第89話 ナイトメア討伐完了!

 上空で再びエルダーデーモンとユート達が戦いを再開していた頃、リンとシュウも自分達のクエスト対象であるナイトメアと戦っていた。


「でいやあああああああ!せいっやぁっ!」


 リンはナイトメア相手に、一歩も引かずに戦っていた。

 戦い始めて既に5分経過している。


 まだ激しい攻撃はしてきていないが、単発での魔法や、タックルなど当たれば痛い攻撃をしてきてはいる。


 今のところはすべて躱しているが、油断をすればそれだけでもかなりのダメージを受けるだろう。


 ユートの話では、HPが半分切ったら攻撃パターンが変化するという事だから、慎重に攻撃しているとはいえ、まだ半分も削れていないということだ。


 奥の手は、まだ取っておきたい。

 ピューイも、今のところは静観させている。


「!よし、ここだよぉ!!」

 

 ナイトメアが、こちらへ目掛けてタックルをしてきた。

 この攻撃の後は、かなりの隙が出来る。

 ひらりと躱して、すかさず横薙ぎに

 そう、今回持ってきた武器は、ガント特製の太刀だ。

 

 ユートが、打ち合うのではなくひらりと躱すスタイルを見て、切れ味優先の刀のほうがいいだろうとガントに作らせたものだった。


 おかげで攻撃力が上がったが、受けたり弾いたりすると刃が欠けるので、すべて躱す事に集中していた。

 ミスリルで作られている分かなり軽量化されているが、まだ今の力では振り回されている感がある。


 リンは、もっと使い慣れないといけないと思っていた。


 ナイトメアが痛烈な一撃を与えたことで、ついにHPが半分になったようだ。

 急に動きを止めて、グルアアアアアアアアアアアアア!!!と雄たけびを上げた。


 次の瞬間、ナイトメアが一回り大きくなった。

 筋肉が盛り上がり、目は真っ赤な光を発している。

 何より、体から黒いオーラが立ち込めていた。


「ついに、〈黒炎〉が発動したんだね。こからが本番!負けないんだからね!」


 ここまでで、7~8発ほど当てている。

 となると、10発くらいはダメージ与えないと倒せないだろう。

 そう考えたリンは、ここで初めてピューイを呼んだ。


「ピューイ!力を貸して!」


 ピューイ!と鳴くとリンを乗せて中空を飛ぶ。

 ビューンと旋回しつつ、急降下して頭を狙う。

 リンは横薙ぎにナイトメアに斬り込んだ。


 グアアアアアア!

 見事にヒットし、ダメージを与えたようだ。


 しかし、ナイトメアも黙ってはいない。

 魔法陣を3つ出現させて、そこから魔法を発現する。

 闇魔法”シャドウジャベリン”が3つ発動する。


 カルマのエビルジャベリンよりも数段ダメージは低いが、発動が早いので回避が難しい魔法だ。


「くうっ!でも、このくらいで!」


 2発分の槍が腕を掠ったが、それほどのダメージはない。

 ピューイも反撃で風魔法”ウィンドカッター”を放ったが、闇魔法”シャドウボール”で相殺されてしまった。 


 しかし、それも囮にしてリンが飛び掛かり、袈裟懸けにして斬り込んだ。

 ズシャアアアっ!と命中し、ガアアアアッ!と悲鳴を上げさせた。

 クリティカルヒットし、ナイトメアが怯んだ。


「!!ここが勝負どころ!いくよ…”紅鈴の舞こうりんのまい”!!」


 地上に着地したあとにすぐに踵を返してから、自分の奥義を発動させる。


 下段に回転しつつ2連撃、そこから上に真一文字で一閃しつつジャンプして斜め回転しながらの上段、中段、下段の3連撃というアクロバットな離れ業を再び発動した。


 さらにジャンプしてからピューイの背に乗り、納刀してから力を溜める姿勢を取る。


「………!〈居合抜刀一閃〉!!」


 ピューイに乗ったまま、居合切りでナイトメアを一閃するのだった。

 反撃を許されなかったナイトメアは、絶叫をあげてそのまま塵となっていった。


 それを見ていた仲間たちからは、おおおおっ!!と歓声があがったのだった。



 ───

 遠くで聞こえる歓声を、シュウは他人ごとの様に聞き流していた。

 別に薄情な訳でも、妬んでるわけでもない。


 シュウは、既に本気モードになっているナイトメアに対して、極限まで集中していたのだった。


 彼も奥義を狙っていたが、そのすべてに〈会心クリティカル〉を乗せようとしていた。

 呼吸も、魔力の波動も、一定に保たれた瞬間に走り出した。


「!!行くぞ!〈無双乱舞〉!!]


 上段に片手で構えてから、右、左、右、左、右と斜めに斬り、そこから両手で持って横に1回転半しながら中段を斬り、最後に後ろ向きからの上段からの袈裟懸けをした。

 そのすべてに〈会心クリティカルを乗せるように一撃一撃を丁寧に迅速に最大の集中で調整をした。


 そして、その結果は…。


 ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォ!

 とナイトメアが断末魔を上げて、塵となって消えたのだった。


 ──────


「やったね!シュウ!」

「リンもやるじゃん!」


 二人はハイタッチをして、同時にお互いを労った。


 二人とも倒した後に出現した”ナイトメアの角”はしっかり拾って、中央にいるガント達に合流した。

 他のメンバー達は二人の戦いを見つつ出現した敵を迅速に倒していたが、二人がナイトメアを倒したのを見て集まってきた。


 そこで、ガントが号令をかけた。


「目的は達成された。全員迅速に入口へ戻るぞ!長居は無用だ!」


 この先のフロアは、Sランクが出現すると思われる。

 そのため、このままこのメンバーで進んだ場合は被害が出る可能性が高い。


 よって、ナイトメア討伐完了した時点で戻るように予めユートと決めてあった。


 ──────


 メンバーがキャンプに向かって戻る様子を、カイトとユートも上空から見ていた。

 さっきまでいたナイトメアが消えている。

 という事は、討伐完了したということだ。


「カイト、見えたな?俺らもキャンプへ戻るぞ」


「分かりました、行きましょう!」


 こうして、俺らの第一目標であるクエストの達成は、無事に完了したのだった。

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