第80話 ユニオン【ウィンクルム】の方針

 全員が風呂から上がって、少し時間をおいてから食堂で食事にした。

 改めてこうやって見渡すと、結構人が増えたなぁ。


 LBOメンバーが9人、アストラ出身者が6人と使用人達9人。

 これからユニオンを運営する事で、もっともっと増えていくだろうし、LBO遭難者をもっと見つけて保護していかないとだしな。


「今日は、みんな集まってくれてありがとう。昨日こちらのライ率いる6人のチームメンバーが全員Bランクに上がったことを受けて彼のチームと、俺とガント、リン、シュウの4人チーム、カイト率いる5人のチームが同盟を結びユニオン【ウィンクルム】を結成した。これにより、この屋敷をユニオンの本拠地として活用していく。メンバーは出入り自由とするから施設は自由に使ってくれ。使用人への給金や、この建物の管理資金は俺が受け持つ。その代わりに、ユニオンとして受けた仕事やクエストなどの報酬金は俺が受け取りそこからチーム単位に分配とする。…ここまでで意見があるものはあるか?」


 そこでガントが手を上げたので、どうぞと返した。


「俺なんかは、今後冒険やるよりも鍛冶やったり、防具作ったりとモノづくりが多くなると思うんだが?」


「そこは、俺のチームとして冒険で手に入れたらちゃんと分配する。販売とかまではまだ先だろうけどな。ほかのメンバーの修繕とかの分は報酬から差し引くから心配するな」


「そうか、それならありがたい」


「他にはいないか?」


 今度はカイトが手を上げた。


「個別に受けたクエストはどうしますか?」


「そこは今まで通り個別で報酬を受け取っていいよ。全部徴収するつもりはない」


 なるほど、わかりましたと頷く。


 ライも手を上げた。


「今後の方針はありますか?」


「まだ、昨日作ったばかりだからな。でも、近々大規模攻略を行いたい。【迷宮ラビリンス】も天使の塔も途中までだしな。あとは、違うダンジョンでAランク推奨のとこは制覇したいな」


「いいですね!俺たちもまだまだステータス上げが必要になりそうですね。明日からまた訓練続けないと」


 ライの仲間たちも、やってやるぜっとか言って盛り上がっている。


「さてと、じゃあそろそろいいかな?せっかくの料理だ。冷めたらもったいないからな。…では、ウィンクルムの設立を祝ってカンパーイ!」


 カンパーイ!と祝杯をあげて、皆笑顔で食事を始めた。


「パパ!最近一緒に冒険してないからそろそろ行きたい!まだお忙しいの?」


「ん~、そうだな。スキルのほうはどうだ?」


「うん!もう2つ110になったよ。ランクアップの準備はいつでも大丈夫」


 おおっと、リンがAランクにランクアップ出来るのか。

 これは結構優先事項だな。


「シュウはどうなんだ?」


「俺も大丈夫だよ。大剣スキルが110だし。ステータスもSTRがカンストしたよ」


「うんうん、二人とも頑張ったな!じゃあ、それなら最初の活動は、二人のラックアップクエストだな。近場で出るモンスターだといいんだけどな。明日早速受けに行こうか!」


 それを聞いて二人はやったー!っと大はしゃぎしていた。

 他のチームのメンバーも、早速の活動にやる気を漲らせている。


「じゃあ、明日の昼にここに集まってくれ。今日は大いに楽しんでくれな!」


 そういうと、次々に料理が運ばれてきた。

 メイド達はテキパキと料理を運んだり、飲み物をついだりしてくれた。


 最後のデザートを食べ終えて、メンバーたちはリビングへ移動し談笑しながら思い思いに過ごしていた。

 俺とガント達もお酒を飲みながら、明日の打ち合わせをしていた。


「明日の準備に向けて、整備のほうはしておくぜ。俺も久々に出たいから、荷物持ちで参加するぞ?」


「ああ、そうだなぁ。なかなか参加できなくなるだろうし、あの子たちもお前がいる方が安心だろな」


「最近は、だいぶ戦士らしい動きになってきた。そこらの冒険者じゃ、もう太刀打ち出来ないだろうな」


「ほー、そうなのか。それは楽しみだ。俺は、基本ペット達の指揮に集中するから戦闘はメンバーに任せるぞ?」


「ああ、その方がいいだろうぜ。なんせ、お前まで戦ったら他の奴らの出番がないからな」


 Aランクへのランクアップ対象だと、対象は当然Aランクモンスターだが、俺が相手すると瞬殺になる。

 ニケとカルマだと、魔法やスキルすらいらない可能性があるから、あまり前に出し過ぎるのも問題かもしれないな。


 15人プラス、ペット達だとかなりの大所帯だな。

 このまま行ったらピクニックになってしまうから、分けた方がよさげだな。


 その日は、ライたちも屋敷に泊まることになった。

 女性メンバーは再びお風呂に入りにいったみたいだ。

 よほど気に入ったんだな。


 ライの仲間が無謀にも覗きにいこうとして、メイアに鬼の鉄槌を喰らったのは自業自得だ。

 全員一撃で仕留められたと聞いて、戦慄を覚えた…。


 当のメイアからは、『はぁ…、いろんな意味で精進が足りませんね』と苦言をもらったにも関わらず、俺今日からメイア様と呼ぶわ!とか言い出した奴がいたので、ある意味手遅れだろう。


 俺はいつものようにその日の出来事と明日の計画を練るため、自室で作業していた。

 紙は貴重だが、やはり羊皮紙よりも馴染みがあるから紙を購入して日記帳を作っていた。

 今回のメンバーだと戦士系が多すぎるので、配分をどうしようか考えていたら、ドアをノックする音が聞こえた。


 コンコン…。

 はーい、開いているよーと扉に背を向けたまま答える。

 ガチャリと開いたと思ったら、背後から飛びついてきた。


「パパー!」


 危なく反撃体制とりそうになったが、視認出来た瞬間にぐっと抑えて抱き止めた。


「こら、急に飛びついたら危ないだろう?どうした?」


「ごめんなさーい。うん、今日また一緒に寝たいなと思って…ダメ?」


 俺に抱き着いたまま、下から上目遣いで見上げてそんな事を言った。


 これを断れる大人は居ないだろう。

 最近はスキル上げの為に、リンとシュウは近場のダンジョンや、手ごろなフィールドモンスターを相手に常に出かけていた。


 俺は俺でギルドへ行ったり、資材を買いに行ったりと忙しくしていたので一緒にいる時間がかなり減った。


 カイト達のだれかを必ず一緒に行かせてはいるから、危険はないと思って任せっきりにしてたが、少々離れすぎてたかな。

 実の親から離されて数か月、今は俺の事を本当の父親のように接してくれるリンは少し寂しいのかもしれないな。


「ああいいよ、久々に一緒に寝ようか。もう少しで終わるから、ベッドに先に入ってな」


「はーい。…パパはいつもお仕事しているね。前一緒に寝たときもお仕事してた」


「はは、そんなことはないさ。ただこういうのはね、一人きりになった時が捗るってだけだよ」


 ふーん、そういうもんなんだねとベッドに潜り込みながら呟いていた。


 さらさらっと書くことを纏めて、明日のチーム割も決めた。


 手を出し過ぎるとクエストの邪魔になるが、折角いくのであればその場所の高位モンスター対象のクエストも受ければいいと思い、それを加味したチームを考えた。

 これなら俺も暴れれるし、稼ぎにもなるから丁度いいな。


「よし、終わった!さて、寝るかな」


 とベッドの方を見るとリンはウトウトしていた。

 子供のこういうのって、見ていてほっこりするよね。

 若い時には全く分からなかったが…。


 リンを少し奥に寄せてから、俺も布団に入った。


 子供と言っても、既に11歳だからそれなりに気を遣うお年頃なのだが、リンからぎゅっとしがみ付く様に抱き着いてきたので、そのまま抱きしめて、頭を撫でながら二人とも眠りについたのだった。

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