第274話 もう一人のクロノス
「はぁ!?ワケ分かんない事言ってるんじゃないぞ!それなら、今まで俺と戦ってたのは別人というわけか?」
「そーだにゃ、ラーザイア。ああ、でも君と戦ってたのは殆どボクだよ。クロノスの傍に浮かんでいた羽の生えた猫を見た事あるだろう?」
「あの、使い魔だとか言ってた猫か?…そう言えば、アイツが喋るとそんな感じの喋り方だった気が…。はぁっ!?マジかよ!?」
「そうだにゃ、アレがボクなんだにゃ。その使い魔であり、そしてもう一人のクロノス…ボクなんだにゃ。本気で戦う時は、ボクとクロノスの魂が入れ替わって戦うから、ラーザイアと戦ってた時はボクがこの体を操ってたんだにゃ」
段々ややこしくなってきたな。
そこら辺の話も気になるけど、まずはなんでここにいるかだよな。
「俺としてはどっちがどっちでもいいんだけど、クロノスは何をしにここに来たんだ?」
「せっかちな男はモテないんだにゃ。ユート、君の仲間に魂を封印から解いたヤツがいるだろう?」
魂…、封印…?ああ、カルマの事か。
…なるほど、もう一人の自分を解放するために、自力で封印を解除したカルマを訪ねてきたという感じか。
というか、どこまで知っているんだクロノスは。
「つまりは、その封印を解く力を使って本体の魂を解放するのを手伝って欲しいんだにゃ。それと…、ある人物から君の手助けをして欲しいと言われているんだにゃ。だから、君をここで待っていたんだにゃ」
やっと伝え終えた~と言わんばかりに、そこまで言うと大きく伸びをするクロノス。
見たまんま、猫のような人物だな。
しかし、どこまで信じていいやら判断が付かないな。
まあ、こういう時は先生の出番ですよね。
「どう思う?カルマ」
「そうですね、クロノスの言う事が正しいかどうかは、その水晶の棺を見れば分かるでしょう。それよりも、主様を手助けするように依頼した人物が誰かですね」
カルマはクロノスが嘘を言っていると言わなかった。
という事は、今のところは信じても良さそうだな。
それと、確かに依頼者が誰なのか。
いや、ここまで来れば分かるか。
「で、俺の手助けするように依頼したのは誰なんだ?」
「そこのラーザイアと一緒だにゃ。闇の女神ルーティアなんだにゃ」
なるほど、そこで繋がるのか。
かつてこの星を管理していた二人の女神のうちの一人、黒の女神。
大魔王ルキデウスの罠にハマり、お互いを滅ぼしかけてそれぞれ自らを半分に分け管理者とした。
そうして生まれたのが、光の女神と闇の女神だ。
俺が話をしていたのは、白の女神だな。
その闇の女神がこの二人の魔王を動かしている。
というか、大魔王の妻が闇の女神なのかよ…。
そうか、だから白の女神から魔族側の情報を貰えなかったのか?
ラーザイアに俺が訪れると伝えに来たのも、そしてここに来る俺の協力者になる様にしたのも闇の女神。
そして、大精霊からチカラを授かり『覇王』の力を覚醒するように促したのは白の女神だ。
「もしかして闇の女神は、大魔王ルキデウスに従ってはいない…?」
思わず呟いてまう。
しかし、それに反応するものがいた。
「主よ、その推測は概ね合っているかと」
「…カルマ、何故そう思うんだ?」
「それは、ヘラと対峙した時の事です」
それはカルマが先行し、ヘラと戦ったときの話だった。
「あの時、ヘラが言ったのです。我を追い出した理由や、本体を封印した時、今になって何故そうしたのかが合点がいかないと。そして、それは大魔王の意思に反する事なのに、自分がそうするのはおかしいとも」
その時に、口にしたのだという。
ルーティアの名を。
そして、闇の女神であれば記憶を書き換える程のチカラを有していても、おかしくは無いだろうとも。
大魔王ルキデウスは周到に様々な実験を行っていた。
その計画を自ら阻害する様な事はしない。
ならば、その目的は…。
「竜姫の双子が、わざわざ我のもとに本体が封印されている水晶を運んで来たのも、我にとって都合が良すぎると思いませんか?あれも、ルーティアが画策した事で有れば合点がいくのです」
確かに、アモンと遭遇しカルマの存在が判明したあとに、そんな事を態々する理由は無いかと思える。
どう考えても、誰かが意図してやっているように思えた。
アモン自ら持ってきて『さぁ、戦おうぜ』とかなら、あの戦闘狂ならありえそうだ。
だが、それを人に譲るなんてまずありえないだろうな。
となれば、ルーティアの目的は…。
もし、二人の女神が目的が一緒ならば、この二人について行くのがいいだろうな。
方法は違えども、あの女神達は同じところを目指している筈。
そう、大魔王の排除を。
まだ真相は分からないが、会う機会があれば確認したほうがいいな。
それによって、今後の活動の仕方が変わるかもしない。
もしかしたら、まだ隠し玉もあるかも知れないしな。
「ま、その認識で概ね合ってるんじゃないかにゃ?まずは、ノームのいる居室へ行こうにゃ」
「そうだな、そうしよう」
こうして、魔王クロノスを伴いノームがいる場所へ向かうのだった。
───
「星が動いた…。そう、あの子はうまくやっているのね。果たして、あの男の脅威となり得るかしらね…」
美しい黒髪を流し、呟いた女神は祈るように手を組むのだった。
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