第11話 村に帰る
1時間後、全ての解体と仕分けを済ませて、ガントが中から出てきた。
「かあー、疲れた。数がマジで多かったぜ。だが、これで革とかの素材はバッチリだ。ついでにバックパックや、俺の装備も新調出来そうだよ」
いい笑顔と、疲労を滲ませて、嬉しそうに言う。
「だけど、鉱石はまだまだあった方がいいな。取り敢えずフォージの火はどうだ?」
「おつかれガント。フィア達が熱を調整してくれてるから、いつでも溶かせるぞ。やるか?」
「ああ、やっちまおう。結構いい鉱石出てたから、うずうずしてるんだ」
人の事を奇人とか言うが、ガントもなかなかなホリックだ。根っからの職人のようだな。
「無理はすんなよ?」
「わーってるよ、ささっと終わらせようぜ」
カーゴから次々に鉱石を取り出し、溶かしていく。
俺じゃ良く分からない道具を使いこなして、見る見る金属が産まれていった。
この世界は、魔法みたいなスキルがあるので、見た感じは一定温度になったら光って金属に変わっていくように見える。
ここに来る前に、この世界のステータスの見方やスキルの使い方について、わかる限りはレクチャーしておいた。
スキル上げも生産作業も効率が重要だしね。
いま見た感じ、もう使い慣れたようだな。
この世界でも今まで通りに生産スキルを使いこなせると思う。そして、俺の装備もグレードアップを期待出来るってことだ!
ふふふふふっと、つい気持ち悪い笑いが漏れる。
「おし、金属生成もOKだ。この後は、携帯フォージを近くに置いて採掘するから、出来上がった金属隗をカーゴに突っ込んでくれ」
「オッケイ、ガント。職人モードのお前は頼りがいのある男だな」
ブフッと、ガントが噴出して慌てた感じで抗議する。
「おちょくるのはよしてくれ!本業が真剣なのはどこの誰でも一緒だろ!」
「はっはっは、すまんすまん。じゃあ、ゲンブと一緒に後ろにいるからな」
「ああ、うまくいけば今夜中に充分な量が取れるだろうから、もう一息がんばるよ」
中々に逞しい腕で力こぶを作り仕草をして、やる気をアピールしたガントは、すぐさま作業を開始した。
地球でこの量を採掘するなら、大型の採掘機械と鉱炉が必要なことを考えると、鍛冶師スキルもちも中々にチートと言えるな。
重さに、5トンくらいの鉱石を掘り出し、インゴットに精製した金属が、鉄500個、銅100個、魔鉄200個、銀50個、金10個、ミスリル30個、オリハルコン10個とまずまずな成果だった。(ちなみに普通の村人ならこれで一生優雅に暮らせる。)
ガントは、
「ここの採掘場は、質がいいな。討伐出来なかった事にして占領したいくらいだぜ」
と、真顔で冗談には聞こえない事を言っていた。
そのうち誰かが探索しにきたらばれるからやめとけと言っといたが、とても残念そうだった。
どちらにしろ、俺のゲンブがいたから一気に運べたのだし、本来住んでる魔獣もいるから、キマイラほどじゃないにしても、鍛冶屋がソロで来るには危険すぎるので通うのも無理だろう。何気にここのダンジョンは高ランク向けなんだよね。そもそもガント専用のカーゴもないしな。
戦利品をゲンブのカーゴに全部いれ、ついでに体力使い果たしたガントもカーゴ内に放り投げて、一気に脱出することにした。
中が揺れて気持ち悪かろうが、気持ち悪くなるのは俺じゃないし気にしない。
俺はカルマに跨り、フィアは分身を消してカルマと俺の間にちょこんと座り、ゲンブについたロープをカルマに咥えさせダッシュさせた。(クロは、例のごとくカルマの影の中らしい)
梯子を馬で駆け上がる体験は、大変スリリングで二度とやりたいとは思わなかった。
風のごとくというか、影が移動しているかのように、スルスルと地上まで駆けていった結果、1時間ほどで入口まで戻ってこれた。
途中、出てきた動物とかそのまま吹き飛ばしてたのは、きっと気のせいだろう。…多分。
探検しに来た人がいなくて良かったと、本気で思ったくらい容赦なかった。
外に出ると、ニケが待っていた。俺の顔を見るなり嬉しそうにクアァー!と鳴いていた。
可愛いやつである。
外は、すっかり夜更けで今から村に戻っても宿屋が開いてそうになかった。
そのため、外に建てたテントで仮眠を取ることにした。
ちなみに、カーゴに放り込まれたガントは既に気絶してたので、そのまま寝かせておいた。
俺もカーゴ内に寝袋を敷いて寝た。
フィアは、俺の上で丸まって寝ていた。
うん、可愛いけどちょっと重い…。
ニケとカルマはテントの外で番犬よろしく、辺りの警戒をしつつ休んでいた。
次の日の朝、特に何事も起きなかったが、朝になってガントが文句言ってきたことと、ニケとカルマが軽く手合わせをしてテントの周りにクレーターが何個か出来てたが、気にしないったら気にしない。
来た時と同じようにニケにガントを乗せ、ゲンブを吊るし、カルマには俺とフィアが乗って高速移動で村まで戻った。
帰りは道も慣れたのもあり、きっちり3時間だった。
村に戻ると武器商人のとこへ行き、銀貨3枚で工房を貸してもらうことになった。
そこに、カーゴから各インゴットが入った箱と魔獣の皮が入った箱を降ろした。
ガントの話では2~3日で出来上がるらしいので、じゃあ任せたぞ!と、それまではゆっくりすることにした。
ついでにと、キマイラの亡骸を村長に持っていった。
「おお、なんと!あなたはこの村の救世主じゃあっっ!!」
とか、言い出したが、スルーして貰うもんだけ貰った。
報酬はなんと金貨30枚と、宿屋フリーパス券だ。(使う度に村長に請求がいく仕組みらしい。ちなみに食事代は別らしい。)
ほくほく顔で、厩舎へ行きカルマとニケ、フィアとゲンブを預けて、ついでに金貨10枚を弁償代として払った。
こりゃあ、多いですよ旦那!とか言ってたが、試しに、「じゃあ、今後はタダで預かってくれよ!」と言ったら、快諾された。
…別に脅したりもしてないので、あっさりオッケーされて逆にびっくりした。
その後で寄った酒場で、あの厩舎の兄弟が鉱夫をしているらしく、すげー感謝してたぜと言われてその理由が分かった。
良いことはしておくもんだ。
宿屋に戻り、久々のベッドに潜り込んみ、こっちに来てからの事に考えを巡らした。
まだなんでこの世界に来てしまったのか、LBOの世界とどこまで同じ世界になっているのか不明な点が多いが、カルマやニケ達の力が十二分に通用することが分かった。
しかし、これから先は何があるかわからない。
まず、生き残るためにすべての能力を
装備を整えたら、町に行って情報を集め、他にもプレイヤーがいれば情報交換をしたい。
なんなら、パーティとか組んでさらに戦力強化するのもいいかもしれない。
ただ、ほとんどソロだったので、ペット以外への指揮とかわからないけども。
それに、町にはギルドの支部があると酒場で聞いているので、クエストとかそこで受けておきたい。
収入を確保しないと、”地球”でサラリーマンやってた人間としては、正直心許ない。
金庫にLBOで稼いだお金残ってないかなと淡い期待も持ちながらも、なんとなく次の冒険に心躍らせている自分がいるのだった。
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