第150話 決着の後に
カルマ達の方は、圧勝だった。
まず、恐怖耐性ないものはカルマのスキルでほぼ戦意損失していたし、そのあとは重力魔法で動きを止めてしまったのでAランク以下のメンバーは瞬殺だった。(殺してはいない)
ディアナとヘカティはSランク冒険者5人を相手に戦ったが、ユートの補助と竜玉の加護を受けた状態でドラゴンロードの姿になった二人を止めることは全くできず、最後はお手玉するかの如く遊ばれている状態だった。
『ぶー、つまんない!もっと頑張ってよ~!』
『そうですよ、いつまで寝ているのですか?さぁ立ち上がって向かってきなさい!』
既に心を折られている冒険者達には、恐怖の一言としか言いようが無かったという。
セリオンは、槍の女戦士と熱戦を繰り広げていた。
女戦士は熟練度がほぼ最高値になっているようで、スキルひとつでもかなりの威力がある。
掠ってだけでかなりのHPを持っていかれるので、ヒット&アウェイを繰り返しながらお互いに感嘆しあう。
セリオンは、ちょっと前までの自分なら瞬殺されていただろうと感じていた。
今は様々な恩恵を受けている状態でほぼ同格なのだ。
一つでも足りなければ、倒せされるどころが既に殺されていたに違いない。
そういう意味でも、ユートの仲間に入れてもらえたことは幸運だったといわざるを得ないだろう。
そう思っていた。
気が付くとお互いに満身創痍。
そして、周りにはカルマ達仲間が二人の戦いを見守っていた。
特にカルマの目線が厳しいのを感じて嫌な汗を流す。
───ヤバイ、早く決着付けないとこの後で何をされるか分かったものではない。
そう思ったセリオンは、最後の一撃とすべく、新しく覚醒したスキルを発動するのだった。
『ここで決めさせて貰うぞ、〈
対象が凍るというよりは、生命活動を強制停止するこのスキルは、
弱者が食らえば即座に死が待つこのスキルを女戦士が自身のスキルで弾き返そうとしていた。
───
槍の女戦士こと”セツナ”は、LBO時代からグラムと一緒にプレイしていた。
元々は別ゲームで知り合い、その腕前を買われてLBOでも同じクランに誘われた一人だ。
セツナは魔法や弓のような遠くから攻撃するのは性に合わないので、近接武器を選ぼうとしていたが中距離でも攻撃可能な槍を勧められて槍を武器に選んだ。
馬に乗っても地上の敵に攻撃を当てやすいというのも魅力だったので、特に迷いはなかった。
自分が思ったよりも適性があったようで、すぐに上達しグラムとほぼ同じペースでスキルもランクもあげていた。
この世界に放り込まれた時は流石に混乱したが、『せっかくゲームがリアルになったんだ。楽しまなければ損だろ?』と豪快に笑うグラムを見て深く考えるのは止めていた。
ところが、自分たちの自由勝手さに王国側が手を焼いてしまい、ライセンスはく奪および施設利用禁止とされてしまう事になり、さすがにグラムの考えに疑問を持つようになっていた。
だが、今更グラムから離れたところで生きる術が見つからないセツナは、彼を支えてなんとか生きていく術を模索するしかないだろうとサポートし続けてきたのだ。
その結果、今自分は襲撃した相手に反撃を受けてかなり危ない状態になってしまった。
正直ここで命が終わってしまうのは心底恐ろしい。
まだ生きたい。
そう強く願い、目の前のドラゴンに自分の奥義をぶつけているのに…。
「なんで!?なんで勝てないの!?私これ以上強くなんて成れないのよっ!?」
ドラゴンが人間の言葉が分かるかどうかなんて知らない。
でも、叫ばずには居られなかった。
自分は既に最高ランクSSで、しかも槍スキルは最高値まで上げているのだ。
それなのに良くて相打ち。
このままいけば自分の負けであることが分かってしまった。
そして今、最後の審判が下りる。
ああ、もうこれで終わりね…。
目の前のドラゴン以外にも謎の男とドラゴンが2匹、仲間たちをすべて屠ってこちらを見てる。
もしそいつを倒せても自分たちがいるぞ、と言うかの様に。
そして目の前のドラゴンがスキルを発動した。
『〈
そこで私の意識は途絶えたのだった。
───1時間後
「さて、全員治療と拘束終わったかな?」
「はい、危ない者もいましたが、なんとか一命を取り留めました」
「そうか、ディアナとヘカティカの方はどうだ?」
「うん、全員拘束したよー」
「はい、私も終わりました」
今は倒したグラム達を一か所に集めて拘束している。
グラムとニンジャは結構やばい状態までいったので、最悪は『
拘束した者たちは、余計な抵抗をしないようにカルマがMPを吸い取ってある。
そのお陰でカルマがなんか艶々しているが、もうそこは気にしたら負けだ。
「う…く…。?!そうか、俺は負けたのか」
「ああ、そうだ。というか、グラムのメンバーもれなく全員な」
「マジか…。誰もお前のペット倒せなかったのか?」
「そういうことになるな。なんなら、そこのニンジャは俺に負けてるしな」
イドラから授かったチカラが無かったら正直危なかった。
遭遇したのが今のタイミングで良かったと、正直心を撫で降ろしていた。
「な…、結局フウマも負けたのか。お前、本当にテイマーか?あいつに対人戦で勝ったテイマーなんて見たことないんだが…というか、普通はいい線にもいかないのによ」
「いいや、テイマーだから勝ったようなもんだよ。能力あがる色々なスキルがあるのさ」
「そんな裏技みたいなの…。実際に負けたんだ信じるしかないか。それで、俺らをどうするんだ?」
負けて死にかけた割にはあっけらかんとして聞いてくるグラム。
カルマが少しイラっとしていたが、手で制して話を続ける。
「そうだな、色々聞きたいんだ。王国を出てからの事と、この世界について知っていることをね」
「なんだ、そんなことで生かしているのか?分かった、すべて喋るよ。だけど、ひとつお願いを聞いてくれないか?」
「なんだ?」
「ここだと寒すぎる、どこか暖かいところで頼みたい」
我儘なやつだなぁ。
でも、確かにここだと寒すぎるか。
しょうがない、ヒョウの村まで連れていくか。
「先に言っておくけど、命を奪うのならいつでも出来るからな。変なことを考えるなよ?」
「分かってるよ。正直楽勝だと思ってたのに結果がこのざまだ。死にたいわけじゃないからな、素直についていくさ」
そんなわけで、拘束したままヘカティアとディアナの背中に乗せてヒョウの村までやってきた。
「あ、ユート!来てくれたのかい…って、後ろのドラゴンとか人間たちはなんだい!?」
「ああ、ちょっと訳あって連れてきたんだ。あ、そうだ。もう、寒波は引いただろ?」
「うん、さっき吹雪が止んだんだ。ユートがやってくれたのかい?」
「ああ、そうさ。もう大丈夫だぞ?お前の親もそのうち戻ってくるだろうさ」
「ああ、本当にありがとう!」
「とりあえず、ちょっとあの人間たちを暖めておきたいから、場所借りるぞ?」
「うん、わかったよ。まだ誰も帰ってきていないから好きなところ使っていいよ」
「ありがとうな。じゃあ、あそこの空き地借りるな」
そう言って、そこにテントを張り焚火を設置し始めた。
今は全員目を覚ましているので、ディアナとヘカティアから降ろしてからテントに入らせる。
そのまま二人に監視役を命じて、俺はグラムとフウマ、そしてセツナというらしい女戦士を焚火の前に座らせて話をすることにした。
俺の後ろには護衛としてニケとカルマが人型の状態で立っている。
「さて、まずは氷の神殿の【永久氷晶】の強奪から聞こうか」
こうしてヒョウの村の一角で、俺とグラム達の会談が始まるのだった。
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