第28話 スキル継承

 スキルの習得にはいくつか方法がある。


 ひとつは、書物による知識つけて学習する方法。

 これは一般的でLBOの時は、使で習得出来るお手軽方法だったが、アストラの場合はちゃんと本を読んで理解しないといけないようだった。

 しかも、書物は高価なので今は買えない。


 もう一つは、NPCにお金を払って覚える方法。

 これは、LBOでは最も簡単に習得出来る方法だが、書物よりは最初の熟練度が低いので簡単に上げれるスキルしかやらない。

 そして、ここにはNPCはいない。全員が生身の人間なのでこの方法は既に無い。


 最後は、才能持ちの誰かから伝授されて獲得する方法。

 LBOでは、相手がプレイヤーでないと出来なかったが、ギルド職員に試しに『伝授』できる人物がいるかと聞いたら、サナティさんなら可能ではと言われたのだ。

 この場合に獲得する熟練度は、相手の熟練度の半分くらいだ。


 サナティは、ライが精霊魔法の素質があると言っていたのでもしやとは思っていたが、知り合いになれたのは本当に運がいいと言える。


「では、私と両手を合わせてください」


 琥珀色に透き通った瞳が見詰めてくる。

 一瞬、見惚れそうになるが、いかんいかんと、気を引き締め直した。


「こうか?」


 と、手を合わせた。良く考えたら若い女性と手を合せるなんて何年ぶりだ?とか、不真面目な事を考えてたら、バチンッと両手が弾けた。


「うおっ!?」

「きゃっ!あ、…す、すいません!エレメントアイを発動した…ま…ま?え?」


 サナティが、空を見て驚いた顔をしている。

 そんなに、びっくりする事だったかと、首を傾げると。


「ユートさん…貴方はいったい…」


 そう言いかけた時、カルマが急に起きて二人の間に割り込んだ!


「貴様、主に何をしている!!」


 結構、本気で怒っている?いつも冷静なだけに、危険を感じ宥めるようにカルマを止めた!


「カルマ!待て!彼女には悪気は無い!これは命令だ!」


 カルマは、グッ、と声を詰まらし立ち止まった。

 元の草ベットに戻らせるが、視線はずっと彼女を見ている。


「一体、どうしたと言うんだ?」


 カルマに気圧されて、恐怖に腰を抜かしてしまったサナティを抱き起こした。


「すまない、うちのペットが驚かせてしまった。悪気は無いんだ。許してほしい」

「そんな、私が悪いんです。意識してないとはいえ、あなたの事をしまったから」


 と言うことは、俺の何かが見えたって事か?


「一体何が視えたのか、教えてくれないか?」


 柔らかい表情に戻し、真っ直ぐサナティを見詰めた。


「怒らないでいただけますか?」

「ああ、もちろんさ。正直に教えてくれ」


 こくりと、頷く。


「観測された結果は、属性は無のままですが、正体の看過が発生しました」


 え、と言うことは…


「啓示された内容は、『元人間。今は、人非ざる人。神に創られし人という生命を超えた存在である』という結果でした」


 な、なんだとぉ!いつの間に人間辞めてたんだ!

 あ、これカルマは知ってたんだな。


 ん、そうかさっき弾かれたのは、カルマの”ディスペル”だったんだな。


「なるほど、そういう事か…」

「ユートさん、…貴方は一体何者なんですか?」


 んー、と考えてから。


「俺にもわからん!」

「え?」

「え?」

「自分のことですよ?」

「そうだけど?」

「なんで、分からないんですか!?」


 困ったなぁという顔をつくる。


「まぁ、しいて言うなら…異世界から来た…おっさんテイマーかな」


 はははっと笑っといた。


「なんの説明にもなって無いじゃないですかっ!」


 もうっ!と、言ってプイっとそっぽを向いてしまった。

 いや、それカワイイんだけど。


「あれ…?異世界って、いいました?」


 片目を開けて、こっちを伺いながらふと思い出したと聞いてくる。


「ああ、そうだよー。こことは似ているけど、違う世界から来たみたいなんだ。あ、でも面倒事嫌だから内緒にしてくれない?」


 たのむっ!と両手を合わせてお願いする。


「もー、分かりました!そもそも、恩人であるユートさんを困らせる様な事はしませんよ!」

「そう言って貰って助かる!有難う!」


 いつの間にかカルマも視線を外し、眠りについていた。


 少し、お互いに落ち着いてから、ここに来た経緯とか話せる範囲で話をした。


「そうだったんですね、そんな大変な時に私達を助けてくれたのですね」

「まぁ、でも結果的にリンとシュウもパーティーに入ってくれてるし、良かったよ」

「しかし、取り乱してすいませんでした。私は、私が見たユートさんを信じます。だから、何者であるかなんて元々関係ないことでしたね。じゃあ、早速伝承の続きをいたしましょう」

「あぁ、有難う!宜しく頼むな!」


 再び、手を合わせる。

 お互いに、精神を集中し、目を瞑った。


「我は、精霊に仕え、精霊に認められし精霊師サナティ。我の呼び掛けに応え、新たなる精霊の子ユートに、精霊師の力を授けん!スキル伝承!」


 二人の周りに精霊が集まってくる。それがサナティを通してユートに流れ込んできた。

 その時だった。

 ニケがむくっと起き上がり、パアアアァッと光出した。

 そして、その光がユートを包み込んだ!


「こ、これは…!!」


 頭の中に声が聞こえてきた。


『主様に、大精霊たる我の祝福を与えます…』


 声が聞こえたあと、包み込んでいた光がユートの中に吸い込まれていった。


「…-トさん、ユートさん、大丈夫ですか!?」


 手を話した後も、ずっと目を瞑っているユートに、心配になったサナティは声を掛けてきた。


「あ、あぁ、大丈夫。大丈夫だよ。習得したよ」

「あぁ、本当ですか!良かった。失敗したらどうしようかと」


 ステータス紋に触れて、スキル熟練度を確認する。…やっぱり。


精霊術スピリチュアルだけど、熟練度が80まであがったよ」

「ええっ、私とほぼ同じじゃないですかっ!」


 そんなに高くなるはずが…と困惑している。


「それが、スキル習得する際にニケから祝福を授かったみたいだ」


そんな事が…とつぶやくも、なるほど大精霊であるなら有り得ますねと納得したようだ。


「そして、これで本当の目的である派生スキルの精霊支配スピリットルーラーを修得したよ。有難う!」

「いいえ、この程度でお役に立てたのであれば本当に良かったです」


 にこやかに笑い、サナティはそういうのだった。


「夜分に済まなかったな。あと…さっきの事だけど、あの子達には言わないでくれ。まだ、自分達の存在とか受け容れる事が難しいだろうから」

「分かりました。約束いたします。何かまたお手伝い出来そうな事があればいつでも仰ってください。いつでも」

「ありがとう、そう言ってくれて助かるよ。その時は遠慮なくそうしてもらうよ」


 はい!と笑顔で返したあと、ニケの近くまでいき、大精霊ニケ様のご加護がありますように…。

 と祈りを捧げ、ではまた。と言ってから去って行った。


 さて、確かめないといけないことがあるな。


「ニケ、お前と話できるのか?」


 さっき、ニケの声を聞いたと思う。もし、間違いで無ければたが。

 すると…


『主様、やっと私の声を聞くことが出来る様になりましたね』

「おお、これは精霊術スピリチュアルを習得したからか?」

『その通りです。私の声は主様にしか、聞くことは出来ませんが、これからはカルマと同様に私と話をすることが可能になりました』

「なるほどね。じゃあ、今度色々と教えてくれ。この世界の事ももっと知らないといけないし。お前のことも知っておかないといけない」

『分かりました。今度、ふたりで空を飛びながらでも話を致しましょう』

「ああ、よろしくな!じゃあ、明日の事もあるし戻るな。祝福有難う、感謝してるよ」

『はい、これからも宜しくお願いします』


 部屋に戻ったら、ガントと風呂から上がったとこだった。

 リンとシュウは、明日早いからともう部屋に戻って寝てるらしい。


「おう、戻ったか。ペット達の世話も大変だな」


 やっと帰ったかという顔しつつ、しかし物好きだなぁと言っていた。


「ああ、だが愛情を注げば注ぐほど良い事が起きるから、苦と感じることはないよ」

「俺の道具磨きと一緒だな!」


 なるほどなと、納得したようだ。

 ガントの道具に対する思い入れもかなりのものだったし、通じるものがあるようだ。


 じゃぁ、お休みと言ってガントも去って行った。


 さて、俺も風呂に入って寝る事にしよう。

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