第8話 空を飛ぶ二人
───翌朝、早めに起きた俺は厩舎に向かった。
厩舎には既に世話をする主人が働いていて、俺が着いた時にはせっせと動物の世話をしていた。あ、そういや、壊れた建物直してやらんとだよな。
素材ついでに宝石とか採りに行くかなー。そんなことを考えてたら、声を掛けてきた。
「あー、旦那お早うございます。冒険者にしてはお早いですね」
「あぁ、様子が気になってな。みんな元気か?」
「はい、勿論です!昨日は、飯もちゃんと食ってくれましたし、元気いっぱいで私もひと安心ですよ」
厩舎の主人もうちの子たちのことを気にしてくれてたようだ。その心遣いに感謝しきりだ。
みんな色々あってボロボロになったし、今日からまた新たな冒険するのだから、全快していてくれないと心配が残る。
でも、どうやら杞憂で済んだようで良かった。ポーションという、魔法のアイテムがあるからこの程度で済んでいるだけで、無かったら今も絶対安静にしてないといけないくらいの怪我してた子もいた。
どの子も我が子なんです。やっぱり可愛いに決まっている。
過去に死なせてしまった動物の事を思い出し、少し悲しくなった。
「しっかり治してくれて助かったよ、ありがとう。今日も出掛けるからまた、あとで引き取りに来るからよろしく」
「わかりました。お待ちしてますね」
去り際に、預り金を渡しておいた。
ひとまず、ペット達の状態を確認できたので、食堂兼酒場へ向かう。
朝だというのに、もう中は客で賑わっていた。
昨日と同じカウンターへ進んでいくと、そこにガントが待っていた。
「お早うガント、早いじゃないか」
「お早うございます、ユートさん」
明るくなった朝に改めて見た感じ、自分と大して変わらない男がさん付けで挨拶してきた。
なんか違和感しかない…うん、やめさせよう。
「そういや、ガントいくつだ?」
「へ?俺は、今年で39歳ですが、何か関係が?」
やっぱ、そんなもんか。
「うん、大して歳変わらんし、これからはギブアンドテイクの関係だ。俺の事はユートでいいよ」
「了解した。じゃ、ユート改めて宜しく!」
「おうよ。よろしくな!」
ガントと、飯を食べながら今日の方針を話し合った。今日は、まずは鉱石を採らないと、金属が無くては何も作れないって話だ。大事な道具類は売らずに取っておいてるが、細かい部品とかは在庫がないらしく、それを作るのにも金属が必要ということだ。
ゲームみたいに、ツルハシ振れば必ず鉱石が出るわけはないようだ。
なので、ある程度時間は掛かるだろう。
幸いなことに、ガントはスキル〈鉱石探知Ⅲ〉を習得しているらしく、ある程度の絞り混みは出来るらしい。
どのみち、一日は鉱山に潜るつもりだ。
朝食を食べ終わって、一息ついた後、二人で厩舎へ来た。
今日連れていくのは、ナイトメアのカルマとカーゴタートルのゲンブとフレイムキャットのフィアだ。
カルマは、万能タイプなので空中戦以外はかなり強い。
ニケは大きすぎるので、狭いとこには適してないし今回は入り口で見張り番だ。
ゲンブは、背中に半球状のカーゴ(荷物を入れられるコンテナ)を背負っている。
実は、この中は異空間になっており、かなりのアイテムを入れれる。
数人なら、人間も入れるスペースがある。大きさとしては、15畳くらいか。
なんなら、住み込み可!但し、外から攻撃されると結構揺れます!(過去に戦闘中に逃げ込んで船酔いした奴がいた。)
今回は、中に鉱石BOXを作って散らばらないようにした。
仕分けは、ゲンブに言えば自動でしてくれるので問題はない。
フィアは、何故連れていくかというと、灯りに困らないし、携帯フォージ(小さな鉱石を溶かす炉)に火を入れれる為だ。
見た目は、火を纏った猫だが、鍛えてランクを上げているのでスキルを修得しているので、野良には出来ない戦い方が出来る。
そのお陰で、野良のAランク魔獣と戦っても勝つ自信がある!
フフフフと笑っていたら、隣からジと目を向けられた。
「しかし、職業聞いてまさかとは思ったが、やっぱりユートのナイトメアだったか」
「ああ、今回の異変で服従状態切れたみたいでさ、自我失ってみんな暴れちゃったんだよ。はははっ」
「はははっ、じゃねー!まじで死ぬかと思ったんだぞ!取り抑えようとした厩舎の主人を尊敬したわっ!」
ガントの口から衝撃的な事実が飛んできた。
「まじか?アレに生身の人間で向かうとか…彼は何者なんだ…」
いやー、必死だっただけですよーとか言ってるが、信じられない。
もしかしたら、昔、凄腕のテイマーだったとかか?機会があったら訊いてみよう。と頭の片隅にメモしておいた。
「取り敢えず、鉱山までの道のりだが、ガントはニケの背中に乗ってくれ。俺とフィアはカルマの背に乗っていく」
「了解した!空から世界見るの初めてだから、ウキウキするなぁ!」
ガントは、嬉しそうにニケの背中に掴まった。
「ニケ、ゲンブに付けたロープを持ち上げて、そのまま空を飛んで運んでくれ。元々ゲンブも浮いてるし、そんなに重くは無いだろう」
ニケは、クァァー!と鳴くと、ロープを前足でしっかり掴み、ガントを背中に乗せて飛び立ち、ゆっくりと羽ばたいた。
「よし、カルマ、フィア、いくぞ!」
カルマの背中に飛び乗り、厩舎の主人に別れを言って村の外へ駆けて行った。
フィアは、俺とカルマの間にちょこんと座り、顔を覗かしている。
うん、可愛いなあ。
「うおーっ、ユートーー、こりゃあ最高だなっ!!」
空の上から、景色を見渡したガントから感動の言葉が漏れる。
自分が飛んでいる訳じゃないが、自慢気な気分になる。
「そうだろうっー!これを味わえるのは、そんなにいないからな!」
二人のおっさんは、空ではしゃぐのだった。
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