第97話 カルマの提案
「その事でなんですが、主よ、一つ試したいことがあります」
カルマが二人の事で試したい事があると言ってきた。
今以上の制約は、力を封じていくだけで悪手にも思えたが…。
取り敢えずは聞いてみてからだな。
「なんだ?言ってみてくれ」
「へカティアとディアナは、本当は真なる竜の血を引く一族なのですが、今は魔王に飼われているため魔族として扱われている、と言うのが
「んん?と言うことは、元は魔族では無いのか」
「はい、そのとおりです。ですが、竜の力が残ったまま魔族になってしまったので、今は【魔竜姫】なのです」
なるほど、この世界のカルマが魔王幹部候補の時の知識だろう。
だとすると、昔は一緒にいた事もあったのかもしれないな。
城で会ったときは、二人は知ってる風だったし。
「それなら、今もドラゴンに変化したり出来るのか?」
あの二人が竜に変身したら、さぞ立派な竜になるだろうなぁ。
「いいや。変化するというは少し違うでしょうな」
「ありゃ?違うのか…んー、残念」
真なる竜の一族なら、変身くらい出来そうなのになー。
そうしたら、皆を乗せて移動も夢じゃない。
というか、帰りがかなり楽になるのにな。
「いえ、今も二人の真の姿は竜なのだ」
「おぉ!?ということは、…今の姿が仮の姿なのか」
「正解だ。但し力の制御が出来ていないため、戻らないように封印されているのだがな」
「そうなのか。それで何をするんだ?」
「うむ、我が封印を解いてから弱らせるので、主に二人を調伏して欲しいのだ」
さらっと、2つ爆弾を放り込んできた。
まず、二人が自力で出来ない封印解除をやれると言っている事。
そして、その後に起きるであろう暴走状態の彼女らを一人で抑えれるどころか、弱らせる自信があるということ。
それと二人をテイム出来るという事実…あ、3つだった。
…兎に角、どれも無理だと思える事をさらっと言ってきた。
「それ、本当に出来るのか?」
「ええ、封印を解く事と弱らせることは出来る。あとは、調伏する主のスキル次第だろうな」
「一発で成功するかは分からないけど、判定入るのであれば何度もすればいいから、いつかは成功するだろうな」
「であるならば、問題ないだろう。今日はキャンプで休んで英気を養ってください。明日はかなり消耗するだろうから」
ドーラに言って、野営の準備をしてもらった。
全員疲労が結構溜まっていたので、軽く食事したあとそれぞれのテントで睡眠をとった。
見張りには、双子とカルマについて貰った。
「我が見張れば問題はないだろう。主はゆっくり休んでください」
とカルマが言ったので、俺も素直に眠りについた。
翌朝、メンバー達には入口付近で狩りに出てもらう事になった。
理由は簡単。
暴れる竜の巻き添えになるのを防ぐためだ。
皆には、俺と双子とカルマがある儀式をするために、目の前のフィールドで作業をすると説明しての残ったのだった。
「さて、ディアナとヘカティア。お前たちの力の封印を解かせてもらう」
「え?そんなの魔王にしか出来ないはずだけど」
「そうそう!封印を解けるのなら、あの場でやってたっていうの!」
二人は訝しげにカルマを見ていたが、カルマが本当の姿を解放すると、逆らうだけ無駄だと悟り黙り込んだ。
カルマは姿を変えると、すぐに何やら詠唱を始めた。
俺には理解出来ない言語らしく、何を言っているかは分からなかった。
次第にカルマの周りに魔法陣がいくつも浮かび上がる。
双子の方は観念したのか、地面に膝をつき両手を胸の前で組合せて祈る格好をした。
そう言えば、詠唱で竜の巫女とか言ってたな。
今の姿であれば、そうも見えるかも知れない。
「さあいくぞ…!」
カルマが両手を天に挙げる。
そして、魔法陣が空に広かったと思うと二人に目掛けて降りてきて包み込んだ。
「うう…あああああっ!」
「何これ…体が弾け飛びそうっ…!」
二人を黒い稲妻が包み、宙に浮かび上がらせた。
それと同時に黒い闇に二人を閉じ込める。
「「ああああああああああああああっっ!!」」
二人が絶叫を上げると同時に、黒い闇が広がった!
そして、中から金と銀の光が溢れ出した。
「…うむ、ここまでは成功したようだ。主よ、危ないのでもっと下がっておくのだ」
輝く光の中から2体の竜が現れる。
金色の竜と、銀色の竜が咆哮を上げた。
ギャオオオオオオオオオ!!
カルマが言ってた通り、自我を保つことは出来なかったようだ。
ただ気になるのは、人型のときの二人よりも威圧感を感じない。
「なんか、二人共前よりも弱くなったか?」
「ふふ、よく気が付きましたな。今の二人は力を扱いきれてないだけでなく、我によって魔力を奪われている為、本来の力を発揮できないのだ」
なるほど、そうなると最初から分かっていたのか。
流石に本当の力を発揮していたら、カルマでも勝てるかどうか疑問だった。
これなら難なく勝つ事が出来るんだろうな。
しかし、それでも本気を出したドラゴンは凄まじい力でカルマに襲い掛かった。
試しに〈生物鑑定〉してみる。
金竜ディアナ ランクSS 種族:
銀竜へカティア ランクSS 種族:
ステータスを見る限りは、完全に格上になるな。
ギュアアアアアッと咆哮を上げたかと思うと、金と銀のブレスが無秩序に吐かれている。
その威力は、地面が抉られて液化する程だ。
カルマは空に浮きながら、巨大な魔法陣を創り出している。
さらに驚いたことに、あれだけの数が撃たれているのに魔法もブレスも当たらない。
全て余裕で躱している。
「そんな攻撃では、我に当てるのは無理だぞ?」
そう言いながらも、縦横無尽に回避しつつ、ついに何かの魔法が完成したようだ。
あれはなんだろう?
見たこともない紋様だな。
魔法陣のなかから、巨大な一つ目の怪物が
「やれ、【サイキュロプス】!」
目標の2匹の竜を見つけると、その大きな一つ目が黒く光りそこから巨大な黒い光線が撃ち出された。
凄まじい威力のその攻撃は、2匹の竜を黒焦げにしていく。
グギャアアアアアアッ!
悲鳴の様な鳴き声をあげて、ボロボロになった2匹の竜は追い詰められていく。
更に今度は地面に大きな魔法陣が現れて、2匹を捉えると地面からドロドロとした闇の沼が溢れてきた。
闇の沼に沈む2匹を、いつの間にか召喚していた無数の闇の精霊が凄い勢いで飛び交い切り刻んで行く。
「今の二人ならこのくらいでいいでしょう。さあ、主よこの者たちをテイムするのだ!」
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