第130話 番犬ならぬ番竜
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フロストドラゴンロードは俺のスキルによって、隷属を受け入れた。
これで隷属を解除するまでは、一切の命令違反が出来なくなったのである。
「さてと、そういえばお前に名前は無いのか?」
『我らには個々の名前など無い。種族を表すフロストドラゴンが私の名であり、一族の名でもあるのだ』
なんだ、てっきり言わないだけかと思ったら本当に無いとは。
でも、それだと呼ぶときに不便だし、俺が名前を付けようか。
「じゃあ、不便だから名前を付けてやろう。そうだなー…決めた。セリオンにしよう。こないだスペインに行ったときに教えてもらったんだ。つららの意味らしいよ」
『ふ、変わったニンゲンだな。下僕の我にわざわざ名前を付けるとは。では、我はこれよりセリオンと名乗ろう。ところで主の名はなんと言う?』
「俺はユートだよ。よろしくなセリオン」
『ユートか。承知した。我の主であるユートに代わり、この【永久氷晶】を保護しよう。皆の者、ユート達が帰ってくるまで、【永久氷晶】を守るのだ』
カルマとニケにボコボコにされて、飛んでいるドラゴンは一体もいない状態だったが、生きているドラゴンはクアアアアア!と返事をしたようだった。
ちなみに、ふたりの攻撃に耐えきれずに死んでしまったフロストドラゴンは、すべてストレージに回収した。
竜肉の一部はニケとカルマ、そして双子の竜姫のヘカティアとディアナに渡した。
ニケとカルマもわざわざ魔獣の姿に戻り、その肉を食べていた。
その方が魔力に変換しやすいんだってさ。
魔物の世界は弱肉強食だ。
力で負けたのであれば受け入れるしかない。
そのため、怯えるものがいても憎しみを向けてくるものはいなかった。
無残に負け、悔しがっているものは多数いたけど。
残った肉はシロの育成の為と自分たちの食料の為に取っておくことにした。
移動中の食料は、しばらくこれになりそうだな。
よし、これで帰ってくるまではなんとかなるだろう。
氷の神殿を突破したやつらが、ここにやってこなけば問題はないはずだ。
「大体1週間くらいで帰ってくる。それまでの守護は頼むぞ?」
『承知した。なくなる筈だった命だ。身命を掛けて守って見せよう』
「無事終わったら解放してやるから、頑張るんだぞ」
『その言葉を信じよう』
流石にボロボロの状態では守護もままならないので、フロストドラゴン達を治療してから下山した。
念のため、遠くから光が感知されないようにカルマの闇魔法で【永久氷晶】を隠蔽しておいた。
こうすれば、かなり近くまで来ないと、気が付かないだろう。
まだ吹雪は続いているし、最初からここ狙ってこないと発見することが出来ない筈だ。
下山したあとは一息ついてから、すぐに東側に飛び発った。
へカティアと、ディアナは人型に戻ってニケに乗っている。
「それにしても、ニケとカルマのチカラは凄かったねディアナ」
「ええ、あれでもまだ余力を残してたみたいですし、もう今の私達では勝てる見込みは無さそうね。もう何かする気なんてないですけどね。それに…いまさら、あの時に戻りたくないわ。ね、へカティア」
「うんうん、そうだね。マスターと居る方が断然楽しいからね!ディアナ!」
隣に俺が居るのを忘れてるのか、そんな事を話をしていた二人。
取り敢えず、今の生活が気に入っているようで良かった。
正直そこまで信頼あるとは思ってもいないけど、今の生活が気に入ってくれているのは見ていて分かっているし、カルマも目を光らせているので心配はしていない。
願わくば、このままずっと居てくれると良いのだけど。
そのまま飛んでいくと、大きな海が見えた。
その遙か先に、緑色の大地が見える。
「うーん、結構先にあるなぁ。そのまま行けそうか?」
『ええ問題ありません、主様。このまま行きましょう』
「我も平気です、主よ」
「よーし、このまま行こう。海を渡った先には亜人族の村がある筈だ」
本当にあるかは行ってみないと分からないけど、LBOではそこに亜人族の村があった。
村なのに、外から来る人が多く意外と活気のある村だったはず。
ニケとカルマはまだまだ元気な様なので、まっすぐ東大陸に向かう事にした。
次の目的地はその亜人族が集まる村だ。
そこで一泊し、【幻夢の森】の情報を集めようと思っている。
クエストの基本は情報収集だからね。
ただ俺は人間だから、バレたら問題が起こりそうだな。
ヒョウ達とは違って、魔王軍の支配下にある村だから軍属とかいたら戦いを吹っ掛けられそうだ。
負ける気はないけど、クエストに集中出来なくなるのはとても困る。
バレない様にして、ゆっくりと休んでから捜索をしたい。
ついでに美味しいものに、あり付ければいいんだけどね~。
やっぱ、違う土地や国に来たらその場所の名産品を食べたいじゃない?
特に東大陸は肥沃な土地が多いので、作物にも期待が出来るし。
まだこっちの世界に来てから食べていないものが沢山あるはず!
そんな期待を込めて東大陸に向かっていくのだった。
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