天使の塔編

第29話 クエスト開始

 次の朝、今日も宿屋で豪勢な朝食を揃ってから食べた。


 本日のおすすめメニューはポーチドエッグだった。期待通り、普通にうまかったので気分は上々だ。


 食事のあと装備とアイテム類を準備してから、みんなでギルドに向かった。


「お早う御座います、ユート様。今日はどのようなご用件で?」


 受付カウンターに、ミルバが居たので早速いいクエストがないか確認してもらう。


「おはよう。今日は、稼ぎのいいクエストがないか見に来たんだ。【天使の塔】か、【迷宮ラビリンス】で依頼がないか?」


 それでしたらと、ミルバは奥から数枚の依頼書を取り出し俺たちの前で広げた。


「ユートさんのランクと、昨日登録していただいたパーティーの構成から考えると…こちらとこちらですね」


 その中から三枚を選び、並べて見せた。

 その依頼内容は次の通りだ。


 <討伐依頼>

 場所:【天使の塔】

 依頼対象:Bランク天使プリンシパティを15体以上(証明のための素材、同部位を15個)

 報酬:金貨2枚 追加報酬:16体以上から1体銀貨1枚

 期限:なし


 <討伐依頼>

 場所:【天使の塔】

 依頼対象:Aランク天使ヴァーチャーを10体以上(証明のための素材、同部位を10個)

 報酬:金貨12枚 追加報酬:11体以上から1体金貨1枚

 期限:なし


 <討伐依頼>

 場所:【迷宮ラビリンス

 依頼対象:Aランク死霊リッチを10体以上(証明のための素材、同部位を10個)

 報酬:金貨12枚 追加報酬:11体以上から1体金貨1枚

 期限:なし

 

 天使の塔なら、2種類受けてそのまま篭もれるな。ステータス上げにもいいし、ちょうどいいだろう。


 聞くと、まだ天使の塔は未攻略ダンジョンらしく、到達階を増やし生息モンスターの情報を持ち帰れば、それに見合う報酬が出るということだった。


 無理をするつもりがないが、天使相手なら相性のいい悪魔のカルマがいる。それに光にも耐性を持っているニケもいるから、かなり優位に戦えるはずだ。


 天使の塔や他のダンジョンのレアモンスターが戦士および剣士のランクアップ対象だったりするから、都合もいいのだ。というか、知っていたので狙っていた。


 だが、LBOと全く同じとは限らないので一応ギルド職員に確認した。結果は、稀に発生することがありますと証言を貰えたので大丈夫だろう。


 よし、決まりだな。今回は天使の塔の攻略だ。


「ミルバ、【天使の塔】の2枚を受けていく。印証を押してくれ」


「2つともですか!?

 畏まりました。期限が無いとは言え、あまり遅いとキャンセル扱いになり、後ほどペナルティが課されることもありますので、ご注意くださいね」


 親切なことに、もし失敗したり、ほっぽり出したりしたときのリスクを教えてくれた。


「ああ、分かったよ。親切にありがとう。うまくいったら、今度飯でも奢るよ」


 え!いいんですか?!とか言いながら、目を輝かせる。


 …そんなので喜ぶとは思っていなかったので、正直びっくりした。

 まぁいいか、飯くらいではお財布に響かない。

 そんなことを考えている間に承認作業が終わり、クエストが発行された。


「じゃあ、行ってくる。2~3日不在にするかも知れないから、その間に来なくても心配しないでくれ」


「わかりました。他の職員にもそのように伝えておきます。必ずご無事でお帰りくださいね。ご飯楽しみにしています!」


 ああ、わかったよと言って、カウンターを後にした。後ろでどこで奢ってもらおうかなーと楽しそうな声が聞こえた気がした。


 ついでに、壁に貼っているクエストをざっと見たが、こちらは急ぎの案件ばかりなので、今は受けれないし、いいクエストは無さそうだった。


「お、出てきたな。どうだ、いいのはあったか?」


 ガントがギルドから出てきた俺を見つけるなり、尋ねてきた。


「ああ、丁度いいのがあった、ここだ。素材も集めるし、しばらくはこのダンジョンに籠るぞ」


 そういうと、依頼書を見せた。


「おー、本格的なとこだな。天使の羽とか結構いい値段つくから、素材採取は俺に任せろ」


「ああ、頼んだぞ。頼りにしてるぞ。シュウとリンも、今回は”白羊”よりも強い相手になる。気を抜くなよ?」


「はい、パパ!」

「うん、分かったよ」


 二人からもいい返事を貰えた。


 その後に俺は出発の準備を兼ねて、厩舎に寄った。


「やぁ。いらっしゃいユートさん」


 厩舎の娘が、出てきて挨拶した。今回はお仲間さんと一緒なんですねと言いながら、ご用件は?と聞いてくる。


「ゲンブとフィアを連れていく。2~3日くらい出かけてくるからその間ピューイとシロは頼んだな」


「わかりましたー!ちょっと待っててくださいね」


 そういうと、奥のほうに行きしばらくするとゲンブとフィアを連れてきた。


 リンが厩舎の娘をみて、私もああいう風に育つかなと呟いてたが、聞いてないふりをするも、君の成長は、まだまだ先の話だよと心の中で思っておいた。


 厩舎の娘から、ゲンブとフィアを受け取り、すぐに出発した。


 リンがフィアを可愛いといって離さなかったので、そのまま抱っこさせながらカルマにはリンと一緒に乗った。

 ニケには、ガントとシュウを乗せ、ゲンブはいつも通り吊るして移動することにした。


 ここから天使の塔までは、2時間くらいの予定だ。

 距離にして、大体200kmくらいで町からは北東の位置にある。


 途中に、障害物になりそうなものはないので、どこにも立ち寄る予定はない。

 入口まではノンストップで行くので、そのつもりでと皆に伝えから高速移動を開始した。



 ───2時間後、時間きっかりに到着した。


 他のメンバーも高速移動にやっと慣れてきたようで、グロッキーになる輩はいなかったようだ。


 俺も、慣れてきたので途中景色を楽しめて良かった。

 最近、空の旅が出来ていないのでちょっと寂しい気もするが、そのうちいくらでも出来るので今は諦めておく。


「さて、ここがA級ダンジョンの【天使の塔】だ。上級ランクの冒険者の絶好の稼ぎ場にもなっているが、その分、被害が一番出ているにもココだ。全員油断しないようにな」


 全員が、真剣な顔で頷いた。


「今日の隊列だが、訓練ではないから、前衛にカルマとニケと俺。中衛にシュウとリンとゲンブ。後衛にガントとクロとフィアだ。ゲンブは浮いて移動するから、移動速度は心配しなくていい。それに、防御だけなら一番高いから気にしないでいいからな。全員、俺の指示に従うように」


 全員が、了解の返事をして早速中に入る。


 【天使の塔】は、その名前の通りに天使が巣くうダンジョンだ。


 おとぎ話の天使とは違い、その攻撃性はまさにモンスターだ。

 神の使徒というよりは、大きな羽を生やした人型に近い魔物で、Bランクの天使までは知性は低い。


 俺は、一応テイム出来るが、今までスキル上げ以外ではちゃんと従魔にしたことはない。

 

 ダンジョンの構造だが、おおよそ30階まであるらしい。

 20階以上は、雲に覆われているので見通すことは出来ないが、昔に飛竜で外周を調べて確認を行ったらしい。


 調べたドラゴンライダーは襲ってきた上級天使に撃ち落されて、報告終えたあとに息絶えたという話が残っているらしいので、その後に調べようとするものはいなかったらしい。


 現在、内部の攻略済なのは20階までということだった。


 そこで出るのが、ランクAのヴァーチャーという天使だ。

 今回の依頼対象なので、そこまでは行くつもりである。

 何回か挑戦して、ボスに挑みに行ってみたいが、このメンバーではまだ無理だな。


 入口前で、水分補給と従魔達に餌をあげてから早速突入した。


 1階層は、さすがに楽勝レベルだった。

 まだ、天使すら出ない。


 そのまま5階層まではランクC相当しか出ないので、カルマとニケが肉弾戦だけで屠っていった。


「いつ見ても、すごいですね」


 リンがその戦いっぷりを見て感嘆をもらした。


「本当だな、俺らじゃあそこまで早くは倒せないね。悔しいけど完敗だよ」


 シュウも、苦笑いしながら前衛だけで殲滅されていくモンスターを見てため息をついた。


「おおう、手が空いてるなら、素材をゲンブに詰め込むの手伝ってくれ!」


 一番忙しそうにしているガントがSOSを二人にだして、手伝わせてた。

 ちなみに、フィアとクロは最初から手伝っていた。

 普段寝てる割には意外と働き者だよなと思った。


 なお、3人にはバレないようにだが、索敵と道案内はニケに聞いて進んでいた。


『主様、次は右です。ただし、そっちからエンジェルが3体来るので、こっちから仕掛けます』


「ならば、我も左からエンジェルを倒しておきましょう」


 二人同時にダッシュし始め、相手が気が付く前に、前足で吹き飛ばして倒した。

 

 安全確認を取ってから素材採取するのだが、天使達は他のモンスターとは違い、倒したら肉体のほとんどが灰になる。


 残るのは、羽部分と、コアみたいな魔石が落ちるが肉は残らないようだ。

 どちらも、低レベルでもお金になるので、しっかりと回収してもらった。


 六層に入り、やっと新しい天使が現れる。

 ランクB天使アークエンジェルだ。普通のエンジェルと違い、連携を取るようになる。

 手に持った槍や大剣で攻撃したかと思うと、次には魔法で支援している。

 

「やっと歯ごたえが出てきたな。カルマ、ニケ。気にするな蹴散らしてしまえ」


 そう指示を出すと。


「承知、我にお任せください」


『受け賜りました。私にお任せを』


 と、二人揃って頼もしい返事が返ってきた。

  

 中衛をしているリンとシュウはやることがなくなり、ずっと暇そうにしているのだった…。

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