分かり切っているので、本人の意思を尊重したフリをしているだけだろうな。
それに今や王都に俺らよりも強い戦力は持っていない。
つまり、大事な娘を一番安全な場所に送りこんでいるともいえる。
まぁ、最も危険な魔族である魔王と対峙しちゃっているけどね。
しかし、驚くところはそんなとこじゃないぞ?
カーズ、お前の前にいる聖女は3人もいるのだから。
「でも、たかが聖女一人でサーヴァントがどうにか出来ると…、あれ?3人?あれ全部聖女なの??」
「教える義理は無いけど、そう言う事さ。だから、カーズ。お前も安心して成仏しなよ」
「僕を邪霊みたいな扱いをするな!というか、聖女が3人とか聞いた事ないぞ?
あの女神め、僕らを謀ったか!」
カーズが何のことを言っているのか分からないが、やはり聖女というのは普通は一人しかいないのか?
呪詛めいた言葉を吐きながら、狙いを聖女切り替えるカーズ。
しかしそれをカルマ達が悉く阻止していた。
「主達の邪魔はさせんぞ。カーズよ、もはや観念するがいい!─グラビティフィールド!」
『そのまま燃え尽きるが良い。〈
重力魔法によってカーズの動きを止めるカルマ。
そこに重ね掛けるようにニクスが自身の最大奥義を放つ。
灼熱がカーズを包み込み、その場から動けないカーズを何度も燃やす。
「うわわ!流石にあっついよ!僕を殺す気なのかい?」
「まだ、そんな事を言う余裕があるのか!」
かなりのダメージを受けている筈なのに、まだ余裕を見せるカーズ。
いや、元々あんな感じなのか?
しかし、カルマ達は手を緩めたりしない。
「まだまだ余裕ありそうだよ?ディアナ」
「ええ、それならとっておきを使って差し上げないとね、ヘカティア」
双子の竜姫が、お互いの手を合わせ目を閉じて精神を集中させる。
するとすぐに金と銀色の光を放ち出した。
「「顕現【
次第に光が強くなり、ぱあっと光が広がるとそれが竜の形を創り出した。
そこに現れたのは、最強の竜と呼ばれし
「「我らの本当のチカラで、お前を撃ち滅ぼしてくれよう」」
「うぇっ!
逃げようとするも、カルマに動きを止められているせいで回避すら出来ない。
「ま、拙い!あれは!」
着弾した瞬間に、七色のドームが作られて中が地面が溶ける程の高温となっていた。
あまりの威力に、カルマのグラビティフィールドも吹き飛んでしまった見たいだが。
「が…、があっはぁっ。流石に…、ヤバかった…!!」
ボロボロになったカーズ。
体の至る部分が焼け爛れてしまい、受けたダメージの深刻さを物語っていた。
しかも、自己再生能力すらも上回って継続ダメージが入っているらしく、このまま力尽きるのも時間の問題であろう。
「主よ、カーズは抑えました。今のうちです…!」
カルマに言われ、俺も気持ちを切り替える。
ニケが障壁を張る事で3人の聖女は守られている。
更に、おれの覇王のスキルでステータスUPや状態異常無効化、SP・MPの回復等を同時に行っている。
それのせいで、俺のMP・SPが切れそうだがここで切らすわけにもいかない。
しかし、その心配ももうすぐ終わるだろう。
なぜなら、3人が展開した『
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴアアアアアアアアアァァァァァ!!!
聖なるチカラに囚われて、呻き声を上げるサーヴァント。
元々恐ろしい顔をしているが、さらに悍ましい表情を浮かべている。
普通の人なら、あの顔を見ただけで倒れてしまいそうだ。
『
しかし、サーヴァントもそこから抜け出そうと中で暴れているため、『
「絶対に、ここから出さないよ!パパの為にも絶対に!」
「いつまでも、ユートさんに護られてばかりではいられない!だから、ここで聖女の力を証明して見せます!」
「聖女として育てられた
しかし、3人の顔には疲れるどころか、その目には闘志すら見える程漲っている。
もはや、サーヴァントが消滅するのは時間の問題だ。
「「「悪意よ、滅せよ!」」」
3人が声を揃え、その聖女のチカラを最大限まで強めた。
『
ヴウウォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
サーヴァントが断末魔を上げる。
それを合図かのように、一瞬固まったあと全身にひびが入り、巨大な体が弾け飛ぶ。
次の瞬間にはそれが塵と化し、霧散して消えた。
「「「全ての魂を浄化し、天へ還せ!〈聖浄魂還〉!!」」」
あれは
前に屋敷に縛られた魂を解放するのに俺が使ったスキルだ。
アリアだけでなく、リンとサナティまで使えるようになっているのは、聖女のスキルを獲得したからなんだろうか?
系統的には一緒だし、聖女スキルを取ると
サーヴァントに囚われていた魂が次々に解放され、天に昇っていくのが見えた。
これで彼等も苦しむことなく、新しい生命へと生まれ変わるのだと信じたい。
「サ、サーヴァントが浄化された?しかも、囚われた魂まで解放したの?
…はははっ、覇王が絡むと本当に碌な事起きないよね…。
………もう無理、降参!」
さっきまで悪意の満ちた顔をしていたカーズだが、本当に諦めたのか柔和な表情に変わる。
手に持つ杖を放り投げ、諸手を上げている。
…え?
というか勝手に終わった気にならないで欲しいのだけど。
俺らは、まさかの手の平返しを受けて混乱するのであった。
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