第275話 テイマー流の寄り道
植物がびっしり生えた道を歩きながら、ユート達は真っ直ぐ進む。
『さあ、こっちだよ。怖くないよ。こちらにおいで…』
いつの間にか、沢山の動物や魔物がユートを囲んでいた。
「お前…何やってんの?」
「え?見てわからんか?俺はテイマーだって言ってるだろ?」
「いや、そうじゃねえよ…。なぜ今なんだ!?」
「ええ!?何を言っているんだラーザイア!目の前に珍しい種類の動物や魔獣がいたら、普通テイムするだろうっ!」
「ユートは、ちょっと変人なんだにゃ…」
二人の魔王に呆れられながらも(ユートは、納得いかなかったが)、ペットを増やしていくユート。
まわりのメンバー達は、見慣れているからか、もしくは諦めているのか、スルーを決め込んでいる。
そう、ユートは急いでいない限りはあちこちで動物や魔獣を捕まえていた。
大半は、町のギルドや厩舎に売り払ってしまうのだが、マイニャの訓練用に連れて帰ったりしていた。
ちなみに訓練済みの魔獣や動物は一定数の需要があるので、屋敷の厩舎が満杯にならないように適宜卸していた。
勿論、かなりのお金が貰えるので、俺もマイニャも結構儲かってたりする。
マイニャのお父さんも、生活が楽になりましたと喜んでいたっけ。
さて、捕まえたのは、スカイドルフィン、ツインニードルスコーピオン、ブラックジャガー、プラチナライガー、バイコーン、ドレッドホース等など、殆どがAランク魔獣だ。
様々な種類のペット達が、俺に纏わりついている状態になったわけで、傍から見たら襲われている冒険者にしか見えないだろうな。
こんな数を一気にテイム出来るのは、ひとえにランクが上がってスキルの上限値が上がったからだ。
テイムするのに制限があるわけじゃ無いが、テイムした後に命令に従えさせる数が限られている。
それはこの世界でも同じみたいだ。
ちなみに、絆を結んでいるペット達は基本自分の意思で行動しているので、その制限に囚われない。
ただし、通常絆を結ぶまでに世界時間で半年とか掛かるので、むやみに増やすことも出来ないのだ。
絆にするには、命令が効く状態で育てないといけないので、上限を超えるとすべてのペットの信頼度が上がらなくなるからだ。
なので普通のテイマーは、手元には主力となるペットしか連れて行かないのだが。
「ちなみにユートさんは、今何体まで命令出せるんですか?」
「おう、カイトいい質問だ。いま、俺の周りに今捕まえた動物は何匹いる?」
「ええと…。19匹ですね」
「正解!つまりそれが今の俺が一気に命令出せるMAXというわけだ。これ以上は増やせないから、一回野生に還すか、死ぬまで戦わせるかどちらかになるな」
「ユートさんがペットが死ぬまで黙っているなんて、想像つかないですけど」
「別に動物愛護者なわけじゃないぞ?それならドラゴン食べたりしないだろ?あくまで、育てて愛着湧いたやつを大事にしているだけさ。そうなったらペットというよりは、家族みたいなもんだからな」
「なるほど、材料採取のために野生の馬を倒したりしてましたけど、自分の馬から素材を取ろうとは思わないですもんね」
「まぁ、そういう事さ」
そんな雑談をしながら、歩く事30分。
ついにノームがいるという神殿の本殿に辿り着いた。
「パパ、このイルカさん楽しいね!」
「いやっほうっ!ユートさん、俺こいつ気に入ったんだけど!」
リンとシュウをスカイドルフィンに乗せてあげていたんだが、気に入ったみたいだ。
このスカイドルフィンは、見た目は普通のイルカに小さな羽が飾り程度についているだけで、その羽では飛べないだろうって感じなのだが、どうやら浮遊スキルを持っているようで、人を乗せても飛び続ける事が出来るみたいだ。
なので、空気をスイスイ泳ぎ続ける事が出来る。
こいつもランクAの魔獣だけあり、結構強い。
魔法も風と水を操り結構強いし、物理攻撃も体当たりや尾ヒレでのアタックなどしてくるのだ。
なので弱いテイマーだと、テイムに失敗して襲われるとひとたまりも無い。
改めて、『イルカって肉食なんだな』と実感するやつが結構いたもんだ。
ショウタ、ユウマ、ダイキの3人にはドレッドホースを貸し与えた。
しばらくセツナに鍛えられただけあり、心身共に成長したようだ。
凛々しい顔つきで荒ぶる馬に乗っている。
ドレッドホースは、馬なのに肉食でギザギザの歯がサメのようにびっしり生えている。
真っ白い鬣に、血の色を想像させる真っ赤な体、口から吐き出す蒸気のような煙は見る者を恐怖に陥れるという事らしい。
見た目だけならナイトメアよりも怖いが、ランクは同等である。
魔法は使わず、いくつかのブレスとスキルを所持しているだけで同格なのだから、その強さが分かるだろう。
ちゃんと調教すれば、優秀な軍馬にもなるのでこいつは連れて帰ろうかな。
こいつも弱らせてから捕まえるのが普通だけど、俺くらいスキルが上がっているとそのままテイム出来たりする。
もうすぐカンストするし、ガンガンスキルつかってあげないとね。
セツナには双角のバイコーンに乗せたり、レーナとアーヤはブラックジャガーとプラチナライガーに乗っている。
「うーん、ニケさんみたいにふわふわではないですけど、触り心地はいいですわね」
「うんうん、ちょっと硬めの毛皮だけど、さらさらしててずっと撫でたくなるね」
二人は騎士なので普段は馬に乗せているんだが、森は足場が悪いので今回はニケに乗っていた。
なので、森を自由に走れる騎乗動物を捕まえれたので乗り換えさせたのだった。
思いのほか気に入っていたので、これも連れて帰るか…。
バイコーンは、角が邪魔だという理由でセツナには気に入られなかった。
すぐにセリオンに乗り換えてしまった。
すべてが上位互換のカルマがいるせいで、彼は市場送りになりそうだな。
ツインニードルスコーピオンは、尾を二つもつサソリ型魔獣でその先端ある針をクロスボウのように射出する事が出来る。
意外と動きも早いので、護衛役にはうってつけだ。
いまも、俺らの最後尾をカサカサ…カサカサ…と音を立てながら護衛してくれている。
「うーん、ちょっと見た目がねぇ…」
「G程じゃないけど、ちょっと受け付けないのです・・・」
と女性に不評ではあったけど。
そんなわけで、現地調達した魔獣に乗って移動してきたわけだ。
ちなみに、可愛かった動物も捕まえたが、それらは俺の頭や肩に乗っかっていた。
リスとかモモンガとか燕とかの姿した動物だ。
それらは可愛いだけなので、割愛しておこう。
「さーて、この扉の奥にノームが居るはずだ」
ゴゴゴゴ…と重い音を立てて、開いた先には大精霊が待ち構えているのだった。
「ええいっ!遅いわ!いつまで待たせるんじゃ、まったく!!」
そこにいたのは、怒っている長い髭を蓄えた小さなお爺さんだった。
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