第306話 呪われし亡霊王
カーズは常に魔法陣を出現させて、個々を狙うかのように魔法を繰り出している。
それも膨大なMPを持っているため、消費量を気にせず連発している。
更に恐ろしい事に、自動でHPを回復出来るらしく、減ったHPがどんどん回復している。
これでは埒が明かない。
しかし、MPとSPが徐々にだが減っているためいつかは尽きる筈。
となれば、こちらもどんどん押していくしかないか?
「ふん、持っている魔力の割にはセコイ魔法しか使わぬな。その程度で魔王と名乗るとは片腹痛い!」
カルマは重力魔法でカーズを足止めしつつ、闇属性のブレスを吹き掛ける。
さらに魔法陣を次々に展開し、そこから闇属性の槍シャドウジャベリンを無数に撃ち放った。
まるでミサイルように放たれた黒い槍がカーズに降り注ぐ。
「うーん、魔力はそこそこ多い様だけど、このランク魔法じゃ僕に効かないよ?
…ただ、ちょっと鬱陶しいね」
殆どの魔法を魔法障壁で防いでいるが、それでも何度かは障壁を突き抜けてカーズにダメージを与えている。
ダメージが入るのだから、効いていないというのは嘘という事になる。
だがしかし、数秒もすると減った以上にHPが回復しているので気にしていないのだろう。
『HPが回復するなら、それ以上に減らせばいいのです!…雷の大精霊たるファルコニアが命ずる。すべてを貫く雷の炎で彼のものを撃ち抜け!〈天雷・閃〉!!」
極大の青い稲妻を纏った光閃がカーズに襲い掛かる。
特大威力の雷攻撃は、その魔法障壁を突き抜けてカーズに直撃した。
僅かにだが、顔を顰めるカーズ。
「今がチャーンスだね!いっくよー、ディアナ!」
「抜け駆けは無しですわよ。タイミングを合わせて行くわよヘカティア!」
双子の竜姫が、自身にそれぞれを象徴する光を纏う。
その金と銀の光は、まるでドラゴンになった時のように眩い光を放つ。
「「打ち砕け!〈
二人が拳から放った光が混ざり合い、白金の色に変化する。
結界に包まれているにも関わらず、地面を抉りながら進むその光は問答無用でカーズを貫いた。
「ぐ、がっ!!」
縦に何回転もしながら吹き飛ぶカーズ。
しかし、すぐに態勢を整えその場に立ち上がる。
そしてすぐに淡い光がカーズを包み込み、その傷がみるみるうちに塞がっていくのが分かった。
『回復魔法を使いましたね!それは、我々の攻撃が効いているという事!ですが、回復などさせません!ミラージュエクリプス!』
一瞬立ち止まったカーズの隙を見逃さず、すぐに追い打ちで大魔法で追撃をかけるニケ。
七色の電磁波がカーズを包み込み、その身を焼き焦がす。
さらに、それに合わせてニクスが動いた。
フェニックスの姿本来の姿のニクスは、その身に纏う炎を更に燃え上がらせた。
『妾の炎で燃えよ、
逃げ場がない炎の檻に囚われるカーズ。
荒れ狂う炎が踊り、嵐のように炎が吹き荒れた。
「よし、カーズのHPがかなり減ったぞ!そのまま畳み込め!」
カルマが指示に従い、更に魔法イビルジャベリンにて追撃をする。
ニケも雷魔法トニトロスを更に撃ちこんだ。
─しかし。
「…ふふふ、あははははっ!!!」
絶え間なく降り注ぐ魔法の雨の中、突然カーズが笑い声を上げる。
追い込まれて、気が触れたか?
…いや、違う。
ここまで押しているのに、まるでカーズに焦った様子は無い。
それどころか、まともな反撃を見せないカーズに不気味さすら感じる。
「いやいや、これでも魔王とか言われているからさ、舐めないで欲しいなとか思ってたんだけど、君たち想像以上だね。
僕がここまで押されるのは、数百年ぶりだよ。
だから、そろそろ本気を出さないといけないよね?」
言葉とは裏腹に、魔法を弾き飛ばしたり、強力な魔法で反撃したりする様子は見られない。
まさか、ただのハッタリ?
…って、魔王って言ってる奴がそんなわけはないな。
油断なく、相手の様子を伺う。
その間も、カルマ達が高威力魔法やスキルで絶え間なく攻撃を繰り返している。
そろそろカーズのHPが3割を切るかという所だった。
「うん、これだけダメージを食らえばイケそうだ。
─我が痛み、我が恨み、我が呪いを解き放ち、その力を顕現せよ。
〈
カーズが目の前に恐怖を体現したような、巨大な黒い亡霊を出現させた。
その衝撃で、カーズが張った結界自体が破壊されてしまう。
しかし、それだけでは終わらない。
周りにいた兵士、住民、そしてロペなどがその巨大な黒い亡霊に飲み込まれていく。
「カイト!リン!一旦下がれ!ソレに触れたら何が起こるかわからんぞ!」
「「「了解!!」」」
カーズの兵士たちと戦っていたカイト達は、目の前にいた兵士たちが一瞬で黒い何かに飲み込まれていき一瞬戸惑っていたが、俺の檄で正気を取り戻し、すぐに仲間達と共に俺の後方まで下がった。
リンもクロに乗ったまま、俺の傍まで戻ってきた。
「パパ!あれは一体…。あの兵士さん達は…」
「カーズはレブナントとか言ってたな。見る限り、まわりの生命を吸い取り自分のHPに変換しているようだ」
俺達は、その悍ましい光景に絶句するのだった。
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