第23話 ファミリーだ!
ライ達は2階のテラス部分を貸し切ってるらしく、4人で階段を昇っていく。
あの時、先に町に帰らせた仲間も一緒にいるようで、そっちは既に出来上がっていた。
「ああ、こいつらはお気にせずに。…どうぞ座ってください」
勧められるままに座り、すぐにやってきた店員に飲み物と適当な食べ物を注文した。
「まずは、今日は本当に有難うございました。あの時に、お二人に出会わなければどうなっていたか。今思い出してもゾッとします。本当に有難うございました!」
そこで、サナティも一緒にお辞儀した。
二人共、町中なので装備は外したようだ。
ラフな格好になった事で、より若者らしさが出ている。
特に、サナティは白っぽいワンピースを着ていて、発達した胸と瑞々しい褐色の肌がより際立っていた。
ガントは、完全に鼻が伸びていたがそっとしておいた。
「いやいや、俺としてもお前たちに会えて良かったよ。色々と収穫はあったからな。ちなみに二人は、ここの生まれかい?」
遠回しに、プレイヤーかどうか確認してみる。
「はい、二人共このサニアで生まれて育ちました。私の家は代々この町の警備をやってきたんですが、私が剣士の素質とサナティが精霊魔法の素質が認められ冒険者になったのです」
やはり、この世界の人間か。しかし、この世界の人々は、素質が無いとスキルを習得出来ないのかな。
「あっちの仲間は?ギルドで知り合ったのか?」
のびている男たちを指差す。
「いいえ、元々幼馴染というか、子供頃からの友人たちで、私達だけでは心配なのと、サナティにカッコつける為に一緒に冒険者始めたんですよ」
「兄さん!何言ってるんですか!変なこと言わないで!」
急に自分目当てだと告げられて、抗議する。
「いやーサナティ、美人だもんなぁ。分かる気がするよ」
お世辞ではなく、素直にそう思う。
「もう、ユートさんまで。からかわないでくださいっ」
顔を赤らめながら照れるサナティ。ヤバイ、反応が可愛いな。
横を見ると、ガントが見る目がいい加減ヤバくなってきたので、チョップしといた。
ブベラッとか、面白い反応だった。
「うーぅ、パパッ!
私は?わーたーしーはーっ?」
リンが、自分も褒めてとねだってきた。
…もう、パパで呼称が固定されたらしい。ちょっとむず痒い。
「うん、リンもとっても可愛いいぞ!
将来は美人間違いなしだぞ!」
取り敢えずべた褒めしておく。まぁ、結構本心でもある。
うへへー、と顔を緩めて喜んでいた。まだまだお子様だな。
「ところで、リンとシュウ」
「うん」「んあ?」
シュウは、半分眠りながら食べてるな。ある意味器用な…
「二人は
「「!!」」
よし、アタリだな。
「おっちゃんもか?」
うんと頷いたあと、聞きてきた。
「ああ、そうさ。こっちのガントもそうだ」
ライとサナティは、何の事か分からないといった様子で聞いている。サナティが皆さんの国の名前でしょうかと首を傾げていた。
「ガントも聞け。3人には、伝えておかないといけない事があるんだ」
そう前置きして、自分がこの世界に来たあとに、経験したこと、カルマが言っていた事を説明した。
大まかには、この世界はLBOと似ているが、全く別世界の現実、異世界であること。
ステータス、スキルはゲームで獲得したものを引き継いでいること。
死んだらやり直しは出来ない事。
そして、この世界の住人に生まれ変わっている事。
一番重要なのは、元の【地球】に帰る、もしくは行くことは絶望的である事だ。
3人は、そこまで聞いて絶句していた。
何処かでこのゲームが終わる、もしくは帰れると思っていたようだ。
シュウも眠気が吹っ飛んだようで目を見開いて聞いていたが、堪らず反論してきた。
「うそだ、うそだうそだっ!
それが本当なら家には帰れないって事じゃないかっ!
大体なんでそんな事を信じるんだよ。あの悪魔の嘘かも知れないだろ!?」
そう思うのも無理は無い。
俺も正直そう思いたい。
だが、逆に思うのだ。
確かにシワがあるのに、若々しい肉体や、漲ってくる力。
五感がすべてリアルであり、なのに今まで分からなかったはずの魔力の流れが分かるようになっている事。
それは、”前の自分とは違う存在になっている”と思わざる得ない証拠でもあると。
もう、自分たちはこの世界の住人なのだ。
そうだとすれば、自力で生きていかねばならない。
だから…
「俺と一緒にこの世界で生き抜くために、力を合わせないか?」
不安はいっぱいある。
だが、ひとりじゃ無ければなんとかなるだろ?
「ははっ、難しい事は正直分からねぇ。けど、少なくともユート、お前といれば楽しくやっていけそうだ。元よりそのつもりだったし、こちらこそ、頼むぜ!」
ガントが快活に笑いながら、合意する。
「私も、お家に帰れるかわかんないなら、一緒に行きたい!
ユートさんと一緒にいるとね、本当のパパといるみたいで安心出来るんだよ…」
リンも不安を押し殺し、俺についていくと言ってくれる。そして小声で、だからパパって呼んでもいいよね…と言った気がする。
「俺は、まだ帰るのは諦めないぞ。
でも、リンが心配だから一緒にやるよ!」
シュウも、リンを守れるならと同意した。
三人を見て、決まりだなと呟いた。
「よし、俺らはこれからファミリーだ。力を合わせて…この世界をまずは満喫してやろう!」
と、笑いながら皆で乾杯するのだった。
置いてけぼりを食らってたライとサナティは、ポカンとしてたが、何か良い方向に纏まったんだろうと、良かったですねと言って拍手していた。
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