第16話 救出へ

 そこから、ものの数分で到着した。


 やっぱ、ペット様々ですわー。

 ほんと、移動力は冒険には欠かせない。

 グロッキーな二人がいるが、きっと気のせい。ほら、早く案内しなさい。


「…兄さん、私初めて空飛んだわ」

「それは、俺もだよサナティ」


 ん、こいつら兄妹だったのか。


「よし、ライとサナティ。ガントと3人でニケの背中に乗れ。飛ばない状態なら乗れるから」


 そう言いながら、自分はカルマに乗る。


「カルマ、ニケ。目的地の中層まで全力疾走だ。雑魚は、弾き飛ばせ!」

「承知!」


 クァアアッ!

 カルマとニケの周りに障壁が形成される。


 通常なら、単なる落下防止でしかないが、このクラスになると、それだけで敵を蹴散らせる。

 言われたとおり、2匹は全力疾走した!


 ドドドドドダドドドダドドドドッ!

 チャージタックルされたかのように、弾け飛ぶ魔物たち。


 たまに数が集まって、邪魔になりそうだと、クァックァッ!と鳴いたかと思うと、突然、室内に竜巻が起きて魔物を吹き飛ばす。

 また、ガードしながら突撃してきた、オーガソルジャー達が出てきたら、カルマが魔法を発動し、ダークブラストでこれまた吹っ飛ばし、瞬殺していた。


「サナティ、俺は夢を見てるのか?」

「いいえ、信じられませんが私も同じ光景を見ています」


 そんな光景を見て、二人は唖然としてた。


 ガントだけは、


「こんなにすげーのか。流石だなぁ。しかし、こりゃ楽でいいね!」


 と、言っていたが…


 入り口に着いてから、中層に来るまでに10分。

 そこから目的地のヘルキャット部屋まで、5分だった。

 かなりのハイペースだが、これまでに打ち洩らしはない。

 全てが瞬殺だ。


「さて、まだ元気にやってるかなー?」

 


 ───ユートが到着するほんの少し前。リンとシュウはまだ戦ってた。


「シュウ、このままだと押し切られるよぉ!」

「くっ、本当にキリないな!リン、まだポーションはあるかっ?」

「あとっ、2本!てい、やぁっ!」


 たった二人で、続々と湧いてくるヘルキャット達に囲まれながら、なんとか致命傷を避けつつ、少しずつ数を減らしていた。


 しかし、確実に溜まっていく疲労はどうにも出来なかった。

 少しずつ、少しずつ死が忍び寄ってくる。そんな事がよぎるを頭を振り払って頭の片隅に追いやる二人。


 二人は、純粋なファイターなのでここで回復魔法は使えない。

 使えたとしても、詠唱する暇が無かったので状況は変わらなかっただろうが。


 だが、打開策が無いというのは、気持ち的にも二人をかなり追い詰めていた。

 …くっそ、何か抜け出す手を考えないとリンがもう限界だ。

 どうしようどうしよう。と追い詰められてるシュウは、見た目通りの幼い精神がさらなる弱みを見せる。


 その結果、大きな隙きを敵に見せてしまった。

 背後から数体のヘルキャットがチャンスとばかりに喰らいついてきた。

 一瞬背後の警戒が疎かになっていたシュウは、あっけなく深手を負わされた。


「がっは!うがぁ、痛ってええっ!」


 余りの痛さを振り払うかのように、ブンブンと大剣を振り回す。


「シュウ!?駄目だよ!いま、ポーション使うから!」


 さっきまでの冷静さを忘れているシュウが深手を負っているのをみて、リンは庇うかのように剣を滑り込ませ、敵の攻撃を受け止めつつ、左手にもったポーションをシュウに振り掛ける。


 背中から流していた血がとまり、わずかに傷が塞がる。

 しかし、痛みまでは消えない。


 その痛みに顔を顰めながらも、我を取り戻したシュウは冷静さを取り戻した。

 しかし、精細さを欠いた動きでは防戦一方だ。


 リンもポーションを飲み傷を癒やした。

 しかし、疲労は溜まり続けている。

 普通の回復ポーションでは疲労を回復する事は出来ないだ。


 極限状態がかれこれ1時間以上続き、リンの集中力も既に限界だった。

 その最中、ポーションを使った時に出来た隙をまた違うヘルキャット達が狙ってくる。

 なんとか回避するも、そこで遂に限界がきた。


 攻撃を受けた瞬間に片膝を落してしまう。

 意識が一瞬飛ぶ。

 シュウは、既に助けに入る余裕は無い。


 リンはその場に押し倒され、そのまま複数のヘルキャットに噛みつかれる。

 なんとか、防具とステータスの恩恵で牙に抵抗していたが、あっけなく突き破れ、腕から脚から背中から血が滲み出てくる。


「う、あああああっ!」


 リンは、堪らず苦痛に呻き声をあげるが、既に跳ね避ける力が出ない。


「リンッ!?リンー!!くそっ、どけろおおおお!」


 シュウは、なんとかリンに駆け寄ろうとするも、ヘルキャットの大群に囲まれて近づく事すら出来ない。


 それどころか、自分も数匹に噛み付かれて、ついにシュウも倒れた。

 すかさず、他のヘルキャット達がさらに喰らいついてきた。


「がああっ!」


 もはや、声にならない悲鳴をあげて、自分達の最期を悟った。

 今さら、浅はかに飛び込んだ自分を呪うも、既に遅い。

 リンは、既に気を失いかけている。


「リン、ごめん…俺のせいで…」


 シュウも激痛で気を失いかけていた。


 グオオオオオオオオオオオオ!!!

 突然、辺りに咆哮が体にビリビリするほど響き渡る。


 ヘルキャット達も、何事かと動きがとまる。


 クルラアアアアアアアアアン!!!

 さらに、また違う鳴き声と共に、爆風が吹き荒れた!


 辺りにいたヘルキャット達がたちまち吹き飛ばされて行った。


 「やぁ、君たち無事か?…うん、ちょっと無事ではなさそうだな」


 そこに現れたのは、大きな白い魔獣と漆黒の馬のような魔獣をつれた、おじさんだった。

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