第32話 ボス部屋へ到達

「はぁ…はぁ…はぁ、どうだった、パパ?」


 肩で息をしながら尋ねてくるリンに、凄くカッコ良かったぞ!と褒めてやる。


 消耗は激しそうだが奥の手には良さそうだな。

 褒められて笑顔になったリンは、そのまま違う個体に挑んでいった。


 やる気が更に上がったようだった。


 プリンシパティは魔法だけでも強いが、その手に持つ剣での攻撃も強くて、普通にタイマンするとリンが押し負けそうだった。


 だが、先程のように武技を使って相手をすれば、思ったよりは苦労はしなさそうだな。


 シュウの場合は力負けはしないものの、魔法の攻撃を織り交ぜてくる相手に結構苦戦しているようだ。


「くっそー、いいなリン。いつの間にそんな事を覚えたんだよー!

 俺も、今度考えるよ!」


 そう言いながら武技を発動し、ブンブンと力押しでなぎ倒していく。

 …が、透かさずプリンシパティが魔法を繰り出し、後退を強いられていた。


 そういえば、二人とも魔法使うBランクモンスターと戦うのは、この塔が初めてなのかな。

 そうだとすれば今のうちにもっと慣れさせねば。


「シュウ!相手の武器だけじゃなく、出した魔法陣や詠唱しているかとか確認して戦うんだ!

 こればかりは慣れだからな、意識して戦え!」


「いきなり、無茶言うなよー!

 くーっ、でもっ、やってやる~~!」


 文句を言いながら真剣な顔で、相手の動きを読んで動く。

 〈天恵〉があるので反応は出来るはずだ。


 リンもシュウの真似をして、読み合いをしながら動く。若いからか吸収が段違いに早いな。

 うーん、羨ましい…。


 さて、あちらはどうかな…と。


 従魔ペット枠トリオは、フィアがゲンブに乗り炎を吐いてガードしつつ、後ろからにゅっと現れたクロが首に喰い付き、トドメを刺すというコンビネーションを見せていた。


 ゲンブは固有スキル〈絶対防御〉を発動して、完全ガード状態だ。

 発動したら3000ダメージ分まで一切攻撃を通さないというスキルだ。但し、発動中は一切動けないという制限が掛かる。


 次の発動までのインターバルは、30分と比較的短めだ。元々、防御力が圧倒的に高いので、そこらのモンスターじゃダメージ与えられないけどね。


 流石に元々一緒に冒険していたから連携には問題ない。ま、こっちは心配無いだろうな。


 ガントの方を見ると、あっちこっちで素材回収に忙しそうだ。何故か狙われないのでそこが不思議なんだけど…。


 本命のカルマとニケは、"ドゴーン"とか"バゴーン"とか豪快な効果音と共に敵をふっ飛ばしてた。


 たまにカルマがかち上げて宙に浮いた敵を、ニケが上から前足で叩きつけるのを見て、”バレーのトスとアタックみたいだなこれ”とか、益体もないことを考えてしまった。


 おおよそ、1時間ほどで8階層内の敵を殲滅する事に成功。これで、プリンシパティのクエストは問題なくクリアだな。あとは15階層から出現するヴァーチャーを倒せばいいので、野営したとしても明日にはクリア出来るだろう。

 

 少し休憩を挟み9階層へと上がった。

 8階層と大きな違いはなく、プリンシパティとアークエンジェルくらいしか出てこない。


 レアモンスターとか出てこないかな~、来たらいいな~とか思ってたのは内緒だ。


 30分くらいで次の階層の階段を見つけたので、そのまま上の階に上がった。


 そこからは、雰囲気がガラッと変わった。

 この階はとても暗かった。

 特に部屋の仕切りはなく、真ん中に大きな扉があって、そこだけが唯一の部屋だと分かる。


 そうここは、所謂いわゆるボス部屋という場所だ。ギルドからの事前情報だと、ここに出現するのは、かなり上の階層にいると思われるランクSの天使ドミニオンらしい。

 一体だけなので、それほど大変ではないが(俺的には)、強い事には変わりない。充分に準備してから行こう。


 時間的には、外はもう夜のはずだし、一旦扉の前で野営の準備をする。


 フィアに携帯フォージの火をつけさせて、焚き火の代わりにする。そこで残しておいた白羊の肉と、携帯鍋を火にかけて準備をした。


 従魔達は全員肉食なので干し肉と水を与える。

 自分たちは、焼いた肉と鍋で温めた麦入りスープを食べることにした。


「「「「いただきま~す!」」」」


「ここまでは、結構順調だなぁ。ユートの従魔達のおかげで、かなり早く来たんじゃないか?」


「あぁ、俺もほとんど戦ってないし、かなり余力あるわ。まぁ、この先からどんどん強くなっていくから油断は禁物だけどな」


 ガントと会話しながら食事する。

 もっと余裕出来たら調味料も欲しいな。


「ねぇリン、さっきの技だけどいつ覚えたの?」


 シュウがリンが使ってたコンビネーションについて尋ねる。


「パパと、カルマさんに乗ってる時に、剣技は繋がるって聞いて教えて貰ったの。それでいくつか繋がりやすい技を繫げてみたんだよ!」


「へぇー!じゃあ、連撃出来るやつなら繋げていけるんだね。俺も試してみよ!」


 食べ終わったあとイメージを掴むためか、大剣を確かめるように素振りしている。


「おーい、程々にしておくんだぞ。このあとは一旦仮眠取るからなー。眠気で動けないとかしょうもない失敗するなよ?」


 そう言われて、ちぇっしょーがないかとやめて戻ってきた。


 見張りは先にカルマで、4時間後にニケに交代するためニケも外に他のメンバーとペット達はゲンブの中に入った。


「わー、結構広いね!」


 と、リンがはしゃぐ。


 カーゴ内に格納した素材は、自動的に素材ボックスに入っているため散らかったりしない。


 カーゴ内の中心には、LBO時代に買っておいたふかふかのラグが敷いてあって、みんなでそこに雑魚寝して仮眠を取る事にした。


 幾分か疲れがたまっているのか、皆すぐに寝息を立てて眠るのだった。

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