女の闘い?

 6限目の授業を終え、予定されてる時間にはまだ早いのもあって、生徒会室でゆっくりすることにした。


松木と共に生徒会室に入ると、既にひとみ達が打ち始めていた。


 なんか、打ち始めるのがやけに早い気がするのは気のせいかな?生徒会室とひとみの教室からの距離を考えても、なんというか謎なのだ。


 そんな俺の顔はきっと百面相になってる所にアッコが俺の所へやってくるので、この流れの事を聞いてみた。


「なぁ、やけにアッコ達来るのが早くないか?」

「6限目が少しだけ早く終わったので来ただけですよ」

「そうゆうことか、もしかしたらカラクリでもあるのかなって思ったよ」

「私達が先輩みたいに小細工できると思いますか?」

「どっちとも言えないな」


 そう言われたらそうなのだが、偶に欺かれることがあった。なので、疑いの目が若干消えただけではあるが、よく考えたら別にどうするかは本人次第で俺がやることはみんなを守る事なのだから。


 少しの間は、俺だって後輩を騙す訳だから喧嘩両成敗って所かな?


 ってことで、女子4人が打ってるのを遠くから見ていたが、吸収力が凄いのか場の違和感が感じられないのだ。


 これなら、先輩達が来ても楽しく打ってもらえそうだし、皆も臆せずに打つことが出来る。


「みんな、俺の我が儘に付き合ってくれてありがとう」

「先輩?今、何か言いました?」

「ちょっとした呟きだから気にしないでくれ。アッコも混ざってこい」

「分かりました、行ってきますね」


 颯爽と卓上の方へ向かい、5人で和気あいあいと話していると洋太が遅ればせながら生徒会室に入ってきた。


「洋太、お疲れ」

「お疲れ、一彦。大丈夫か?」

「単に話し合うだけで、お咎めを食らう訳じゃないからな」

「そうだったな。秀子達はもう打ってるのか早くないか?」

「俺も気になっていたが、6限が早く終わったらしいぞ」

「なるほどな。にしてもなんか不思議な光景っていうか、まさに女の闘いって感じだな」


 俺の想いとは対照的な意見を言う洋太、でもその意見も一理あるような気がした。


 ※


 <ひとみside>


 この流れは、5限目が始まる前の時まで遡る。


 私が次の授業の準備をしてると、秀子が私の所へやってきた。


「秀子どうしたの?」

「ねぇ、6限終わったら速攻で生徒会室に行って勝負しない?」

「勝負って麻雀で?」

「うん、偶には女子同士でアドバイスもない中でやってみたくて」

「いいよ。だけど、鞄とか明日の準備は?」

「6限目が始める前に生徒会室に持って行ってしまえば時間短縮になるでしょ?」


 この時、私が思ったことは『急にどうしたの?』が率直な気持ちである。


 でも、初心者の秀子が私に言ってくるってことは相当な勇気が必要かもって思い、私は秀子の願いを受け入れた。


 親友のお願いだから、断る気は更々無いんだけどね。


「分かった、準備しておくね」

「みんなには伝えてあるから。あ、私達が相手でも手加減無しでお願いね」

「誰の妻だと思ってるの?そんなことするほど優しいと思う?」

「そうね、その方がひとみらしくていいね」

「ふふ、最高の誉め言葉ありがとう」


 5限目が終わると鞄や必要な物を生徒会室に置いていき、教室には最低限の物だけを置いて準備を整える。


 そして、6限目終了後に私達はすぐさま生徒会室まで全力ダッシュして入るなりまるで椅子取りゲームのような感じで席を取り合った。


 勿論、私は旦那様がいつ来ても大丈夫な席を確保したが、みんなには私の思惑はバレていたらしい。


「ひとみは、そこが指定席だもんね~」

「うん、妻が旦那様を迎えるのに見えないとね♪」

「先輩のことになると簡単に乙女の顔になるわね」

「旦那様が来るまでは私の相手をしてもらいましょう」

「勝たないと旦那様の所へ行けなそうだから本気で行くね」


 こうして、何故か女子だけの麻雀が開始されたのだった。


 今いる面子の実力?に関しては私よりも少し下だと思っているが、吸収力が高いから正直言えば油断は禁物ってことになる。


 案の定、打ってると自分の思う展開にならないのが少しばかり焦りを生んでいたが、このまま焦れば自滅し兼ねないので、一旦気持ちを落ち着かせる。


「ポン」

「やっぱり動いてきたね、でも」

「ポン」

「え?」


 みんなが出してくる牌を次々と鳴くと、3人はさっきの私と同じような状態になってるようだが、敢えて畳みかけることはしなかった。


 麻雀の怖い所、それは流れを変化させるだけで状況が一変することが出来るので、私は鳴くことで流れを変化をさせ、この局を流すことに決めるとそのまま切っていく流れで流局した。


「私はテンパイね」

「私もテンパイ」

「ノーテン」「ノーテン」


 私と秀子がテンパイで美優とかおりがノーテンだったが、今の流れは私にあった。


 次の局、私が親なのでここで畳みかけたいのがあったので、流れを変える必要があったという訳だ。


 その後の流れは変わることはなく、私の牌は思い通りに進んでいくと、私は一気に勝負を掛ける。


「リーチで」

「やばい!ひとみ親だから逃げないと」

「とりあえず、ひとみが切った牌を切るしかないわね」

「そうね、あとは自摸ツモられないことを祈るしかないわね」


 この時の3人の思ってることは判り易く、私は当たり牌が来るまで不安もなく打つことが出来ていた……そして、私は掴んで流れをこの手に手繰り寄せた。


「ごめんね、自摸で」

「「「うそ……」」」

四暗刻スーアンコーの自摸上がりだから役満ね」

「「「鬼!!!」」」

「ふふ♪」


 これが麻雀の一番楽しい所で、これが他の人が親で出したなら今よりも少しだけ少ない点数で済んだのだが、自分で上がることで最高得点を叩き出した。


 私の高得点をから流れを変えることが誰も出来ずに、女子4人の闘いは私の勝利で幕を下ろしたのだった。


 ※


 俺は、外から4人の様子を見ていて胸が熱くなりそうだった。


 いや、実際は熱くなっていてワクワク感が冷めることがないほどに。


 だって、俺の単なる思い付きでこんなに熱くなってくれるなんて思ってなくて、寧ろ『煩いからやめて下さい』って言われるって思っていたんだから。


 それが、蓋を開けてみたら女子の熱い戦いを見ることが出来た。


 しかも、この光景はこの先当分変わらないだろうと思ってるのは、今後この場所は女子が支配すると感じていたから。


 そんな、死力とはいかないがやり切った4人に声を掛けた。


「お疲れ様、いい戦いだったな。どうだった、アドバイス無しは」

「正直、流れが悪くなるとどうしたらいいか分からなくて」

「そうだな。その前にひとみ、戦いながら教えるのは俺でも難しいのに見事だったよ」

「えへへ、あなたにいいところを見せたくて♪」

「ちゃんと見てたよ」

「あの~、今は子供たちの世話をしてもらえませんか?」

「そうだった、3人はひとみが鳴いた時はどう思った?」


 卓上にいた人間からすれば、ひとみが鳴いたことにより、流れが変わったのが理解できてなかったようなので、質問形式で答え合わせをすることにした。


「私達に流れが行かないようにするとは思ってますけど」

「私は、次がひとみが親だったので自分に回すためだと」

「2人が言ってくれたから私判った」

「それじゃ、アッコ言ってみてくれ」

「ひとみは、自分の所に流れを持ってくるために鳴いて、流れを自分に変えたまま自分の親を手に入れたから余裕が出来たってことですよね?」


 麻雀にチームプレーというのは存在しないので、流れは自分で読み切るしかないのと、ただ鳴くだけでは流れを変えるのは難しいから、ひとみは次に自分が親になるように上手く操作をしていた。


 対面に秀子がいたからよかったけど、ひとみの左隣にいたらこのような結果にはならなかったかもしれないが、終わってしまえばそれまでだ。


「その通りだ。流れを掴むものは場を制すってことかな」


 これまた、某アニメの名セリフのパクリになってしまったが仕方ないことで。


「ひとみ、全力で来てくれてありがとう。課題が出来たから助かる」

「それが目的だったの?」

「うん、先輩達がいなくなったらひとみに負担が行くから今の内に色々と覚えておきたかったの」

「秀子、ありがとう。その気持ちが何よりも嬉しい」


 俺は、一旦その場を離れて洋太がいる所へと戻ると洋太はこんなことを言ってきた。


「なんか、俺らもあんな熱い勝負をしてみたいな」

「冬休みになれば嫌でもそうなるんだから」

「そうだったな、今の内に俺ももっと慣れないとな。一彦」

「ん?」

「校長と話してる間、ひとみを借りていいか?松木も入ってもらってメンタル鍛える」

「ああ、大丈夫だ。ひとみ、ちょっと来てくれる?」

「はーい」


 ひとみが小走りで俺の所へ来て、抱き止めると髪を軽く撫でてあげる。


「あなたに撫でられると気持ちいい」

「もっとしてたいけど、時間だからちょっと行ってくる」

「はい、行ってらっしゃい。あなた♪」

「俺が戻ってくるまでの間、洋太と秀子達をスパルタ教育お願いできるか?」

「頑張ったらご褒美くれる?」

「その前に頑張ったから、戻ってきたらご褒美上げるな」


『待ってる、頑張ってね』って言ってくれて軽い足取りで校長の待つ校長室へと向かうのであった。

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