第255話 雪人族の歓迎

「あ、パパ。どんどん寒くなっていくね~。はい、これ暖かい蜂蜜入り紅茶だよ」


「お、気が利くな」


 俺とサナティに蜂蜜入りの紅茶を渡して、リンは自分用にもいれてあったのをふうふう言いながら飲んでいる。

 俺も渡されたのを飲むと、体の芯から温まる感じがした。


 こんな快適に旅が出来るのは飛行艇のお陰だ。

 ガントには本当に感謝だな。


 そのあと、皆も集まって来たので食堂で昼を取りつつ、現地についてからの割り振りを話し合った。


 氷の神殿および、水の神殿へ向かうのは俺のチームにセツナのチームになる。


 俺のチームは、俺とガント、リン、シュウ、アリア、サナティとなっている。

 回復系スキルを持っているのが6人中4人というかなり堅固なパーティだ。

 それにカルマとニケも来る。

 いまやリンの相棒となったピューイと、シュウの相棒であるシロも一緒に来る。


 シロはホワイトファングという種族で、元々寒い所に住んでいる魔獣であるため、今回連れてきた中で一番嬉しそうだ。

 逆にフィアとニクスは、寒すぎるのか厩舎小屋でずっと丸まったまま動かないが…。


 フィアはともかく、ニクスよお前はフェニックス不死鳥なのにそれでいいのか?


 フィア含め、他のペット達は警護の方に回している。

 ヘカティアとディアナも今回はお留守番となっている。


「ええ~、私もいきたい~。ここでお留守番とかジッとしてたら凍えちゃうよ!」


「そうです、マスターの傍にいる事こそ私達の使命。決して、暇が嫌だからとかではないすよ?」


 と思いっきり二人に抗議されたけどね。

 そうはいっても、既に過剰戦力なのでどうせなら飛行艇を守って欲しい。


 セツナのチームは、セツナ、レーナ、アーヤ、ショウタ、ユウマ、ダイキとなっている。

 鬼教官であるセツナに扱かれていただけあり、すぐにでもランクアップクエストを受けれるくらいに成長しているのだ。


 全員がSランクになったら、このチームだけでドラゴン退治すら余裕になるだろう。

 これにセリオンがセツナの専属騎竜としてついて行く。


 カイト達には、飛空艇ウラノスの警護をしてもらう予定だ。


 流石にグラム達が来るとあっという間に殲滅されてしまう可能性があるので、離脱するまでの時間を稼ぐのが主な目的になる。


 カイトはランク以上の強さを発揮しているので、簡単にはやられないと思っている。

 何気にグランのランクも上がっていた時は、中々やるなと俺も思ったくらいだ。


 もちろん、マイニャの訓練師としての成果もあっての事だが。

 あの子は俺が思った以上に才能があるようだ。


 何気にランクが上がっているのにはびっくりしたが。

 俺の知らない間に、セツナやカイトがランクアップを手伝っていてBランクまで上がっていた。


 本人は戦闘には向いていないが、ペットを使っての戦闘なら危なげなくこなせるらしい。

 単なる厩舎の娘が随分と成長したもんだ。


 今度マイニャ専用の魔獣を見繕う予定だ。

 そうすれば、世話係だけでなく防衛する要員としても活躍してくれるだろう。


 今はとりあえずスキル上げの為に、捕まえまくった魔獣の中から気に入ったのを一匹譲ったのを手懐けている所だ。


 シルバースワロウという鳥型の魔獣で、銀色に光る羽毛を持っており、高速で飛ぶ事が出来るだけでなく、魔力を纏う事で体を金属並みに硬化出来る専用のスキルを保有している。

 生身の人間が突撃されれば、その体を貫かれてしまう恐ろしい魔鳥なのだが性格は比較的穏やかなので餌付けしやすいのも特徴だ。


 飛び道具代わりにはなるだろう。

 まぁ、見た目がツバメなので単純に見た目で選んだみたいけどね。


 ───


 出発から8時間ほどでやっとヒョウの村の近くに辿り着いた。

 普通に考えるとかなり高速で移動してきたことになるが、滅多に揺れることも無いので随分快適だったな。


 俺としては、ニケのもふもふな背中に乗って大空の風を感じながら移動する旅も大好きなのだけどね。

 大勢の移動には、この飛行艇に勝るものはないだろうな。


「さて、ここら辺にヒョウの村があるはずなんだが…」


 一先ずは、俺のチームだけで先行して村を探す。

 さすがにもう吹雪で辺りが見えないとかもなく、所々に土が見えている。


「あっ!おめーは!」


 かなり遠くから声が聞こえた。

 この声は…


「ユートー~~~~!」


 ダッシュで近づいて来て、そのまま俺に飛びついてきた。


「よう、ヒョウ。元気にしていたか?」


「ああ、俺もおっとう達も元気にしているだよ!」


 どうやら父親たちも無事に村に帰って来たんだな。

 前に来たのが随分昔に思える。


「近くに用事があったから、見に来たんだ」


「そうかそうか、おっ父もお前がまた来たら是非お礼がしたいと言ってただ。家に来てくれ!」


 そう言われて、ヒョウの案内で以前は人が全くいなかった集落へ案内された。


 そこは依然とうって変わって、雪女と雪男たちが多数住む本来の集落の形を取り戻していた。


「おお、人がいるなぁ」


「何当たり前の事をいってるだ。あの後、猛吹雪が止んだからって皆帰って来たんだ」


 こうして、ある意味では初めて雪人ゆきびと達の村を訪れるのだった。


「おお、あなた様方がこの村を救った英雄様ですね。お待ちしておりました、どうぞこちらへ」


 ヒョウとは似つかない白髪の大男が俺らを迎い入れるのだった。


「私は雪人族の長、ゴウセツといいます。ヒョウが教えてくれましたよ、あなた様がこの村を救ってくれたと」


 こうして、図らずも俺らは雪人ゆきびと族からの盛大な歓迎を受ける事になるのだった。

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