第169話 お嬢様達の再会

 セツナと一緒に出てきたリンは、『どうしたの~?』といいつつも少年たちを見て、あーなるほどと言う顔をした。


「ああ、リン。こいつらが腹を空かせて、苛立ってちょこっと揉めただけだよ。そのままでも入れるところ連れて行こうか」


 そのまま違う店に連れて行こうとするが、一人の言葉によって中断される。


「えっ、りん?その顔…もしかして、あなたなの?」


「ん?そうだよ~?…え、まさか!?さん?それにそちらはさん?」


「え…、りんさん!?ご、ごきげんよう!」


「ご、ごきげんよう!?」


 

 その後、ミルバをギルドに送り届けて、装備付けたままでも食事出来るバルコニーのあるお店に5人を連れてきた。

  

 外の席でボリュームのあるサンドウィッチやら、ホットドックみたいなものを頬張りつつ話をする。


「まさか、鈴さんまでこちらにいらっしゃってたとは!」


「私も、まさかこっちで玲奈れいなさんにお会い出来るだなんて!でも、どうしてこちらに?それに彩音あやねさんまで」


「ふふふ、あなたがどうしてもこの世界を見たいって言ってお勉強を頑張ってらっしゃったから、私達もこっそりやってみましょうって。そうしたら、結構面白くて。それで、どうせならすっごく強くなって偶然を装ってお会いしましょうって思ってたのですけど、なかなかタイミングを合わすことが出来なくて…」


「そうですわ!あんな野蛮な大人とお仲間になった時は本当にどうなるかと思いましたが、ユートおじ様に引き取られて貴女にお会い出来るだなんて、これも運命ですわね」


 聞いてる方がむず痒くなるようなお嬢様の会話だが、リンにとっては自然なようだ。

 シュウが言ってた通り、リンは本当のお嬢様だったようだな。


「あ、そうでした。玲奈さん、彩音さん。こちらでは私はそのままリンとお呼びください。ここではあの学校のお嬢様ではないので」


「ふふふ、そうでしたわね。なんか、懐かしくてつい。では、私もこちらではレーナと呼んでください」


「あ、わたくしもアーヤとお呼びくださいね」


「じゃあ、レーナとアーヤ。こちらでも宜しくね!」


「ええ、リンよろしくね!」


「リンさ…リンですね。なんか、慣れないわ~。頑張ります、よろしくね!」


 そんな3人を見て男子たちはというと。


「やっぱあいつらお嬢様だったんだな。本当にいるんだなお嬢様って」

「だねー、たまに変な口調になると思ってたけど、まさか本物のお嬢だったとか。まじウケる!」

「ボクは、いいと思うけどなぁ。3人とも可愛いし」


 と3種3様の感想を述べていた。


 セツナはセツナで。


「育ちがいいわりに、発想が危ないのはどうしてなのか…」


 と変に悩みだしたのだった。


 あ、こいつ天性の苦労人だ。

 そして俺は、心の中で合掌するのであった。


「あ、お前たちの名前をちゃんと聞いてなかったな。俺はユート、テイマーメインでやっている。ユニオン【ウィンクルム】の盟主だ。こっちではリンの保護者でもあるから、変なことしたら…?」


 と、一応脅しも入れておく。


「パパ?あんまり怖がらしちゃダメだよ?えっと、わたしはリン。剣士メインで、今はドラゴンナイトもやってるよ。レーナとアーヤはあっちでお友達で同い年だからよろしくね!」


 おー、と男子のひとりがパチパチと拍手していた。

 リンは何処でも人当たりがいいので、みんなとすぐ仲良くなるな。


「では、私も。私はレーナ。剣と回復が出来るホーリーナイトよ。よろしくね!」


 焦げ茶色のセミロングに頭に大きな赤いリボンを付けたレーナは、お嬢様風にスカート部分をつまんで挨拶をした。


「えっと、私はアーヤです。職業は同じくホーリーナイト。斧で戦っています!よろしくお願いします!」


 三つ編みにした黒髪を揺らしながら、アーヤも挨拶した。


「俺は、ショウタ!剣メインの剣士だよ。この子達より2つ上の中学1年だ。よろしくなおっちゃん!」


「オレはユウマ。職業はレンジャー。弓と短剣で戦えるぜ?中学2年だよー」


「あ、ボクは、ダイキ。職業はウィザードだよ。同じく中学2年生です。よろしくお願いいたしますねユートさん、リンちゃん」


 元気な短髪頭がショウタ、長い髪を一本に纏めてるのがユウマ、大人しめの性格なのがダイキだな。

 とりあえず覚えれそうだ。


「そういや、おっちゃんはランクアップしに王都に行ってたんだろ?何ランクになったんだ?」


「ん?SSランクだよ」


「「「え!?」」」


 なぜか5人全員顔を見合わせる。

 というか、知らなかったんだな。


「という事は、前までSランクのテイマー?で、ユート…。あれ、もしかして奇人テイマーユート!?」


「こらお前ら、なぜをそれを知っている!?」


 こんな子供たちにまで、俺の恥ずかしいあだ名を知られているとは思わなかった…。


 その後は子供たちによる、今までの冒険談やグラムへの愚痴合戦などで日が暮れるまで盛り上がったのだった。

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