第34話 思わぬ報酬
ドミニオンがいた場所に、一振りの豪華な杖がカランと転がった。この世界でも、モンスターが持つ物がドロップするのは珍しい。大体は霧のように消えてしまうからだ。
「おっし、圧倒的にこっちの勝利だな」
俺は、みんなに勝利を告げた。
やったーっ!と勝鬨があがった。
ガントが落ちてきた杖とか装飾品などを拾って鑑定している。
「こいつは…、マジか。すげぇな」
「どうしたガント?いい物だったのか?」
これ見てみろと、杖を見せる。
サイズが小さくなっているが、ドミニオンが持っていた杖だ。
「これ、アーティファクトだぜ?」
!!アーティファクト!?
「まじ?」
「まじ」
うおおおおっ、ケルベロスの時はアーティファクトどころか、マジックアイテムすら出なかったのに、なんてこった!
「効果は…、
「凄いな、スキル熟練度の上昇とか正に神業の品というわけか」
そうだなと、頷き杖を俺に渡してきた。
「効果的に、これはお前用だな」
だが、俺は突き返した。
「戦利品は、最後に振り分けよう。それと、魔法上がるし、メイス持ってるならお前が装備しててくれ。俺の両手は既に塞がってる」
俺が装備している双剣をひらひらして見せると、なるほどなと頷いた。
「じゃ、振り分けるまでは俺が装備しておくぞ?必要になったら渡すからいつでも言ってくれ」
「ああ、わかったよ。…無くすなよ?」
お前、変なプレッシャー掛けんなと文句言ってるが笑って誤魔化した。
「他にもマジックアイテムがあるな。指輪とか、
「シュウと、リンに、装備させておきたいな」
「前線出るからいいかもな」
そこで、シュウとリンを呼んだ。
「なーに、パパ?」
「何かいいのあったのー?」
二人がやってきたので、リンに、指輪を左の人差し指に。シュウの左手には腕輪をはめておいた。
「パパ、ありがとー!」
というと、両手広げてからダイビングハグされた。
「むう、ありがと…」
シュウもお礼は言うが、抱きついてるリンを見て恨めしそうな顔でこちらを見ていた。俺は、リンの保護者のつもりだから、お前の恋敵じゃないぞ?
「よし、反対側の扉が開いたか。早速抜けてセーフポイントを探そう」
ゲームなら、暫く待ってたら再度現れるとかあり得るので、ボスを倒したら外に出る。これは常識だ。
逆に全く出なくなる事もあるので、次に来る人の為にも空けるのが普通だ。
扉の外に出ると、光っている魔法陣がある。
多分だが、外に出られるポータルゲートだろう。
これがいつまであるか分からないが、いざとなったらここに戻ってくればいいな。
ゲームじゃないし、便利機能が使えるようになったと言うよりは、さっさとお帰り下さいとかそういう意味かもなぁと、つい益体もない事を考えてしまう。
「ここは、セーフポイントのはずだ。一旦休憩とって、魔力が回復したら出発する」
「了解!」
「「はい!」」
カーゴを使うこともなく、飲み物を飲みながら30分ほど休憩してから出発した。
11階層は、プリンシパティばかりだった。
特に変わった趣向もなく、スムーズに進む事が出来た。
カルマとニケも、ほぼ一撃で倒してしまっているので、シュウとリンの訓練させつつゆっくり進んだ。
12階層では、新しく、天使パワーが出てきた。
天使パワー ランクB 種族:天使 HP:900/900
こいつは天使の癖になかなか防御力が高くて、物理攻撃も強い。
ランクBの中でも最上位のステータスだ。
魔法もかなり痛いので、総合的な強さをもっている。
だがしかし…
「雑魚ばかりですね。いい加減飽きました」
そう言うと、グラビディブラストを発動し、あたりの天使達を中心に集める。
そこに、範囲魔法を撃ち込むのかと思ったら…
ズガアアアアアアアアンッ!!と、魔力を纏った両前足を振り上げて、そのまま魔法もろとも踏み抜いた。
その衝撃と、重力が反転したことで天使達は四肢を四散させて吹き飛んだ。
天使の手足だったものが、灰になっていく。
もう片方では、ニケが空中でパワー達をキャッチして直接電撃を与えてから、地面に向けて投げつけるという荒業を披露してた。
俺もさっさと先に進みたかったので、
相手が硬めなので一撃でとはいかないが、両手に持った双剣を縦に2回転で斬りつけて大体1ターンで片付ける。
「やぁー、とうっ、とうっ、てーいっ!」
と、可愛い掛け声で戦ってるリンも、武技を使っていれば負けない様だった。
この塔に来てかなりの相手を倒している。
シュウとリンも、5階くらいからは常に戦闘しているから、ステータスが上がったはずだ。
早く筋力と耐久力がMAXになって欲しいとこだ。
15層まで行ったら、一旦そこらへんも確認しようと心にメモした。
難なく、12層も突破した。
10層区切りで、敵の出る量とか下がるのかな?
いくらうちのペット達が強いとはいえ、進行速度がかなり速かった。
10層からここまで、約1時間しか掛かってない。
この調子なら15層まではあと1時間で行けるな。
13層もパワーとプリンシパティだけだった。
数が僅かに増えたが、それでも障害に感じない程度だ。
「武技発動!〈連武〉!たぁーっ!とりゃぁ!」
シュウは、コンビネーションの練習をパワー相手にやってる様だ。
なかなか余裕が出てきたようだな。
「そうだ、シュウ。俺の知っているゲームでな、大剣でやる必殺技があってさ…」
ごにょごにょと、技の詳細を伝える。
「へぇ!すごいいいね。やってみるよ!」
シュウは、さっそく出てきたプリンシパティへコンビネーションを使って攻撃している。
まず、上段に片手で構えてから、右、左、右、左、右と斜めに斬り、そこから両手で持って横に1回転半しながら中段を斬り、最後に後ろ向きからの上段からの袈裟懸けでフィニッシュ!
おー、すんなりやれたな。なかなか様になっていると思う。
「うん、これいいね!結構ダメージ入るし。ちゃんと繋がってるよっっと」
そういいながら、天使一体を力溜めしてから横一閃で仕留めた。
「それで、名前は決めたか?」
俺も、会話しながら双剣で胴を真っ二つにして、一体を灰にした。
「うん、決めた!〈無双乱舞〉!カッコいいでしょ!」
ほう、意外といいね。元ネタが無双~~なので、ぴったりだ。
「うん、いいんじゃないか?」
そう言ってやると、よーし、練習しまくるぞー!と天使に方へ走っていった。
あんまり突っ込み過ぎるなよーっというと、わかってるーと返ってきた。
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