第70話 脱出する!

「カルマ、降霊術ネクロマンシーでクリエイトアンデットしてみるから、失敗したら後は頼んだな?」


「それは面白そうだ。主、任せてください。私の加護で成功させてみせよう」


 カルマは、目を閉じて何か呟いているようだった。

 すると、彼の体から黒いオーラが吹き出した。

 そのオーラが俺を包みこんだ。


「へー。こんな事も出来るんだな。いくぞ!〈クリエイトアンデット〉!!」


 ミノタウロスに向けてスキルを発動させた!


 地面に勝手に魔法陣が描かれて黒い光がミノタウロスの遺骸を呑み込んだ。


 遺骸は消え去り、魔法陣から角の生えたガイコツの巨兵が現れた。

 すぐさま、生物鑑定をすると…


 使役兵デーモンボーンナイト ランクS 種族:悪魔族 HP500/500


 ランクSなのにHP低いな。

 というか、悪魔族って…召喚に、近いなこれ。


「なる程、我の召喚に近い結果になりましたね。時間と共に魔力が消えていくので、そのうち塵になるようです」


 まぁ、ボディガード程度だな。

 力はありそうだし、俺らを守らせておこう。


「デーモンボーンナイトよ、俺らを守れ!」


 オオオオオオォォ!! と雄叫びをあげて、俺らの前に立った。

 前に動くと前に出る。

 下がると後に戻る。

 ちょっと面白いな、しかし細かい命令とかは受け付けないようだった。

 

「じゃあ、次の部屋に行こう」


 先頭が巨大な骨の戦士という異様な光景に、ザインあたりはソワソワしていたけど、女子二人組なんかは、『すごいねー、どうやってくっついてるんだろ?』とか普通に面白がってた。


 なんだかんだで、余裕が出てきたようだな。

 

 ボス部屋の奥の扉を開けて、次のフロアに入るとすぐ先に下り階段が見えた。

 あの先は冥界とも言えるこれまでとは圧倒的に強さの違うモンスターがウロウロしているはずだ。

 まだ敵にあってもいないのに、妙なプレッシャーを感じる。


 目的のポータルは…あった。

 階段の右手前だ。


 青く光るポータルゲートは、外に出る為にある。

 天使の塔と違い、ここから出たら戻っては来れない。

 トラップで最深部に飛ばされる、とかじゃ無い限りは外に出れるはずだ。


「念の為、ニケが先に入ってくれ。その後に5人と俺が入る。最後にカルマだな」


 皆一様に頷いて、指示通りに入っていった。



 ───中に入ると視界が光りに包まれて、視界がもとに戻るとそこは地上階の一角だった。


 先に入ってたニケと5人組がそこにいた。

 暫くして、カルマも出てきた。


 出てきたポータルゲートに触れてみたがすり抜けるだけで何も起こらなかった。

 んー、予想通りか。

 ここから地下4階へ行ければかなり楽なんだけどな。

 

 目の前に扉があったので触れると勝手に開いた。

 そこは、入り口の真横に当たる場所だった。


 外は日が落ちてもう真っ暗だった。

 入るときは夜明け前くらいだから、思ったよりも時間が経っているようだ。


 俺らが外に出てくるのを見つけて、飛竜のグランが慌てて近づいてきた。

 カイトに首を擦り付けて戻ってきたのを喜んでいるようだった。


 結構懐いてるなぁ。

 なんだかんだでちゃんと世話してやってるんだろうな。


「さて、帰るか!」


 飛竜にはカイトとアイナが乗る事になった。

 ニケにザインとダンが乗り、カルマには俺が乗るのだが…


「ミラ、カルマは俺以外だと女性しか乗せないやつでな…俺と一緒だが大丈夫か?」


 一応、気を使って聞いてみる。

 ゲームなら気にする事も無いのだが、一応ね。


「は、はい!大丈夫なのです!」


「そか、じゃあ落ちたら困るから前側に乗ってくれ」


「わ、わかりましたのれす!」


 なんか口調が若干壊れ気味だが、優しくスルーしておく。


 よし、全員の準備が整った。

 速度的にグランを先頭にして、その後を付いていくことにした。


 体力も全快しているし、のんびりと行くことにしよう。


「じゃあ、カイト。グランの速度に合わせるから無理しない程度で移動してくれ」


「分かりました。カルマとニケの速度は来る時に知ってるのでそう言ってくれると助かります。では、いきますね!」


 そう言うと、バサッバサッと空に飛び立ち町の方角へ飛んでいった。


「じゃ、ニケ、カルマ。よろしく頼んだな」


『承知しました、主様』


「承知。いきます」


 俺達も続いて町へ向かっていった。


 道中することも無いので、ミラにこの世界に来てからの事を聞いた。


 何でも、5人がコッチに来たのは1ヶ月くらい前で、最初は王都の近くで生活してたようだ。

 だが、敵が弱いので狩場の移動を考えていたのと、この世界について調査をする為にサニアの町にやってきたようだ。

 

 これまでに他のプレイヤーには会っていないらしく、俺が初の同郷らしい。

 皆、素性を隠しているのかもしくは王都にいないのかは分からなかったそうだ。


 気になるのは、Sランクプレイヤーが全く出て来ない事だ。


 LBOから来たのが俺らや5人組だけとはか考えにくい。

 そうなると、わざと出て来てないか、のどちらかだと思われる。


 他の大陸にいる可能性もあるし、そのうち調査に行くしかないか。

 

 王都について、名物やらオススメの店やら教えて貰った。

 代わりに、昨日と一昨日行った店は良かったよと教えてあげた。


「ミラ達は何処に宿取ってたんだ?」


「えっと、町の中心にある大きな宿屋なのです」


「じゃあ一緒だな。なら、帰ってから近くの酒場で皆で飯食べに行こう」


「はい!是非!」


 その時にうちのチームメンバー紹介するよ伝えた。


 行きとそんなに変わらず、2時間程で町に帰ってきた。


「ああ、町です。もう帰って来れないかと…」


 さすがに瀕死になって気を失った時には死を覚悟したようだ。


 実際、ザインが懸命に治療していなければ死んでいただろう。

 まぁ、その場合はリザレクション使おうと思ってたのは秘密だ。


 ちなみに蘇生は、魔法を150まで上げるか、蘇生術リザレクションを派生させて取るか、どちらかでしか出来ない。


 しかも魔法の場合は150で覚えるが、成功率が30%程度と低い。

 何度も失敗するとステータスが下がってしまうので、実質は160以上にして成功率50%以上にしないと現実的に使えない。


 その点、蘇生術リザレクションは熟練度イコール蘇生率なので成功率がとても高いスキルだ。

 特殊なスキル構成になってしまうのが難点だが、持っている人自体少ないかなり希少スキルなので、とっても重宝されるのだ。


 LBOでは、”蘇生屋”というのが街に居て、それで商売をしていたヤツが居たくらいだ。

 なんでも、一財産築けるくらい稼げるらしいが、その分ずっと町にいないといけないし他の事は出来ない為、やってる人はかなり少なかったが。

 

 町に着き、全員ペット達から降りた。

 ぞろぞろ歩きながら町の中心へ向かっていく。


「さて、まずはギルドに行って全員の生存を報告しよう。みんな待ってるぞ」


「そうですね、本当になんとお礼を言ったらいいか…」


「ははは、大丈夫だぞ?見合う報酬は貰えるからな!」


 あー、そうでした…と苦笑いするカイト。


 アイナ以外はまだ報酬の内容を知らないからなぁ。

 知ったら白目剥きそうだな。


 そうして、ほどなくしてサニアへ到着した俺らは、ギルドマスターへ報告するためにギルドへ向かうのだった。

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