第31話 魅惑の天使


 言うとほぼ同時に、大きな光の魔法陣が出現する。

 魔法陣から出てくると同時に光の波動が辺りに広がった。

 ?なんだろう、ちょっと気持ち悪くなった気がする。


 やはり…。出てきたのはレアモンスターのようだ。

 透かさず、生命学バイオロギーで生物鑑定する。


 誘惑の天使ハニエル ランクA+ 種族:天使 HP1500/1500


 なんだ、ランクA+?LBOのときには聞いたことない表現だな。


「主、どうやら強化された特殊個体のようです。厄介な特性を持っているので我がやりましょう」


 そう言って、カルマが前に出た。


『下等なニンゲンどもよ…、主の命により排除する。この場で朽ちるがいい!』


 ハニエルは上空よりこちらを見下ろしながら、ラッパを吹いた。

 

 ニケは、『彼のお手並みを拝見しましょう』と少し下がってから、俺らを護る障壁を作り出した。

 精霊魔法のスピリットガードだ。

 弱い魔法と精神攻撃を防御出来る。


「わぁ、綺麗な天使だね」


 と、リンが見惚れて言う。


「俺、なんだかほわんほわんする~」


 とシュウが寝ぼけた事を言い出す。


「うおー、俺はあの天使に惚れた!今助け…?!ぶべはっっっ??!」


 ガントが血迷いそうだったので、きつめにしておいた。


 攻撃力1200相当のパンチはまともに喰らえばガントでも即死級だが、命は繋いだみたいな。(当然計算してたが)


「う…はっ!やばかった!両方の意味で!てか、こんなとこでマジツッコミとか死ねるからな?てかお前さ、神聖術セイクリッドあんだろっ!」


 ああ!忘れてた。


神聖術セイクリッドスキル…〈聖浄〉!!」


 キラキラと光が降り注ぎ、リンとシュウが正気に戻った。


「これでよし」


 涙目で、もっと早くに気が付けよ…と言っているが、忘れていたものは仕方ない。


「リン、シュウ、ガント。後ろに下がってろ。スピリットガードあるからこれ以上は喰らないと思うけど、念のためな」


「…これ以上は主の邪魔をさせんぞ。この羽虫が!」


 言った瞬間に魔法陣が、ばあッと広がっていく。

 そこから爆炎魔法が飛び交った。


「爆ぜよ、イクスプロージョン」


 ドゴーーンっと盛大な音を出して、ハニエルをぐるり一回り分を爆破する。


「いくぞ!」


 というと全身に〈黒炎〉を纏いつつ、さらに魔力を漲らせる。

 〈闘気法〉も併用しているようだ。


「貴様には、直接打ち込んだほうが良いだろう」


 カルマが、2種類のオーラを纏いつつハニエル目掛けて突進する。

 ハニエルは嘲笑いを浮かべながら宙に逃げる…、が次の瞬間に驚愕する。

 カルマが追いかけてきたからだ。

 ゴォォォ…ズドオオオォン!!

 と、轟音を響かせてハニエルを吹き飛ばした。


『グゥッ…畜生の分際でナマイキな!!我が、雷を喰らえ!』


 ハニエルから頭に響く声が発せられた。


「ふん、姿を雑魚の分際で不快な音を発するな!」


 ハニエルから雷が落ちる前に、カルマが複数の魔法陣を呼び出す。


「燃え尽きろ、インフェルノ」


 次の瞬間、ゴウッと音と共にハニエルの居る空間が燃え尽きた。


 ドサッと空から落ちてきた大天使は、もはや動けずそのまま灰に戻った。


「所詮はこの程度か」


 カルマに捨て台詞まで吐かせる。


 …いや、頑張った方だよハニエルさん。


 しかしHP1500を瞬殺か。

 格下とはいえ半端ないな。


 ニケも障壁を解除してから、『なかなかの手際。お見事です』と言っていた。

 まわりにはクエックエッ言ってるようにしか聴こえないだろう。


 ハニエルだった灰を回収していると、中にキラッと光る物があった。

 これは、…鍵?


 拾ってみると、大きな鍵だった。

 何処の扉の鍵か想像できないが先に行けば分かるだろう。

 今日は、あと3階上って10層まで行かないといけない。

 さくさく、行こう。


 7層では、その後は何も出なかった。

 さっきので打ち止めか?と思いつつ、一応索敵していたが何も出なかった。

 じゃあと、遠慮なく次の階層へと階段を上っていった。

 

 8層に入ると1つ目のクエスト対象のプリンシパティがワラワラと現れた。


 プリンシパティ ランクB 種族:天使 HP700/700


 とてもお手頃だ。

 ここでリンとシュウも戦わせてスキル上げを狙う。

 そう言えばと、リンに話をした。


「塔に来る前に言ってた技の名前考えたか?」

「あ、うん!まえに見たマンガを参考に、似たいくつかのコンビネーション技に名前付けたよ!」


 この世界は(LBOの時も)、魔法以外の攻撃に固有名詞はついていない。

 なのでみんな、自分でコンビネーションを作ってそれに技名を付ける慣習がある。


 但し、武技がないとそもそもコンビネーションを繋げれないので、やっぱり戦闘職専用なのだ。よって俺は持ってない。


「パパ、やってみるから見ててね!」


 と元気に手を振りながら言うと、


「スキル武技アーツ、〈連武〉、〈天恵〉、〈瞬足〉!」


 武技のスキルを3種発動してから剣を下段に構える。

 体から紅いオーラが迸った!


「いくよっ!…はぁっ!奥義”紅鈴の舞こうりんのまい”!!」


 リンは、下段に回転しつつ2連撃、そこから上に真一文字で一閃しつつジャンプして斜め回転しながらの上段、中段、下段の3連撃というアクロバットな離れ業を繰り出す!


 うぉ…すげぇなあれ。

 一瞬で6連撃か。


 美しい舞いの様な剣劇によって切り裂かれたプリンシパティは、一瞬で灰と化したのだった。

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