第296話 幻都強襲
村長と別れて、俺達はすぐに出立した。
北大陸の南側は雪が多く吹雪くことが多いが、北側はより寒くなる分降雪量は少ないらしい。
その為、このまま飛行艇で向かえば遠くからでも視認されてしまいすぐに俺達がやって来たことがバレてしまうだろう。
そうでなくても、スキルによりこちらを感知する事が出来る奴もいるみたいだからなるべく慎重に行動しないといけない。
その為、都市がギリギリ見える場所まで飛行艇で移動して、そこからは飛行出来る魔獣達を使って移動する事にした。
それに、あの街にはアイツらが居るはずだ。
あのニンジャとかなら、この距離でも感知出来るかもしれない。
奇襲する事は難しいだろうが、わざわざ大きな的になる飛行艇で突っ込むのは愚策だ。
いくら魔法障壁が張れる飛行艇とはいえ、万はいるだろう兵士の集中砲火を喰らえばあっという間に墜落だ。
分かっていてそれをする馬鹿はいない。
「奴らは間違いなく兵を整えて待ち構えている筈です。逆を言えば、ある程度まとまって兵を配置している筈なので、纏めて仕留めていきましょう」
「ああ、そうだな。だが、兵士とはいえすべての兵士が好んで戦闘に参加しているわけじゃ無いだろう?なるべくは命を奪う事は避けたいな」
「魔族とは、弱肉強食の世界で成り立っているのです。そのような甘い考えでは後手に回りますぞ主よ」
カルマの言う事は尤もだ。
俺の考えなんて、戦争の無い平和な環境で育ちゲームでしか戦いを感じた事の無い人間の考えに過ぎないだろう。
前のように襲撃してきた当事者なら許せないと思えるが、大規模な戦闘になれば嫌でも参加させられている兵士が殆どだろう。
いくら魔族に育ったからと言って、それで死んでもいいと思っている者などいないだろう。
「そうだな、俺は甘いとは思うよ。でも、俺にはそんな無茶を可能にしてくれる仲間がいるだろう?カルマ、ニケ」
「主様はズルイです。そんな事を言われれば、やるしかないではないですか」
「むう…。これで無理というのは無能の証。いいでしょう、主の希望を我らが叶えてみせましょう」
自分でもズルいとは思うが、カルマやニケなら不可能とは思っていない。
だから、より苦労を掛ける事になるがやって貰う。
「ああ、期待しているよ。いや、出来ると確認しているさ。頼んだぞ!」
「「承知」」」
呪詛王の主都である『幻都ミステイン』には、俺とリン、カイト、アイナ、ミラ、ザイン、ダンで向かう。
そして主力となる魔獣達も付き従う。
カルマは単独で動く為誰も乗せず、ニケには俺が乗る。
リンも地上に降りるまでは一緒にニケに乗っているが、地上に降下したら黒に乗る予定だ。
ヘカティアとディアナもドラゴンに変化し、それぞれミラとアイナを乗せている。
カイトは相棒のグランに乗り、ダンにはルベルを、ザインにはピューイを貸している。
何気にかなり鍛え上げたので、グランもルベルも飛竜ながらAランク相当の実力まで上がっている。
そして、ピューイもまだ若いが成竜となりSランク相当まで強くなっている。
これは俺のお陰というより、最近一気に成長しているマイニャの訓練のお陰だ。
あの子の成長率は、現地の人間の中では群を抜いている。
やっぱ若い子の成長は早いものだ。
なお、セリオンとセツナは後発組だ。
俺らに注目を一気に集めた後に、地上から攻め込んでもらう。
仲間ペット達を使ったとしてもおよそ50kmはあるのを雪道の中移動するのは時間も掛かるし、ついた頃に疲弊してしまう。
なので、俺らが攻め込んだことを確認してからゴンゴラを使い、10km付近まで近づく予定だ。
ゴンドラを引っ張るのはセリオンとニクスだ。
『なぜ、高貴なる妾がそんな事をせねばならぬのじゃ!』
とか文句を言っていたが、『そんな程度の事も出来ない程弱いんだ?』と焚きつけたらあっさり『そのくらい朝飯前じゃー!』と快諾してくれた。
これが世に言うチョロ奴ってやつか。
今回の主な目的はヒョウ達雪人族の救出であるが、ロペや呪詛王を放置しておくことが出来なくなったので、彼等の討伐も含まれている。
首謀者であろうロペは当然であるが、その主である呪詛王カーズも同種と考える方が自然だろう。
そのまま放置していたら、何度も同じことをされかねない。
そして、その度に犠牲者が出てしまうのは俺としても許せるものではない。
ここでしっかりと息の根を止めるつもりだ。
「主よ、そろそろ街の監視塔から視認出来る距離になりました」
『こちらから仕掛けますか?』
不意打ちするなら、監視の兵士を先に倒すのも手ではあるけど、もう俺らが来ている事は把握している筈だ。
だとすれば、何も知らされていないであろう住民の為に警報で知らせておいてもらおう。
「攻撃を仕掛けてこないなら無視だ。街の中央に大きな広間がある。そこまで一気に突っ切るぞ!」
「「承知」」
まずは、俺とニケ、カルマで強襲する。
この街の中心には大きな広間があり、そこのど真ん中に檻にでもいれられているのかヒョウ達が集められている。
なぜわかるかって?
それは『覇王の神眼』の力だ。
これがあれば、ある程度の距離までならどこに誰がいるかが分かる。
『強襲だー!敵が襲ってきたぞ!!』
兵士が大声で警戒を呼び掛ける。
それと同時に、警鐘をガンガンと鳴らし始めた。
すると街中にいる住民たちが悲鳴を上げて、家の方へ逃げていく。
兵士たちがやけに大勢で歩いているせいなのか、思ったよりも混乱せずに逃げているみたいだ。
『きゃー!大型の魔獣よー!』
『敵襲だ!すぐに建物内に逃げ込むんだ!』
『あんだけいる兵士は何をしているんだ!』
所々で怒声もあがっているようだが、そんなのを悠長に聞いている場合ではない。
こちらもやる事があるから来ているのだ。
「よし、中央の広場にいる兵士たちから片付けよう。『覇王の号令』!」
「主のチカラは、我らを鼓舞しますね!さあ、これは主の慈悲だ受け取るがいい!〈
広場に降り立つと斬りかかってくる兵士を見向きもせず、グアッと口を開けるカルマ。
そこには虚無の光が広がり、すべてが吸い込まれていくようだ。
すると次の瞬間には、力なく崩れていく魔族の兵士たち。
「な、なんだと!?このチカラは呪詛王様やロペ様と同じチカラか!?」
一人だけ
となると、こいつがここの指揮官だろう。
そいつの前に、俺とニケも降り立った。
「さあ、お前が誰だか知らないけどロペを呼べよ。決着を付けさせてもらうぞ」
「貴様如き、ロペ様にご助力いただくまでもないわ!死ねぃっ!」
すぐさま俺に切りかかってくる指揮官らしき男。
しかし、カルマの事を忘れていないか?
「主に刃を向けるとは、お前は命を助けるに値しない。そのまま尽きろ!〈
カランカランと持っていた剣を落とし、そのままバタンと前に倒れる指揮官。
今度は
「俺を殺そうとしたんだ。悪く思うなよ?」
指揮官は倒れたが、油断は禁物だ。
いや、これからが本番になるからだ。
なぜなら…。
『クククク、やはり来ましたね。相変わらず、無茶苦茶なヤツらだが、ここに来たのが運の尽きですよ~?』
広場に何処からともなく、ロペの声が響き渡るのであった。
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