第151話 意外な真相

「さて、まずは氷の神殿の【永久氷晶】の強奪から聞こうか」


 焚き火の前にチームの中核メンバーである、グラム、フウマ、セツナを座らせて俺もニケとカルマを後に付けて会談に望む。


「その前に、言わせてくれ。お前とお前のペット達は何なんだ?!全部ボス級じゃねーかっ!!」


 どうやらグラムは、自分だけじゃなく他のメンバーまで手も足も出ない状態だと聞いて、納得いかなかったようだ。


「なんだって言われてもなぁ。まぁ、今連れてきているのは確かに全部エリアボスだった子達で、仲間になってからも成長したり進化してるって感じかなぁ」


 細かい経緯まで話したら、一晩は掛かるので簡単にそう言った。


「くっそ、奇人テイマーを見くびってたな。そんな事を平気やってのけるとか…」


「あ、因みにランクはSランクだけど、王国に帰って儀式受ければSSだよ?」


「……。もう、お前を相手にしていると驚くのが馬鹿みたいになってきたよ。テイマーでSSランクって…。で、クエスト達成したのかよ?…マジか」


 色々と考え込み始めたので、手をひらひらとさせながら説明を続けろと催促した。

 因みに他の二人は、今の会話だけで目が点になっていた。


「ちっ、まあいい。まずアレの経緯からだよな。ちょっとその前に俺らの事を話さないと分からんと思うから、先にそっちから話すぜ?」


 ああそれでも構わないと頷き、話を促す。


「OK。俺らはこっちに飛ばされた時、全員が一緒の場所に着いたんだが、そこは王国の王城にある大聖堂の祭壇でよ。大層な場所に飛ばされたせいで、あそこで俺のクランメンバーの十人は召喚されたんだと思ったん」


「まぁ、確かにそんな大層な所で召喚されれば、普通はそこに召喚されたと思うわな」


「ああ、だがな。暫くすると召喚したのがあの王国の人間ではなく、奴らが信奉する光の女神だと知ったんだ」


「へぇ、そうなのか」


 そう相槌をしつつカルマを見ると、『でしょうね』と小声で答えた。


「それで、やつらは俺らを新しい勇者を神がお呼びになったのですとか言い始めてな。最初は良かったんだ、かなり豪遊させてもらったし。いい女も当てがってくれたしな」


 そんな事を言いながら、あの時の生活は最高だったぜと付け加えてきた。

 いや、聞きたいのはそんな事じゃないし。


「だが、1週間もしないうちに聖女だとかいう姫様によ、あまりに品性がないとかイチャモン付けてきやがってよ。それでも一応いい思いもさせてもらったから一回目は我慢したんだ。だけどよ、ある日ちょっと酒が進み過ぎてな、ある女に手を出しちまったんだ。そしたら、それが大貴族の娘だったらしくてな。それが問題になって、俺だけライセンスはく奪だって事になったんだ」


 なんとも豪快な野郎だが、いくらなんでもハッチャけ過ぎだろう!


 …だが変だな。

 いくらなんでも、そんな粗暴な奴に大事な娘を近づけさせるのだろうか?

 というか大貴族の娘がなんで、こんな粗野なヤツが行くようなところに居たんだ?


「おかしいとは思ったんだが、別にライセンス無くてもクエスト受けれないだけだし、いくらでも稼ぎようはあるかって思って街に降りて遊んでいたんだが、そこで例の大貴族の使者が来てな。『私の専属の冒険者にならないか?』だとよ。…なんてことはない、俺という戦力を手に入れるために俺を嵌めやがったのさ」


「そもそも、グラムの素行が悪くなければ目を付けられないで済んだのよ!」


 いつの間にか正気に戻ったセツナが、呆れ気味に諫言を言う。

 巻き込まれた挙句にこんなところまで連れてこられているのだ、文句も言いたくなるのだろう。


「はっはっは、違いねぇな。まぁ、そんな事があってあそこの連中は信用ならないと断ったんだが、そのあと街にお触れが出てな。俺がその娘に暴行を働いた事をでっち上げられて、しかも王国内での取引を禁ずると来たもんだ。

 いやー、流石の俺も焦ったぜ?それじゃ生活できないからな。『協力した者も同罪と見做す』とかいろいろ書いてあってよ。まぁ、それでも俺だけしか書いてなかったから一人で出ていこうとしたんだが、こいつらも付いていくって聞かなくてよ。ついでに街のが数名ついてきて、今に至る感じさ」


 なるほど、美人局にあったあげくに相手の言う事聞かなかったから権力で犯罪者扱いになったわけだ。


 ん?思ったよりも悪い奴というわけでもないのか?

 素行は全く良くないけども。


「それで、こっからが本題だな。俺が出ていくときに、協力してくれてた奴がいてな。そいつが言うには、大精霊の宿る物を素材にすれば伝説の武器になるって話でよ。最初近くの嵐の神殿に行ったんだが、そこはいくら探しても大精霊の祭壇が見つけれなかったから諦めて、他の情報集めてたらあの氷の神殿がこの大陸にあるってわかったのさ」


「なるほど、伝説の武器を手に入れてどうするつもりだったんだ?」


「ああ、そういう目立つ物があれば人も金も集めやすいと思ってな。魔族領であるこっち側で拠点となる村とか作って、ゆくゆくは国でも興そうかと考えてたのさ。ほら、ゲームだとよくあるだろ?伝説の武器もったやつが国起こすやつ」


「ああー、あるなそういうやつ。有名なのだとアーサー王の伝説を元にしたやつとかだな。しかし、あんな吹雪巻き起こしてなんとも思わなかったのか?」


 いくらこいつらでも、あの吹雪の中でまともな生活は出来まい。

 しかも、そのあともあそこで張ってたわけだし、何か他にも狙いがあったように思える。


「そりゃあ、正直そんなことになるとは思わなかったんだよ。しかも、俺らが付いた頃には大精霊居なかったしな。あったのは、砕かれた残骸だけさ。…もちろん、全部拾ったけどな。だから、暫く監視して様子を見てたんだ。ついでに、カモになりそうな冒険者でも来たら御の字くらいでな」


 そして、俺らがカモに見えたと…。

 若干イラッとする来た。

 

 しかし、そうなると…。


「残骸の近くに、怨霊みたいな大精霊いなかったか?」


「いや?さっきも言ったがそれらしきヤツはいなかったぞ?まぁ、一回出てからは中には入らなかったから、それ以降の様子は分からないけどな」


 ん〜、おかしいな。

 俺らが行った時にはすでに怨霊化してたし、冒険者に襲われたと言っていた。

 しかも、あの怨念は何かしらの呪術で植え付けられたものの様だし。


 ん、そういえばここにいるのは純戦士とニンジャと槍騎士だけだな。


「なぁ。お前の仲間に高位の『降霊師ネクロマンシー』はいるか?」


「…?いや、いないなぁ。フウマも一応習得しているが、せいぜい100くらいか?」


「いえ、自分は80ですね。100いってるのは、Aランクのメンバーに一人いるくらいですかねぇ」


 自分も持っているだけに分かるが、さすがに100で覚えれるスキルにあんな事出来るのは無い。

 だとすると、別のスキルである可能性が高いか…。


 もしや…。


「なぁ、呪術師シャーマンはいるか?」

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