第26話 キレたらコワイ?
そのまま順調に進み、6階層に辿り着いた。
運がいいのか悪いのかまだBランクに会わないな。
と、思った矢先だった。
前方に魔物が落ちてきた。
あそこに、縦穴でもあるんかな?
現れたのは、Bランク魔獣のアルケニー。半人半蜘蛛型の魔獣だ。
強さはそこそこだが、見た目がなー。
上半身が裸の凶悪犯みたいな顔の女性で、下半身が蜘蛛という魔物である。
その鳴き声も
今もキシャーーっとか言ってる。
それが、ボトボトと数匹落ちてきた。
シュウとリンを見たら、初めて遭遇したのか顔が引き攣っていた。
「シュウは前衛、リンが後衛だ。全体を見ないと糸にやられるぞ」
分かった!といいつつ、視界が通る位置に立ち相手取る。
「スキル『
シュウが武技スキルを3つ同時に発動した。
効果は、
〈連武〉:発動すると流れるように連続で技を発動出来る。
〈天恵〉:意識を高め、相手の行動を先読みする。
〈剛力〉:力を大幅に上げる。上昇率は、スキル熟練度に依存する。
という感じだ。
「はあっ!とりゃあぁっ!!でりゃあっ!!」
シュウは、アルケニー目掛けて、中段に一閃、下段二連撃、上段から縦に回転しての一撃を繰り出した。
ギギギーッ!!と呻きながら一体が倒れた。
すかさず、後ろからリンが飛び出して、技を繰出す。
空中でくるくるコマのように3回転しての3連攻撃を横にいたアルケニーに命中させた!さらに、下段から斜めに一気に斬り上げて、そのアルケニーを絶命させる。
「うん、なかなかいいじゃないか!」
やはり、センスはいいんだよなー。
下手に個人戦が上手い分、連携必要無かっただけだな。
慣れさせたらもっと上のランクも行けるな。
「これでっー!」
「終わっり!」
最後の一匹を左右から二人同時に攻撃して見事に仕留めた。
「お疲れ様!二人とも、大分連携が様になってきている。もっと数をこなして物にしていこう」
「「はいっ!」」
うん、いい返事だ。シュウも大分素直に聞いてくれてるな。
アルケニーが落ちてきた穴を見てみると、丁度上に巣があるようだった。
まだ、生まれていないアルケニーの繭が丁度10個ほどみえた。
「スキル『
スキルにより、クロスボウの矢に火炎と爆発の属性を付与して、繭に撃ちこんだ。
「恨みは無いが、露払いさせてもらう!!」
バシュッバシュッバシュッと撃ち出した矢は、着弾と共に大爆炎を巻き起こした。
となりで、落ちてきた繭に当たったらしいガントが、うわっちぃ!とか奇声を発していたが、気のせいだろう。
「これで一安心だな。後ろから奇襲とか勘弁だからな」
「容赦ねーなぁ」
ガントが火の粉を振り落として、そんな事をいうが、
「馬鹿を言うな、油断したら俺等だって簡単に死ぬんだからな?」
そんなバカな…!みたいな目で見るが、そうなってからでは遅い。
シュウとリンにも、変な情けは絶対かけるなよ?ここは、ダンジョンだと、念を押した。
二人は真剣な顔でコクコクと頷くのだった。
その先の部屋には魔物は居なかったが、下への道があった。
そこで、もう一度水分補給して気持ちを整えてから、下へ降りていった。
7階層。ここはダンジョンの名前の由来である、白羊が生息する場所だ。
大体、最初にソレを見るとうわぁ…って気持ちになるが、俺以外の3人も例外じゃなかった。
そいつは、真っ白なフカフカの綿みたいな毛で覆われていて、顔はまんま羊だ。だが、二本の脚で立ち、盛り上がった胸筋と腹筋、地面まで伸びた丸太の様な腕をもった怪物だった。
「パパ…あれって魔獣ですか?!」
「ああ、悪魔とか言われたほうが納得だが、歴っとした獣だよ…」
リンの顔は引き攣っていた。
「うわぁ、なんか戦いたく無いなぁ」
と、流石のシュウもドン引きだった。
「あれが白羊か、確かに羊だけどよぉ。でもあれの、素材って高価なんだよなぁ。解体やんの俺なんだよな…」
そんな事を言っている間に、白羊達はこちらに気がついた。
何故か、各々ポーズを取り出し筋肉アピールしてきた!!
──ユート達は、特大のダメージを受けた!!(精神的に)
「…。スキル〈連続魔法〉、シャドウジャベリン、ライトニング!アークライトバーストぉぉぉぉっ!!!」
プチッときて、辺りを魔法で爆撃していく!
いきなりの魔法に、白羊達はワタワタと逃げ惑う!
「死に晒せ〜!『ピー』野郎どもがあぁぁ!」
おま、おおおい!落ち着けエエエ!と、ガントに羽交い締めされて止められた。
離せっ!抹殺、いやこの世から存在を消してやるうぅ!!と、あまりにムカついて暴走してしまった。
「パ、…パパ?」
リンが呆然とこちらを見てる。
「おじさ…ユートさん落ち着いて!!」
はっ!しまった!
シュウにまで止められて、やっと我に返った。
…こ、こほん。
さて、訓練始めようか!と無理やりな笑顔で二人を送り出した。
最初の爆撃で半分くらい誅殺したので、結果的にちょうどいい数になった。
まぁ、これくらいなら大丈夫だろう。
「気をつけろよ。あいつら見た目通り力だけはあるからな?スピードも遅くはないから、一対一にはならないように戦うんだ!」
「「はいっ!」」
空気にシリアスを取り戻し、二人は言われたとおりに戦う。
さっきよりも、連携の精度が上がっている。目覚しい成長だ。
「スキル
シュウがスキルを使うと、
「スキル
〈瞬足〉:移動力が極大に上がり、瞬時に移動が可能。スキル熟練度で移動可能距離が上昇。
と、リンもタイミングを合わせて発動する。
二人の剣閃が縦横無尽に飛び交った。
フロアに、10数匹残っていた白羊は、あっという間に細切れにされていった。
「いやぁ、最初はどうなるかと思ったが、結果は大成功だな。既に解体されてるから、回収が楽だぜ…」
そう言いながら、素材をテキパキと剥いでいく。
肉は高級食材らしく、内蔵以外は全部回収していた。
「バックパックもストレージも一杯だし、今日はここまでだな。よし、お疲れ様!帰りも油断するなよ?来るときより少ないが、出てくるからな」
はーい!と、二人が返事をして、ガントは、任せたなと言って荷物を背負い直した。
帰りは、サクサクと進んだ。
来る時に殲滅してきていたのもあるが、荷物がいっぱいなので、なるべく戦闘を避けて戻ってきたのが大きいが。
入り口まで戻ってきたのが、丁度夕日が出る頃だった。
夕日をバックに、白と黒がクロスする!
ドガッ、バキッ、シュバババッ、ドゴーンと絶え間なく轟音が響き渡る。
ええと、一体何事だ!?
良くみると、地面には大きな蹄の形をしたクレーターや、猫の手の形をしたクレーターや、鋭い何かで大きく切り刻まれた跡やら、凄まじい戦闘の跡があった。
「ストップ!ストーーっプ!!!」
ユートがそう言うと、黒い影と白い風がピタッととまり、ユートの前に来て、着地した。
ニケと、カルマである。
「一体どうやったら、こうなる!?」
「はい、主の命により、今の今まで戦闘訓練をしていたのです」
訓練ってレベルじゃないよねこれ?殺す気でやってるだろっ!?
「もちろん、本気でやってましたよ。ただし、お互いに約束を守り、魔法もスキルも使っておりませんが」
え、まじで?!じゃあ、このクレーターはなんだ?明らかに大きさがあってないぞ?と、聞くと…
「これは、闘気です。純粋な魔力を物理エネルギーに変換してぶつけ合って生まれた結果ですよ…フフフ」
フフフじゃないから!
ニケも胸を張ってクアッ!じゃない!
しかし、魔法でもスキルでもない魔力攻撃か。
相変わらず、規格外なやつらだ。
何かで使えるかもと思いつつも、地形を変える規模で戦ってた2匹をキッチリ30分お説教しておくのだった。
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