第292話 星より授かりし神器
ステラが見えない空間から、1対の剣を取り出した。
一つは月のように青白い色の剣。
もう一つは太陽のように真っ赤な剣。
『この月色の剣は、『月光剣マーニ』と言って空にある月をイメージして作ったんだ。そして、こっちの炎のように真っ赤な剣は『太陽剣ソル』と言って、空にある太陽をイメージして作ったんだ。『月光剣マーニ』は夜になると月の光を吸収して、君の魔力を回復させ、魔法の威力を上げてくれる。『太陽剣ソル』は朝になると太陽の光を吸収して、君の体力を回復させ、腕力を上げてくれるんだ。どうだ、凄いだろう?』
「これって、アーティファクトなのか?」
『ちょっと違うと思うなぁ。元は母様達が(遊びで)創った剣なのだけど、お互いを傷を付けれるような代物になってしまったから、
おいおい、なんてものを持っているんだ。
という事は、この剣は女神である二人にすら通じる剣であるという事だ。
ただ、それならば当然大魔王であるルキデウスを斬る事が出来るという事か?
『うんそだよ。あのルキデウスも、世の理から外れた存在ではあるけど、その双剣であれば存在自体に傷を負わせることが出来る。つまり、アイツもこれでなら殺す事が出来るだろうね』
「物騒な物言いだけど、やる事は一緒か。分かった、大事に使わせてもらうよ」
『そうだね。万が一、ルキデウスに奪われちゃうと大変な事になるから、君以外が持つと単なる石の剣になるように『呪い』を掛けておいたからね。それは、今から君専用の武器だよ』
『呪い』とか言われると、あまりいい気分じゃないな。
しかし、万が一の事が起きても大丈夫なようだな。
今までの双剣も綺麗だったし気に入ってはいたけど、そろそろ修理して使うのも限界がきていた。
あれも何気にアーティファクトだったから、壊れると代わりが無かったし、ここで世代交代としておこう。
「助かるよ。これから戦う相手は化け物級なのしかいないだろうし、これくらい無いと人間の俺には厳しくなるからな」
『もう君を人間と言うには微妙な所だけど、相手が君らにとって格上ばかりなのは否定しない。全部が終わって母様達を助け終わったらまたここに来てよ』
「なんだ、意外と寂しがりやなのか?」
『ははっ、きっと終わったら意味が分かるさ。ああ、そうだこれも君に渡しておくね。これが無いと、ここに棲む魔獣達とまた戦わないといけないからね。入り口でこれを使えば、この神殿へ直通のゲートを開いてくれるから、貰っておいてね』
そういうと、ステラは星の装飾が入った腕輪を渡してきた。
受け取って腕輪を付けようとする前に、左腕に自動で装着された。
『それがあれば、いつでもこの領域に辿り着くことが出来るよ。そうそう、神殿への入口の前にゲートを出しておいたからそこから帰ってね。君の仲間達もそこから出る事が出来るから。じゃあ、次に会うまで元気でね!ああ、そうだクロノス。君はボクにまだ用事があるのだろう?』
「なんだ、バレてたのかにゃ?ユートは先に帰っていいにゃ。オイラはここでお別れするんだにゃ」
「そうか?一緒に帰るもんだと思ってたが、この島から出れるのか?」
「そこは問題ないんだにゃ。自力で帰る方法なんていくらでもあるからにゃ。ここには一人で来れないけど、帰るのは一人でも可能だにゃ」
どうやら、クロノスはステラと二人っきりで話をしたいんだろうな。
まぁ、元々仲間と言うわけではないし、気にしてもしょうがない。
それに、またすぐに会えるだろうしな。
「分かったよ。じゃあ、また会おう」
「また近いうちに会うだろうにゃ。オイラが探している相手は、多分そのカルマと因縁があるヤツだろうからにゃ。その時までしっかり生きているんだにゃ?」
「はいはい、分かったよ。じゃあクロノス、またな!」
「あれクロさん、一緒に行かないんだ?そっかぁ、残念。ちょっと寂しいけど、また会おうね!」
「うん、また会おうにゃ!」
リンもクロにすっかり懐いたようだが、精神的にも大人になったのか我儘は言わなかった。
…元々我儘言う子でも無かったけど。
そのままステラとクロノスを置いて神殿から出てくる。
扉の前にあのゴーレムたちは…、いないな。
戻りの道は全く魔獣も魔物も居なかった。
どうやら、ステラが避けておいてくれたようだ。
神殿の入口では、カイト達がキャンプを張っている筈なので、何事も無いと思うが急ぐに越したことは無い。
俺らは急ぎ目に移動を開始した。
───
「行ったようだにゃ」
『うん、もうすぐでダンジョン側に戻るみたい。それで、話って何?』
「それは本体の鍵についてだにゃ。相棒が甦った後に───」
二人はそこで
───
神殿を出てから数分。
最大速度で戻ってきたユート達は、ダンジョンと神殿を分け隔てる扉の前にあるものを見つけた。
七色の光が中で渦を巻いており、その奥は何があるかは見えない。
そう、転送ゲートである。
「これが言っていたゲートか。思っていた以上にデカいな」
「主様、このゲートは各ダンジョンをクリアした際に出現するものと同一の性質のように感じます。なので、相互通行出来ると思いますよ」
ニケは精霊であるからか、そのゲートを見ただけで魔法で出したものと精霊が創り出したものと区別が出来るようだ。
という事は、各ダンジョンに設置されているゲートは精霊達が創り出したものだというのか。
「とりあえず帰り道は確保出来たし、カイト達を呼んでこようか」
「そうだなユート殿。まぁ、あの子達がジッとしているとは思いませんけど」
セツナがいつの間にか、いつもの苦労性の顔に戻っている。
どうやら嫌な予感を感じているようだな。
まぁ、悪い方向に当たらないといいけどね。
「どりゃあああなのですぅぅぅ!!」
「皆、前に出過ぎないで!回復が追いつかないわ!」
「オラオラオラァ!カイトばっかりにいい恰好させてやるかよ!」
「かああっ!皆を守るぞ!」
「アーヤ、二人で一緒にやりますよ!」
「レーナちゃん、二人でなら防げそうだね!」
「ユウマ、狙いが甘いぞ!そんなんじゃねーちゃんたちにトドメ取られる!」
「ダイキ、回復してー!」
「こっちも忙しいって!ショウタ、無茶しすぎ!」
「レーナだけに恰好付けさせたくないだろっ!」
「ふっふっふ、ここで妾の力を皆に見せてしんぜよう!」
うん、カオスだね。
なんだあれ。
キャンプの前には大量のドラゴンの亡骸が積み上げられていて、それを超高速で捌いているメイア。
解体したドラゴンを仕分けしつつ、ゲンブに積み入れているガント達。
そして、その横で勝手にドラゴン肉を焼いて食べているフィアとピューイ。
「はぁ、やっぱりね…」
セツナのため息がダンジョンに木霊するのだった。
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