第122話 ノーセリアに出立
───翌朝
しっかり寝て休息を取った俺は、朝早くから出発の準備をしていた。
装備はガントが昨夜中に整備しておいてくれたみたいで、新品同様になっていた。
なんかおまけも作っといたと手渡され、”ああ、なるほど”となった。
朝食を取りに食堂に来ると朝早くにも関らず、全員がそこにいた。
みんな今日は早いんだなと言うと、ユニオンの盟主が旅立つのに寝坊するわけにはいかないじゃないですかと、ライが皆の気持ちを代弁して言ってくれた。
「そうか…。皆ありがとうな。留守中の指示はゼフに渡しておいたから、後で見てくれ」
そう言って、皆で一緒に朝食を取った後すぐにニケと共に出発した。
「パパいってらっしゃ~い!」
「ユートさん、ご武運を!」
リンとサナティがそう言って見送りしてくれた。
他のメンバーもお気をつけてとだけ言って、総出で見送ってくれる。
次に帰ってくるのは、早くても10日後。
王都の対応によってはもっと掛かるかもしれないなと思うと、名残惜しくもあるがあと6日しかないので急いで王都に向かった後、さらに北上して北の大陸へ渡るのだ。
久々の本格的な冒険にわくわくする気持ちが無いわけじゃないが、時間との勝負もあるので緊張感も大きい。
ニケに飛ばしてもらい、最高速で王都へ向かうのだった。
───その頃、王都では。
朝早くからギルドに来ていたカイト達に、ギルドの職員は歓迎ムードだった。
何せ、全員がランクアップクエストを達成する偉業を遂げたとギルドに太鼓判を押されたのだ。
ほとんどの職員が、カイト達を英雄かのように見ている。
これから儀式を受ける3人も、変な盛り上がりを見せるギルドや街の人々に少し異様なものを感じ取っていた。
「ふふふ、ごめんなさいね。こんな事はここ数年無かったから、みんな浮足立っているのよ。なんせ、ここ数年間はSランクの冒険者なんて誕生していなかったし、チーム全員がSランクなんて勇者パーティ以来ですもの。もう、そういうものだと思って諦めてね」
と、マーズが困り顔をしつつもしっかりと職務をこなしている姿は、さすがグランドマスターの秘書である。
その後に、今日の儀式の予定を分かりやすくカイト達に伝えてくれた。
今日は3人が一緒に儀式を受けて、前回と同じく聖女の宣言がある。
その後さらに、
全員が一気にSランクになるなど初めてに近い事らしく、そのリーダーであるカイトには準爵位まで与えられるという話だ。
『ちなみに、断ると国外追放になるかも…』と、困った顔のままマーズが言って血の気が引いたらしい。
準備はまだまだ掛かるので、午後になったらまたギルドに来るように言われるカイト達だった。
「また午後まで待たされるんだね。ただでさえ王族貴族に値踏みされるっていうのに、落ち着かないのです!」
と、ミラが憤慨してたが全員気分は一緒だった。
それ以上に…
「てか…準爵位ってなんだよ…。聞いてないぞ!」
と、カイトは更にウンザリした様子だった。
『これ以上、貴族には近づきたくないのに…』と愚痴る有様だった。
だがすぐに諦めたようだ。
「宿に戻って鍛錬してくるよ」
と言って、宿屋に戻っていった。
ダンも『付き合うぜ』と言って一緒に付いていく。
今回儀式を受ける3人は苦笑しながら、『行きますか…』と、結局ついていくのだった。
───
ファルコニアロードの姿になったニケに乗り、俺は高速で移動していた。
俺ら以外は王都にいるので、合流してから向かわないといけない。
『流石のニケでも、一日中は飛べないだろう?』と聞いたら。
『風が吹く場所なら丸一日でも問題なく飛べますよ。竜姫達の体力次第ですが、行けるなら今日中に東の大陸へ向かう事をオススメします』
と軽く言われた。
さすがだ。
空の覇者は、もしかしてドラゴンでは無くファルコニアだったのか?
最高速で飛ばして来た結果、2時間程で王都に着いた。
うん、最速記録更新だね。
流石にそのまま王都に入るのは問題なのでちゃんと街の入口側に回り、ニケも人型になってから一緒に中に入った。
一度入った事があるせいか、今回はすんなりと入れてくれたので時間が掛からずに済んで助かるな。
そのまま真っ直ぐ宿屋に向かってみた。
街の雰囲気から、カイト達が帰ってきているのと儀式がまだ始まっていないのが分かる。
街は新しい英雄が生まれるかを渇望しているのか、カイト達の話題で持ちきりだった。
「あ、やっぱり!マスター!こっちこっち!」
「マスターお疲れさまでした。カルマもあちらの酒場に居ます」
「そうか、合流したか。カイト達には悪いが時間が無い。すぐに出立するぞ」
そこで、一息入れに来たカイト達がやって来た。
「ユートさん!俺ら全員クリアしましたよ!」
「ああ、街中大騒ぎになってるな。おめでとう、良く頑張ったな!」
そういって、あたまをくしゃくしゃにしながら撫でる。
「ちょっ、やめてください。もう子供じゃないんすからっ!」
「照れるなって~」
口では嫌そうにしながらも、嬉しそうな顔のカイト。
やはりランクアップはとても嬉しい事だ。
「お待たせしました。主をお待ちしておりました」
他のカイトのメンバーと、ディアナが呼んできたカルマも合流した。
いつも以上に、殊勝なカルマが多少気になるけど。
取り敢えず、アイナ、ミラ、ダン、ザインにも、『達成おめでとう!』と祝ってあげた。
特にミラは過酷な戦いを制したのもあり、今後とも期待出来るだろう。
アイナは、より精神的に成長したようにも見えるし、今後もこのチームの精神的な要になってくれそうだ。
ますます成長していくカイト達のチームを見て、嬉しく思う俺だった。
「本当は儀式終わったら、屋敷で盛大にお祝いしたい所なんだが、俺もクエスト中なもんでな。俺の方も終わったら、みんなでお祝いしような!」
「わーい!楽しみなのです!それで、いつ頃お帰りなられますか?」
ミラが素直な歓喜の声をあげたあとに俺の予定を聞いてきた。
「期間は一週間だが、クリアしてからここまでで2日。それから儀式して一日中連れ回されるだろうから、10日後くらいかな。それくらいには屋敷に帰れると思うよ」
「結構な長旅ですね。魔族領に行くとか。ニケさんとカルマさんがいるとはいえ気をつけて行って来てくださいね」
ミラがいつもよりも真剣な顔でそう言ってきたので、頭をポンポンと叩いて、心配いらないよ、でも有り難うと伝えた。
「じゃ、これから行ってくるからな。留守の間はお前たちに任せた!よろしく頼んだな!」
「「「了解!」」」
いつも通りの元気な返事を聞いて、安心していけるなと思う。
来たばかりだが、そのまま外に出て俺らは北の大陸方面へ飛び立つのだった。
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