第176話 腹が減っては戦はできぬ?
「あのー、本当に俺らも行くんですか?」
「元々行くつもりだったんだろ?あいつらについて行けば大丈夫だ、ほらさっさと行ったいった!」
そう言ってカミオ達をグイグイ押していく。
彼らも腹を括ったようで、しばらくすると真剣な顔で周りをよく見つつ走ってついて行った。
俺はその後をついていき、なるべく危なくないようにオーラの矢で天井や壁に潜んでいる魔物達を掃討していった。
───1時間後。
「はぁはぁっ、流石に疲れたよおっちゃん!」
「セツナさん、一旦休憩入れていいですか?」
ショウタとダイキがスタミナ切れで音を上げる。
そこはある扉の前の広い部屋。
奇しくもボス部屋の前だ。
馬から降りて、地面でへばっている彼らに少し遅れて俺らもそこに辿り着いた。
カミオ達はずっと走っていたので、そこまでいくとダイブするかのように倒れ込んだ。
「はぁはぁ、ハード、過ぎる、と、思うんですよ!」
「ひー、ひー、1時間、走りっぱなしとか、訓練の、時でも、やらないですよっ!」
カミオ達が息も切れ切れで抗議してくるが、俺はため息で返事する。
ステータスもそこそこあるはずだが、精神的なスタミナがまだまだのようだな。
「お前たち…、そんなんじゃまたすぐ死ぬぞ?ったく、しようが無いな。
きらきらと星屑の様な光が降り注ぎ、疲労回復と気力回復効果を促す。
するとみるみると全員の顔色が良くなった。
「わぁ、すごいですね。これって、私達を蘇生した時にも使ってくれましたよね?」
「ああ、これは
カミオ達は自分たちの疲労が回復したことに驚きつつも、喜んでいた。
しかし、あまり
「おじ様、そのスキルは私も使えますけど、気楽に使えるようなMP消費じゃなかった気がしますわ」
「ああ、俺MP高いしさ、普段はそんなにMP消費しないから気にするな」
本当はMP回復のアーティファクトがあるからだが、そんなことは正直に言ったら良からぬ事を考える人間が出てくるので教えないでおく。
知っているリンもニコニコしているだけだった。
「ユート殿がいるだけで、どこにでも冒険に行けそうな気がしますね。…今度高ランクのダンジョンやスポットに連れってくれないか?」
「セツナの方が瞬間攻撃力は上だろ?まぁ、ステータスももっと上げたいし、時間出来たら連れてってやるよ」
「わ、私も!パパ!今度は連れて行って欲しい!」
「はいはい、分かったよ。リンも強くなってきたし、修行も兼ねて一緒に行こうか」
「わーいっ、やったー!」
ここで苦労しているカミオ達からすると想像も出来ないような世界へ、ピクニックでも連れて行ってもらうかのように喜ぶリンを見て、カミオ達は顔を引き攣らせていた。
「さすが英雄様方だなぁ。おらたちとは次元が違うだぁ」
「…うん、本当ね…」
冒険者たちは元気いっぱいだが、馬たちは普通の動物なので疲労が溜まったままだとすぐ死んでしまう。
そのため、餌を上げつつ休憩を取らせることにした。
「ユートさんって、動物には優しいよね…」
「んー?なんか言ったか?」
「なんでもないですっ!」
ユウマがぼそっと何か言ってたが、聞かないことにしておいた。
ま、テイマーだし動物は大切にしないとね。
動物は可愛いし。
馬には水と新鮮な野菜を与えて、俺らは持ってきた食料を簡単に調理して食べた。
今日の遅めの昼飯は、ミンチにしておいた肉とタマネギ(のような物)を塩で味付けしたハンバーグとパンだ。
塩はそこそこ高価だが、手に入らないわけでもないので普通に使っている。
砂糖ダイコンみたいなのが流通しているので、砂糖の方が安かったりする。
本当は胡椒が欲しいが、流通はしていないらしい。
唐辛子みたいなのはあるらしいが、あんまり売っていなかった。
他の大陸ならあるんだろうか?
今度探してみるか。
そんな事を考えつつ、焼いたハンバーグを真横に切ったパンの間に挟んで、簡易ハンバーガーの出来上がり。
トマトみたいな果物はあったから、ケチャップも欲しいなぁ。
でも酢と香辛料が必要になるのか。
今度ルガーに相談してみようか。
「わぁ、ハンバーガー!!私、久々に食べるわ~!」
「レーナでもハンバーガーなんて食べるんだね」
「ええ、たまにお母様と一緒にアメリカンレストランに行くのよ。そのときに食べるわ」
「私も久しぶり~。リンちゃんとレーナちゃんと一緒に食べるとか、学校のお昼を思い出すね!」
女子三人がワイワイ盛り上がっている中、男子たちは凄い勢いでかぶりついている。
ショウタに至っては涙を流している。
「うおー!素朴な味付けだけど、ハンバーガーとか超嬉しい!もう食べれないかと思ってた!」
「むぐむぐ、うんうん、美味しい!」
「僕、ハンバーグ自体が久々だよ…。グラムさんそういうの食べさせてくれないし…」
そんな異世界人の言動を理解できないカミオ達は、
「これ、お肉なんですか?ハンバーガー?そういう食べ物なんですか?」
「はむ、…!!美味しい!ミリンダ、これ美味しいよ!?」
「…うん、美味しい…」
「「うまい!」」
概ね好評の様だ。
冷蔵庫が無いせいか、あんまりミンチの肉は食べる習慣が無いのかな?
ああ、胡椒もないし、塩もそこそこ値段するものな。
まぁ、わざわざ手間かけてミンチにする事自体効率は良くないしなぁ。
軽くお腹を満たし、小一時間休憩を取ったので運動するとしましょうかね。
そう、ボス戦のお時間です!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます