第177話 圧勝?

「さーて、みんな準備はいいな?馬は乗らないで戦うから俺が預かっておく。ボスの攻撃一撃で死ぬからな」


「「「はーい!」」」


 みんな元気よく返事する。

 やる気十分だな。


「カミオ達は見学な。いいか、上位ランクの戦いをよく見て勉強しろ。この先も冒険者で生きていくなら、学べるものはすべて学ぶんだ。いいな?」


「「「はい!よろしくお願いします!」」」 


 なんか学校の先生になった気分だな。

 まぁ、近頃の子供たちから比べると、かなり聞き分けはいい子たちだから同じではないだろうけど。


 ここでの陣形を決める。

 前衛は防御力の高いレーナとアーヤ。

 中衛に素早く直接攻撃が出来るショウタとリン。

 後衛にユウマとダイキだ。


 回復はダイキが担当し、状況をみてアーヤが下がって回復する。

 レーナは壁を崩さないように、常に盾で防御に徹するように指示を出した。


 セツナは司令塔として状況把握しつつ、戦闘の指示出しに専念させる。

 その間は回避だけさせて戦闘に参加しないよう付け加える。


 俺とニケはカミオ達を守りつつ、彼らと一緒に観戦することになっている。

 

「さあ、いくぞ!」


「「「おおー!!」」」


 ギギギギギギっと大扉が開く。

 中に入るとまだ誰もいない。


 奥中央に大きな魔法陣があり、俺らが中に入ると眩く光を放つ。


「くるぞ!」


 俺がそう声を掛けると一体の大きな魔獣、【地獄の番犬ケルベロス】が現れた。

 すかさず『生物学バイオロギー』の〈生物鑑定〉でステータスを確認した。

 

 地獄の番犬ケルベロス ランク:S 種族:魔獣 HP:2800 MP:1200


 なんだろう…。

 以前来た時は強いと思ったが、今見るとかなりの雑魚に見える。

 まぁ、前回も楽勝だったというのもあるかもしれないけどね。


 本来自分と同格の敵というのは、それだけで脅威だ。

 なぜなら自分も死ぬ可能性があるからだ。


 しかし最近戦ってきた相手は、どれも完全な格上。

 しかも、HPが大幅に増幅されていたので、ほぼそのままのHPだととても低く感じる。

 俺のランクも上がってしまったし、完全なる格下など雑魚にしか見えなくなってるな。


 うーん、ちょっと強い敵を相手にし過ぎて感覚がマヒしたんだろうか…。


 とりあえず、今のリン達なら圧勝だろう。

 『がんばれ~』と気の抜けた応援をして見ていた。


「さぁ、食らいなさい!〈シールドチャージ〉!」


 初手はレーナだ。

 盾によるチャージタックルでケルベロスをノックバックさせた。


 あの重量を吹き飛ばすなんて、なかなかSTR高そうだな。


「いきますよ~!えーい!〈グランドスラッシュ〉!」


 アーヤが大きな斧を縦に一閃。

 気の抜けた声に反して、ドガアアアアアアン!!と爆音を出しながらケルベロスに一撃を与える。


 それだけで、三つ首のうちの一つを落とした。


 グオオオオオオオンン!!

 たまらずケルベロスは咆哮を放つが、誰もスタンしなかった。

 さすがAランクだけのチーム、びくともしない。


「うっりゃーっ!!〈剣閃〉!」


 剣スキルを使い、剣気を飛ばしてケルベロスのもう一つの首を飛ばすショウタ。

 一撃で首を落とせるとか、この子もなかなか攻撃力があるようだな。


「行きます…。”紅鈴の舞こうりんのまい”!」


 リィィーーーーンという剣を振るう音が聞こえたかと思うと、その直後ケルベロスの体のあちこちからドバッと血が噴き出した。

 

 おお、剣技がより冴え渡ってきてるじゃないか!

 俺でも目で追うのがやっとなくらいだったよ。


 ものの数分で瀕死になったケルベロス。

 止めとばかりにユウマの弓矢とダイキの魔法で吹き飛ばされた。


 グアアアアァァン。

 と最後に哭いたかと思うと、ケルベロスはその場に倒れて


「「「やったー!」」」


 たった数分で倒せた事に喜ぶレーナ達。


 それを見てカミオ達は、自分たちと力量の差がありすぎて唖然としていた。


 だが俺とセツナ、そしてリンだけは厳しい表情のままソレを見ていた。


 …魔獣が灰になるだと?


 あの火力で一瞬に灰になるわけが無い。

 そもそも、燃えるような攻撃をしていないのだ。


「あら、リン?どうかしたの??」


「みんな。下がって!!」


 リンが叫んだのと同時にソレは起こった。


 ケルベロスだった灰が舞い上がり、上空に魔法陣が三つ現れたのだ。


『汝ラヲ真ナル我ト戦ウニ相応シイ挑戦者トシテ認メタ。サア、真ナル我ラニ勝利セヨ!』


 ドオオオオオオオオオン!!!

 ドオオオオオオオオオン!!!

 ドオオオオオオオオオン!!!

 と大音響を発して、さっきのケルベロスより巨大な魔獣が3体現れた。


 いや、あんなの初めて見るんだけど。

 出てきた魔獣達を〈生物鑑定〉でステータスを確認してみた。

 

 地獄の番犬ガルム ランク:S+ 種族:魔獣 HP:5800 MP:1200

 地獄の番犬オルトロス ランク:S+ 種族:魔獣 HP:7800 MP:2400

 魔獣王ケルベロス ランク:SS 種族:魔獣王 HP:22800 MP:4444


 うげっ、これはやばくね?


 …どうやら番犬ケルベロスさんは、本気を出しちゃったようです。

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