第5話 従魔は何処へ?③

ゲーム世界のカルマであり、この世界のカルマでもある。

そんな事を突然と言い出したカルマに驚きつつも、どういう事なのかと話を促した。


「つまり、ここはあのロストブレイブオンラインの世界ではありません。ましてや、主のいた世界の“地球”ですらありません」


 な、なんだと!?

 でも納得だ。妙にリアルになってるからな、やはりゲームの世界では無くなってるのか。


「この世界のカルマが持ってる知識が正しければ、とある光の神と、姉妹神である闇の神が創り出した世界らしく、何かの原因で、この世界と似た世界であったロストブレイブオンラインの世界が重なり、この世界の情報を上書きしてしまったようです」


 おお、だんだん話が難しくなってきたぞ…


「なので、今の我は、この世界に生まれて育った悪魔のカルマに、ロストブレイブオンライン上のデータであったカルマの記憶が追加されて出来た存在と言うわけです」


 な、なんだそりゃ。

 ん、それだと俺はどうなってるんだ??


「俺はどうなんだ?

 元々、ゲームデータではない俺はどうなったんだ??」


 少し考える素振りをしてから、カルマが答えた。


「主は、この世界の魂と存在を持っていますね。しかし、魂の年齢が見た目より遥かに若い。だとすれば、あちらの記憶を持って、新しくこちらで生まれ変わったと言える存在のようです」


「それって、えーと。この世界にゲームスキル持ったまま転生したと言うことかな」


「その理解で概ねあっているかと。ちなみに、姿形は前の記憶を元に作られたようですね」


 自分を見透すように、見ながらカルマはそう答えた。


 これは、あれか?悪魔だから魂が見えるとかか?そう考えると、こえーな。いや、それよりも気になることあるな。


「つか、そもそも、なんでそんなに詳しく解るんだ?

 そもそも、こっちの世界はいいとしても、地球とロストブレイブの事をなぜ?」


 目をギラッとさせて(そういう風に見えた)、カルマが答えた。


「我は、レアモンスターの中でも、エリアボスという存在でしたので、ゲーム内である権限を持っていたのです」


「ある権限?」


「はい、エリアボスはそれぞれAIによるある程度の自我を持たされており、ゲームサーバー内のデータベースに接続して情報を集めることが許されているのです」


「え、なんのために?」


「恐らくですが、”地球”の言葉で命令を受けたり、会話の応答したりするのに対応するためと、独自クエスト発行する権限もあるので、”地球”の言葉でニュアンスを伝えたりして、柔軟性を高めるためかと」


「なるほどなー、それなら言葉と意味だけならデータとしてなら持っているわけか」


「はい、あとナビゲーションも出来るようにゲームシステムについても、回答出来るだけの情報も持ってました」


「持ってました?」


「はい、今日までに我に蓄積したデータは残ったままですが、今はサーバとのリンクが切れた状態です。なので、今まで検索したことのないデータはわからないのです」


「そっかー、全てと言うわけにはいかないよな。膨大すぎる情報を全個体に持たせるのは無理があるか」


「そうですね。しかし、こっちの世界にはかなり詳しいかと。なんせ、200年は生きているらしいですからね」


「まじか!すげーな。まじの悪魔か。仲間で良かったよ」


 そこで、ふとカルマがニケの方を見て言った。


「あやつも、存在としては、同じようなものです。主のスキルを上げればあやつの知識も引き出すことが出来るようになるでしょう」


 それって、ニケとも会話出来るようになるスキルがあるってことか!

 それは、ロマンだよなー。魔獣と会話出来るテイマーとか夢だったやつだ。


 取り敢えず、現状で聞きたいことはかなり聞けた。

 結局、自分は転移してきたのか、転生してしまったのかは分からないが、一つだけ確定したこと。それは、ここはゲーム世界ではなく、歴とした異世界であるということ!

 そして、さっき死んでたらそこで終わってたという事実。まじ、危なかった。慎重派で良かったよ、ほんと。


「そう言えば、クロはこっちに来てないのか?てっきり、お前のとこにいると思ったのだけど」


 カルマの眷属パシりと化してた、シャドウウルフをキョロキョロと探すが、見当たらない。遺骸もないし、間違って倒した訳ではないようだ。


「クロならここにおりますよ」


 カルマがそう言うと、地面に不自然な影が出来て、地面からぬうっとクロが現れた。

 ワオオオーン!と雄叫びと共に、クロが現れた。

 これで、クロの方は大丈夫だな。あとは、ホワイトファングことシロを探さないと。


「カルマ、シロは何処に行ったか分かるか?」


 カルマは、じっと空を眺めてから首を横に振った。


「遠くにいるようで、気配は感じないですね。しかし、あの臆病な犬のことです、見晴らしのいい丘にでもいるでしょう」


 確かに、ちょっとびびりなんだよなアイツ。しかし、ほっとくわけにもいかないし、丘の方に探しにいこう。


「よし、シロを探しに丘へ向かうぞ。シロを回収したら、村で休憩とって情報を集めないとだな」


「承知しました。では、我に乗ってください。森を抜けるならその方が早いでしょう」


「わかった、じゃあニケは空から俺らを追っかけてくれ」


 クルァァァー!とニケが返事した。多分OKだってことだ。


 カルマに、久々に乗って森を駆け抜けたが、するすると木々をすり抜けて森を抜けた。

 来るときの半分も時間が掛からなかったは、流石である。


 ちなみにナイトメアは鞍を付けれないが、そのかわりに乗ったら黒いオーラに包まれて、しがみつかなくても落ちることがないようになっている。


 魔法の力万歳だ。

 障害物なんかもある程度弾き飛ばす。

 どういうわけか、風を感じることは出来るのだが。


 なんにせよ快適な移動出来るということだ。

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