第69話 vs迷宮の番人

「ははッ、やっぱりお前かよ!よーし、やったろうぜー!」


 出てきたのは、大きな角を生やした牛の顔の怪人。

 そう、【迷宮ラビリンス】の番人と言えばコイツ、”ミノタウロス”だ。


 迷宮の番人ミノタウロス ランクS+ 種族:巨人族 HP:12000


 確か、LBOの時は武技アーツの剛力と天恵を使い、斧による攻撃スキルのグランドスラムで範囲攻撃をしてくるんだったか。

 さらに見た目に反して素早さも高いし、見た目通りに耐久性も高いという事だが…噂の通りにHPが高いな。


 グオオオオオオオン!!!と咆哮を上げてきた。

 アイナとミラの女子二人がバインドしてしまったみたいだ。


「お前達は守りに徹しろ。ここまで攻撃が来るかもしれないからぼーっと突っ立つなよ?」

 じゃあなー、と言ってミノタウロスへダッシュで近付いた。

 

 ミノタウロスは、俺を発見すると猛スピードでタックルを仕掛けてきた。

 この巨体でやられるとかなり迫力がある。


 馬鹿正直に受け止める必要は無いので、闘牛士の如くひらりと躱す。

 ついでに双剣を突き立てて、ガガガっと音を立てながら深い傷を付けた。


 ダメージを食らい怒りを上げたミノタウロスは斧を振りかぶってきた。

 だが、その瞬間に大きな隙が生まれた。


『食らいなさい、ライトニング!!』


 ニケが斧に目掛けて雷を落とす。

 金属の斧だけあって雷はそこに集約していき、ドガガーン! という音を立てて直撃した。

 

 プスプスと焦げてよろめくミノタウロス。

 そこに追い打ちとばかりにカルマが真っ黒なオーラを纏い体当たりを食らわせる。


 ミノタウロスの巨体が宙を舞った。

 その体から更に黒い炎が立ち上った。

 カルマが体当たりと同時に〈黒炎〉を発動させたようだ。


 空中でもがくミノタウロスに、追い打ちとばかりにエビルジャベリンが四方から出現し滅多に串刺しにした。


 グモオオオオオオ!!!


 堪らずミノタウロスも悲鳴のような呻き声をあげた。


『まだですよ。息絶えるまで地に戻って来れると思わないでくださいね?〈天嵐〉!!』

 

 ニケのスキルで、真下から複数の竜巻が巻き起こる。

 竜巻でお手玉状態で宙をあちこちに飛ばされながら、強烈な雷が何度も体を突き抜けていく!


「そのままでいろよ?喰らえ!!」

 俺も神秘術ミスティックで光と雷を付与してクロスボウを撃ち出した。

 高速で飛んでいく無数の雷光の矢がミノタウロスを貫通していった!

 

 おし!既にHPが7000まで減ってるみたいだ。

 

「カルマ!ニケ!このまま押し切れ!」

 二人に指示を出しながらも、さらに魔法ライトジャベリンを発動して下から突き上げる。


「承知!アンチグラビティブラスト!」

 カルマも反重力魔法で吹き飛ばし、ついにミノタウロスはめり込んだ。


「そのまま動くな!アンチグラビティフィールド!」

 天井にめり込んだままもがくも、更に反重力魔法で押し上げられて既に逃れる術を持たない。


『鋼の如き私の羽を喰らうがいい!〈フェザーバレット〉!!』

 あの青いオーラ纏った羽根って、名前があったのか!


 叫ばなくてもスキルは発動出来るけど、わざわざスキル名を言う事によりより魔力を込める事が出来るので有利な時にはかなり有効だ。


 不利なときに詠唱とかしたら、躱されて終わりだけどね。


 フェザーバレットは反重力魔法を通る事によって更に速度を増したみたいだ。

 これはいいな。

 俺も透かさずそこを狙ってクロスボウを撃ちまくった!

 おらおらおらおら!とか言いながら撃ちまくってたら、ちょっと自分の方が悪者に思えてきたが、きっと気のせいだろう?


 相手が動けないので魔法でどんどん、追撃していく。

 距離があるので主に上級魔法のみ使う。


「喰らえええ!…ライトニング!フレア!サンダーボルト!」

 連続魔法で繋げてどんどん撃ち込んでやる。


 竜巻が消えたのを見てニケは空に舞い上がった。

 飛びながらライトニングブレスを何度も吐いていた。

 当たる度に数百ダメージ入っているようだ。

 どのスキルも威力すげぇなぁ…。


 カルマも負けていない!

 魔法で空中に足場を作り宙を駆けていく。 

 

「ふん!これでも喰らうがいい!」

 なんと!空中で闘気を纏わせつつ、凄まじい後両脚蹴りをお見舞いした!


 うおぉ…あれはエゲツないなぁ。

 威力を物語るように天井に亀裂が走っている。


 降りてきたカルマと入れ替わりでニケも突進していく。


『これでトドメですよ!〈轟雷〉!!』

 ニケが激突した瞬間に強烈なスパークが発生してよく見えないが、ドゴンガゴンガガガッと強烈な乱舞が繰り広げられているようだ。


 音が途絶えたあと、ニケがヒラリと下降したかと思ったら反転し、特大のライトニングブレスを放った!

 同時にカルマも魔法を放った。


「燃えつきろ、イビルインフェルノ!」


 最後はブレスと魔法で黒焦げにされたミノタウロスが、ズドーンと地面に落ちてき手ピクリとも動かなかった。


「はっは、やっぱりふたりは半端ないわ。5分くらいしか掛からなかったな」

 生物鑑定でHP0なのはしっかり確認済みだ。


 連携とりながらの本気のふたりは、ここまで強いかと再確認出来たな。

 でも、まだまだ強くなりそうだな。


 体制整えたら、今度はもっと奥まで潜りに来てみようと思う。

 だけど、今は5人を町に帰すのが先だな。


「よっし、終わったぞ?ダンとカイト、解体するから手伝え!」

 呆然としている二人の手を無理やり引っ張って、ミノタウロスのところまで連れて行くと…


「…本当に死んでるのか?!いや、そもそも天井に磔にされたボスとか、夢でも見てるのかって話ですが?!」

「俺もだよ。どう見たってコイツの方がデカくて重いのに、あんな軽々と…」

 目の前にあるものとさっきまでの光景が未だに信じられないみたいで、混乱してるようだな。


 まぁあれだ、子供とプロの差のようなものだ。

 今のランクじゃ理解したくても出来ないだろう。


「目の前のが結果だ。深く考えずにさっさと作業を終わらせような?」

 もはや説明するのも意味がないと感じて、さくさく作業を始める。


 角とか牙とかは高く売れるので、しっかり持ち帰りたい。

 革とか蹄部分も装備の素材に必要なので綺麗に剥ぎ取った。

 こうやってみると、ガントは流石の手捌きだったんだなって実感する。


 数十分間かけて解体した。

 ゲームと違って色々リアルなので、慣れないと泣きそうになる。

 巨体だけあって、餌用の肉がかなり取れた。

 皮も結構あるので分けてストレージにしまった。


「これで、このダンジョンは終わりだな。この先はさらに過酷になるらしいのでもっとランク上がってから来るといいぞ?」

「はい…、いつになるかは分かりませんけどね」

 カイトは、苦笑いしながらそう答えた。


「さて、予定よりもかなり早く終わったけど、町に帰るまでは安心出来ないからな。さっさとポータル探して脱出しよう」

 俺がそう言うと、みな頷いた。


 そういえば、降霊術ネクロマンシーでアンデット作成出来るけど、あんまりデカブツで試した事ないんだよな。

 よし、試してみるか。


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