第129話 氷山の戦い
ユート達は、氷山でフロストドラゴン達に囲まれていた。
「こうなったら、格の違いを見せてみろ!」
「「承知!」」
ニケとカルマは、既に精霊の力を解放済みだ。
ニケの力により辺りの風がピタリと止んだ。
さっきまで吹雪いていたのが嘘みたいだ。
「これで見やすくなったでしょう?カルマ…始めましょうか」
「言われなくても、既にやっている」
いきなり風が止んだことで戸惑っていたレッサーフロストドラゴンが、数体その場に倒れて絶命した。
『!? な、なんだ今のは…貴様たちは何者なのだ?まさか魔王なのか?!』
何をされたか分からない恐怖に、フロストドラゴンロードが狼狽えている。
その正体は、カルマの新たなスキルである〈闇の誘惑〉だ。
自分より低ランクの敵に対し、抵抗できなければ死という凶悪なスキルで、それに耐えきれなかった竜達は息絶えたようだ。
しかし、流石はこの山の主だ。
動揺からすぐに立ち直り、攻撃態勢に入る。
『ヤツらに好きにさせるな!皆の者、一斉攻撃!我に合わせろ!〈アイシクルブラスター〉!』
氷竜たちが一斉にビームの様な極冷のブレスを吐き出した。
ブレスには氷の飛礫も混ざっており、鋭利な形をしたそれが小さな槍の様に突き刺さろうと迫ってくる。
狙う先はニケだ。
「流石は氷の精霊の眷属。かなりの冷気ですね。ですが、この程度の圧力では私には届きませんよ?」
『そんな強がり、いつまで続けれるものかよ!』
ニケの言葉を強がりだと決めつけて、攻撃を続けているフロストドラゴン達。
攻撃を受けているニケを見てみると、彼女の周りには白い膜が出来上がっていた。
どうやら風の力で防壁を作りだし、完全に防いでいるようだ。
防壁の外だけ凍るという不思議な光景が作り出されていた。
氷の飛礫も、その壁に阻まれて砕け散っている。
「お遊びはここまでです。さぁ風よ…散れ!」
そういった瞬間に膜が弾けて、すべての冷気が跳ね返された。
グオオオオオンと悲鳴のような鳴声をあげて、フロストドラゴン達が吹き飛んだ。
続けてニケは攻撃をする。
その女神の様な姿から想像できない、神の怒りの如く凄まじい雷が繰り出される。
「そのまま死に絶えなさい。打ち砕け!〈大召雷〉!!」
撃ち出された巨大な雷がフロストドラゴンロードを撃ち抜く。
たった一撃でHPが一気に失われ、耐えきれなくなり雪山に墜落した。
『ガハァッ、ば、馬鹿な。我がたった一撃で地に落ちるとは』
「耐えたのね、偉いわ。さて、これならどうかしら?…切り裂け〈真空烈破〉!!」
フロストドラゴンロードの周りに真空の刃で作られた竜巻が発生した。
まだ、動けないフロストドラゴンロードを飲み込んで滅多に切り裂いていく。
『ガアアアアッ!ま、まだだ、このまま終わらぬ…喰らえっ〈
「あら、風属性には強いのね。…ふう、こんな氷の飛礫では私に傷ひとつ付けれないわよ?」
風スキルがあまり効かなったことに残念がっている間に反撃を受けてしまったが、余りにも弱い攻撃にゲンナリするニケ。
実際は、高位氷魔法のブリザードの倍くらいの威力があるのだが、相手が今のニケでは魔力障壁すら破れない。
互いの実力の差は歴然だった。
『我が最大の攻撃が、全く効かないだとっ!?』
今まで天敵と言えるほどの敵に、会ったことがないフロストドラゴン達は驕り高ぶっていたが、相手との余りの実力差に一族が殲滅される窮地に立たされていた。
再び攻撃をしようとするニケ。
そこで彼等のリーダーたる、フロストドラゴンロードが取った行動は…。
『くっ…ま、待て!待ってくれないかっ。…我の命は差し出していい。だが、残りの者は見逃してくれないか!?』
そう言っている間にも、カルマが一体、また一体となぎ倒していく。
辛うじて息をしているので、まだ生きてはいるようだ。
「ふん、貴様の命など興味がない。そんなものを貰っても…、ふむ、いい考えを思いついた。主よ」
「お、おう?なんだカルマ」
「この者を下僕に加えてはどうですか?」
「フロストドラゴンロードを?言う事聞くかなこいつ」
「ですから、下僕です。我等は魂の契約により従属しておりますが、隷属させるスキルを使えば主の命令は絶対になる」
「ああ、そっちか…」
テイマーがよく使う『
<
<
その代わりに、命令には絶対逆らえない呪いみたいなのがあるので、命令違反をしやすい相手には適している。
俺が仲良くしたいヤツには絶対に使わないが…。
「隷属させると言っても、ここに帰ってくるまででいいのです。それまで、【永久氷晶】を守らせましょう」
「ああ、なるほど。そういう事か!それはいいかもしれないな」
【永久氷晶】だが、思った以上にデカかった。
なんせ俺の背よりもデカイのだ。
ストレージに入いらなくも無いが、重量の関係で他に何も入れれなくなりそうだった。
かと言って、割ってしまっては元も子もない。
そのため、移動させなくて良くなるなら、そのほうが都合が良いかもしれないな。
「よし、それでいこう。どうだ、フロストドラゴンの長よ。俺が帰ってくるまでソレを守り帰ってきたら渡す。それだけで、お前たちの命を奪う事はしない」
「断っても良いのですよ?その場合は、この場で全ての命を奪いますが」
ニケさん、それは脅迫っていうんだよ?
笑顔でそれ言うの怖いから…、そういうのはカルマだけにして欲しい。
「さあ、どうする?俺に従うか、一族もろとも心中するか。二つに一つだ」
『くっ…、もはや道は無い。お前に従おう。さあ、下僕の証を焼き付けるがいい』
フロストドラゴンロードは、そう言うと俺の前に来て頭を垂れた。
「<
そう言って、フロストドラゴンロードに隷属の紋章を刻み込んだ。
特に抵抗せずに、フロストロードは俺の隷属を受け入れたのだった。
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