大事な事はちゃんと報告②

 奥様との少ない時間ではあるけどデートをしてる時に雑貨屋で買い物して家に向かうことにした時、駅ビルから出るなり俺は同じシュシュをもう一つ買った理由を聞いてみた。


「なぁ、どうしてもう一つ買ったんだ?」

「あのね、あなたをより独占したくて……同じ物を身に着けて欲しかったの」

「それって……ああそうゆうことか。腕に付けて欲しいことか」


 そう、シュシュは基本的に髪留めで使用するのが殆どだが、女子の間ではファッションの一環として、腕に付けてるのを見たことがあるが男子が着けてるのは見ない。


 俺が言ったことに対して笑顔で返ってくるかとも思ったら少しだけ暗い表情でこう言う。


「嫌だったら、無理しなくていいからね。私の我が儘だから」

「ひとみの我が儘なら、俺が断る訳ないのは知ってるくせに。なら、公園に行ったらお互いに交換しようか」

「うん♪」


 お願いをされて断るなんてする訳がない。そして、やることが出来たので俺らは公園に向かって歩き出した。


 向かってる最中に、俺は仕事中にあったことをひとみに告げることにした。


「ってことは、来週から年末まではスポーツに戻るんだ」

「ああ、ついでにレジまで覚えることになりそうなんだ。それでお願いがあるんだけどいいか?」

「出来ることならなんでも♪」

「この先、学校・バイト・プライベートが結構詰まる形になるから俺がやばそうなら止めて欲しい。そうしないと前みたいなことになるから」


 先にこの事を言っておかないと、あの時みたいにひとみや他の人に迷惑を掛けるのは避けたいから、ちゃんと報告しておかないと駄目だって言うのは教訓になったから。


 ひとみは、少し悩む仕草をした後に俺にこう言ってきた。


「ねぇ、それならマラソン大会だけは参加しないで欲しいかな……」

「一番はそれになるよな……もし出たいって言ったら怒るか?」

「ううん、怒らないよ。だって、最後に一緒に出来るイベントだから出来るなら一緒に走りたい♪」

「なら、どうしようか……はぁ」

「あなたはどうしたの?私はそれが聞きたいの」


 俺がどうしたいか……そんなのは決まっているけど、それを言ってしまうと以前の二の舞になるのは目に見えているのだが、全てが俺の問題で誰かにパスできる事案が一つもないのが現状なのだ。


 ひとみの言い方からすれば、俺の感じてることは既に読み切っているからこその言い方になってるのは気づいていて、ひとみは俺の本心を聞きたいのがあるのだと思うから、言うだけ言うことにした。


「俺としては、出来るならすべてやり切りたいな。無理するのが良いことではないのはこの前のことで理解はしてるつもりだけど、ひとみとの学校生活を少しでも彩りを付けたい」


 本音を言えば、今だけは全力で走り続けたくて俺が卒業するまでは少しも立ち止まりたくない。


 出した答えを聞いたひとみは、優しい笑顔で俺に向けてくる。


「ありがとう、あなたの本心がちゃんと聞けて嬉しい♪今のあなたなら大丈夫だと思う」

「どうしてそう言えるんだ?」

「あの時は、色々と不安な悩みを抱えていたのがあったけど、今は全部のことが前向きだから大丈夫って思えるの。予想外のことが起きない限りは」


 まぁ、確かにあの時は悩みや体調不良があったからなったことで今回もそうなるかいうと、そうとは限らないと俺も同じ考えを持っていた。


「出来る限り無理はしないつもりだけど、ひとみの判断で構わないからダメそうだと思ったら止めてくれるか?」

「うん、その代わり今月はいつも以上に甘えてもらうからね。私はあなたが抱えてることが終わったら甘えるから」

「ごめん、それは嫌だ。俺が甘えてひとみが甘えないのはおかしい」


 どうして、ひとみが犠牲にならないといけない……俺が自分で持ち込んだことなのに……そんなのは絶対に認めたくない。


「なら、どこまでが本当か分からないけど森川さんに年明けにレジを教えてもらうようにしようよ」

「そうだな、それしかないよな。器用貧乏もあまりいいもんじゃないな」

「ごめんね、昨日森川さんにあんなこと言わなければよかった」

「おいおい、そうやって自分を責めるのは嫌だって言ったろ?いずれそうなる運命だったんだよ。それに俺にはいいチャンスでもあるんだから」

「チャンスってどうして?」

「だって、バイトの身で色々出来るようになれば社員になれるチャンスが出るんだから。自分から言い出すことが出来ないから昨日の2人の提案は感謝してる」


 現在、俺の進路は進学になってるが正直言えばどっちでもよかったが、進路希望を出してしまってるのと学費を借りてしまっているようなので後戻りが一切利かない。


 だが、進学先がパソコン関連であり俺には向かないような気はしてるのだが、かといって他の候補が無いのでそこに落ち着くしかないと思っている。


 もし、その後の就職に困った時に今のバイト先で功績が認められれば、社員への道もあるという訳で、ひとみとこの先一緒にいる為にはアルバイトで過ごす訳にはいかないということ。


 だから、今の内に身に付けられるスキルは出来るだけ欲しいということなのだ。


 俺の胸の内を伝えるとひとみは少しだけ驚いた表情をしながら俺に問いかける。


「あなたは、あそこで社員になるつもりなの?」

「候補の一つかな。俺が一番に思ってるのはひとみとの幸せな日々を過ごすことでちゃんとした職に就かないと駄目だからな」


 この先、何があるかは分からないからあそこで社員として働くのか他にやってみたいことがあれば挑戦してみるつもりではいるけど。


 個人的には危ない橋を渡る気は一切ないが本当にやってみ他意はちゃんと相談して決める。


「それを言われたら、ダメって言えなくなっちゃうよ」

「レジの件は俺からちゃんと言うよ。まだ本当かどうか分からないから」

「そうだね、なにかあったらちゃんとサポートするからね♪」

「頼むな、愛しの奥様」

「はい、旦那様♡」


 これをそのままにしておけば大変なことになってしまうので、ちゃんと話し合って正解だと思った。


 隠しても何の意味も無いから話してしまった方がお互いが安心出来なければ、この先にある俺らの幸せの日々を脅かすことになるから。


 そうならない為の『相互理解』『切磋琢磨』があるんだから。

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