<閑話>旦那様を待つ間
<ひとみside>
旦那様がマラソン大会のことで校長先生との話し合いがあるのでこの場を後にする。
これは私が生徒会室で待っている時の事で、朝から不思議に思っていることを確認することした。
別に不満とかいう訳ではなく、ただ不思議なだけで”対等”という形を取っているのだから、そうなっても気にしないのだが。
「ねぇ、秀子。聞きたいことがあるんだけど」
「私が一彦先輩って呼んでる理由でしょ?顔見れば分かるわよ」
「どうして?」
「あの不安定な姿を見てたら力になりたいって思ったのが一番。それに」
秀子……そんなこと思っていたんだ、ごめん。
まだ、言い終わってる訳ではないようなのでその先を聞くことにした。
「対等と言うならば、ひとみが洋太の事を名前で呼んでるから私もそうしたいって思ったの。嫌ならやめる」
「ありがとう秀子。私ね、秀子に伝えておきたいことがあるの。それを聞いて私を叩いても構わないから」
「文句は言っても叩くことはしないからね」
私は旦那様に対して自分のしてしまったことを話すことにした。
「一彦の不安定な理由には私も入っていたの。しかも、途中から気づいていたのに言わなかったの」
「どうして言わなかったの?あれがあれば問題ないはずでしょ?」
秀子が言ってる『あれ』とは相互理解の事で、今回は相互理解をしていたようでしていたとは言い難い。事後だからしてなかったというのが答え。
秀子の顔を見ると怒ってる顔はしておらず、言うならばいつもの元気な顔をしているから私は少し戸惑ってしまう。
「ううん、私が踏み込んでなかった」
「自分で原因が分かっているなら私から聞かない。怒ってる訳ではないのと2人の問題であって解決してるのであれば私は気にしない」
正直言えば、私は頬を思いっきり叩かれる覚悟だった。
それだけの事をしたから罰は受けるべきだと思っていたが、秀子は『気にしない』ということに疑問に思う所があったが、今は追及をする必要はない。
暗い話題を変えるかのように、秀子が私にこんなことを聞いてくる。
「さて、今校長室ではどんな話し合いをしてるんだろうね」
「うーん、予想だけど旦那様が少しだけ我が儘言ってそう」
2人で話していると、打ち終えたのかかおり達が私達の所へとやってきて。
「2人でなに話してたの?」
「校長室でどんな話し合いをしてるのかなって」
「なるほどね、今回は普通というかこれ以上は無理があるんじゃない?」
「確かに。打ち上げでも十分すぎるのにね。出てみたいけど3位は辛い」
私達、2年と1年は上位3位までが打ち上げの参加資格を得ることが出来るのだが、私でも入選できるかどうか微妙な所。
私でも微妙なので秀子が『辛い』と言ってる気持ちは理解出来る。
「でも、あの人の事だからまた企んでそうな気がするんだけど」
そう言ってきたのは、アッコで。
「いや~、さすがに一彦先輩でもこれ以上の要求はしないと思うな」
秀子が軽く返すと私はこんな事を言ってみた。
「一彦の事だからその辺は分からないかな。でも、可能性はゼロではないと思うけど中身は私にも予想はつかない」
「奥様がお手上げとなると、私達は告げるのを待つだけってことね。ひとみ、私達は先に帰るから旦那様の帰りを待っててあげて」
「そんなことは今更でしょ?本当だったら付いていきたいくらいなのに」
今回は、大事な話だから我が儘を言うつもりは無い。
だって、帰ってくる場所は私の所だっていう自惚れがあるから。
自惚れに浸っていた所為かは判らないが、秀子が私にこんなことを言ってくる。
「ここで食われないように気をつけなさいよ」
「うん、お願いされないことだけを祈っておくね♪」
「その言い方は『どうぞ食べて下さい』って聞こえるのは気のせい?」
「気のせいってことにしておいた方がいいと思うけど?」
『あんたってブレないわね』と言いながら、みんなは去っていき生徒会室に残ったのは私一人。
「秀子ったら、解かっててそうゆうこと言うんだから、ふふ♪」
私……私達がここでそんなことをする訳ないのは秀子だって、ちゃんと理解をしている。
ここは、私達の心を癒してくれる場所だから。
時間を見れば、4時過ぎでもう少し時間が掛かると思い、私は棚から一冊のアルバムを取り出して1人でゆっくり鑑賞していた。
「あと何冊増えるのかな。でも、それだけ楽しい思い出が増えるってことだよね」
一枚一枚見ながらそんなことを呟いた。
そんな呟きをしていたが、多分っていうか確実に増える。
それは、今のメンバーならばずっと楽しい思い出が作れるって確信があって、それに関しては出し惜しみなんて必要は無いから。
『楽しいことは全力で最後までやり切る』
旦那様と出会って、私の中で出来た言葉である。半分は受け売りに近いけど。
それを実行し続ける為には、私達が楽しまなかったら意味がないというか成立しないのだから、私達はこの瞬間……今しかない時を楽しむ。
この時、校長室では旦那様が私達の為に壮大なお願いをしているなんて気づく訳がなかった。
それは、彼女もとい妻の私すらも欺く行為であったから。
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